目次
足元リスクを三つに分けて整理する
鉄筋工事の足元は、型枠や鉄骨とは別種の危険がある。整理すると次の三つに集約される。
| リスク | 主な発生場面 | 結果 |
|---|---|---|
| 踏み抜き・足のはまり込み | スラブ上端筋の上を歩く、配力筋間の踏み外し | 足首の捻挫、転倒、下階への落下 |
| 滑り・バランス崩し | 梁上・壁頭の移動、雨後の濡れた鉄筋、結束線の踏み付け | 転倒、墜落 |
| 突き出し筋への接触 | 柱・壁の縦筋、差し筋、基礎アンカー周り | 転倒時の刺傷、顔面・腹部の負傷 |
この三つは発生場面が違うので、対策も別々に段取りする必要がある。「安全帯を着けろ」で一括りにしても足元は良くならない。
歩み板は配筋の進行に合わせて前に出す

歩み板(渡り板)は、配筋が終わった後にまとめて敷くものではない。配り・組立の進行方向に合わせて、作業者の背後から前へ送っていくのが基本の考え方になる。
段取りのポイント:
- 敷く向きは、上端筋の主筋方向と直交させ、複数本の鉄筋で板を受けるようにする。1本の筋の上に平行に載せると板が回転する
- 板の端部は必ず鉄筋に掛け、宙に浮いた片持ち状態をつくらない。端が跳ね上がって転倒する事故は少なくない
- 板同士の継ぎ目は重ね、段差を残さない。重ね部は結束線やクランプでずれ止めする
- 濡れると滑る板材を使う場合は、雨後の使用前点検を朝の段取りに入れる
- バーサポートやスペーサーの真上に荷重を掛け続けると、かぶりが狂う。歩み板の位置はスペーサー配置を見ながら決める
歩み板は「落ちないための設備」であると同時に、配筋を踏ませないための設備でもある。上端筋が踏まれて下がれば、後で直す手間がそのまま出てくる。
突き出し縦筋の端部養生
柱主筋、壁の縦筋、基礎からの差し筋、アンカーボルト周りは、転倒時に身体を受ける凶器になる。
- キャップ(保護キャップ)は、径に合ったものを使う。緩いものは風や接触で外れ、外れたキャップは誰も戻さない
- 製品によって「接触時の保護」を想定したものと「体重を受け止める」ことまで想定したものがある。どちらの性能なのかを製品仕様で確認し、墜落のおそれがある箇所では相応のものを選ぶ
- 本数が多い柱・壁では、キャップ単体より、縦筋頭部を横架材(単管・木材)で連結して面で塞ぐ方が確実で、外れにくい
- 差し筋は曲げ加工で水平に倒す方法もあるが、曲げ戻しは鉄筋の品質に影響するため、処理方法は監理者の指示による。現場判断で勝手に曲げない
立入ルートと区画を先に決める

配筋階には鉄筋工以外も入る。設備の先行スリーブ、電気の配管、型枠の墨出し、監理者の検査。彼らは鉄筋の歩き方を知らない。
- 配筋着手前に、主動線(搬入口から各作業エリアまで)を1本決めて歩み板で通す。他職にはこのルート以外を歩かせない
- スラブ端部・開口部まわりは、歩み板のルートから外し、手すり・ネット・立入禁止表示で区画する
- 梁上の長距離移動は原則やめ、梁を横断する箇所には渡り板を架ける
- 朝礼とKYで、その日のルート変更を必ず共有する。ルートは毎日変わるものと考えておく
打設当日まで養生を維持する
養生は「敷いた日」より「維持」で差がつく。配筋検査、スリーブ入れ、ポンプ配管の据え付けで、歩み板は必ず一度は外される。
| 工程 | 養生の段取り |
|---|---|
| 配筋中 | 進行に合わせて歩み板を前送り、縦筋キャップを都度取り付け |
| スリーブ・設備先行 | 外した歩み板を復旧させる担当を決める。外しっぱなしを翌日に持ち越さない |
| 配筋検査 | 検査ルートを歩み板で確保。検査員を鉄筋の上に乗せない |
| 打設前日 | 全面点検。キャップの脱落、板のずれ、端部の浮きを潰す |
| 打設当日 | 配管ルート・ホースの振り回し範囲を確認し、作業員の退避位置と歩み板を調整 |
打設当日は配管の荷重とホースの振動で配筋が最も乱れる。配管の支持を鉄筋に直接取らないこと、ホースの通り道に歩み板を残して直し班が入れるようにしておくことを、打設計画の段階で決めておく。
乱れた配筋を直す手順
踏まれて下がった上端筋、ずれたスペーサー、外れた結束は、打設直前にまとめて直すのではなく工程の節目ごとに潰す。打設当日の直しは、順序を決めておく。
- 上端筋の浮かせ直し(チェア・スペーサーの再配置と増設)
- かぶりの確認(型枠面・スラブ上面)
- 外れた結束の再結束。踏まれた箇所は周辺もまとめて確認する
- 開口補強筋・差し筋の位置確認
- 打設中も直し班を1〜2名配置し、配管の移動に追従させる
スペーサー・チェアの種類と配置間隔、かぶり厚さは設計図書・特記仕様書による。曲がった鉄筋の修正方法、特に加熱を伴う矯正の可否は、監理者の判断を仰ぐ。
歩ける床は、省人化の前提でもある
海外では、橋梁床版の結束作業に自走式のロボットを用いる事例が出てきている。平面で大面積、かつスクリードレールが設置済みという条件下の話で、日本の建築現場の立体配筋にそのまま持ち込める技術ではない。ただ示唆的なのは、機械が走れる床は、人も安全に歩ける床だという点である。歩み板の計画は、安全対策であると同時に、将来の省人化機材を受け入れる下地にもなる。
なお、機械化が進んでも、配筋の間隔・本数・継手位置・かぶりの確保は設計図書に従うという原則は変わらない。
※本記事は一般的な解説です。実際の施工にあたっては、設計図書および工事監理者の指示を必ず優先してください。
