鉄筋の荷取りと仮置き スラブ上の集中荷重を避ける

荷取りは「置き場所」より先に「載せていい条件」から決まる

鉄筋は単位面積あたりの重さが突出した資材です。同じ体積なら木材の何倍にもなり、束で降ろせば数百キロが畳一枚にも満たない範囲に集中します。コンクリートが硬化した床でも、支保工が残る打設後間もないスラブでも、「そこに何トンまで、どう分散して置けるか」を確認しないまま降ろすのは危険です。

束の重さを先に出しておく

鉄筋の単位質量(1mあたりの重さ)は規格で決まっています。本数 × 長さ × 単位質量で束の重量は机上で出せるので、搬入計画の段階で「1束あたり何kg」「同じ場所に何束置くと何トンか」を一覧にしておきます。この数字がないと、元請と載荷の相談ができません。

載荷条件は元請・設計図書で確認する

仮置きの可否と上限は、現場ごとに異なります。以下は搬入前に確認しておきたい項目です。

確認する内容 確認先
スラブの施工時積載荷重の考え方・上限 元請(設計者・構造担当に確認してもらう)
コンクリート打設からの経過日数・強度発現の状況 元請(試験結果)
支保工の存置範囲、下階の盛替え状況 元請・型枠業者
仮置きしてよい位置(梁上・壁際など)の指定 元請の施工計画・仮設計画図
揚重機の性能・揚重時間帯 元請の揚重計画

「たぶん大丈夫」で置かない。荷重条件は口頭でなく、仮設計画図や施工計画書に位置と上限が示されている状態にしてもらうのが安全です。

降ろす場所の選び方

左に地上ヤードへの荷下ろし、右に床断面図を描いた模式図。①地上ヤード・仮設構台、②梁上・柱際・壁の直上、③やむを得ない場合のみスラブ中央部、という検討順を示し、スラブ上の荷が支保工を介して下階へ流れることを矢印で表している。
仮置き場所の検討順。地上ヤード→梁上・柱際→スラブ中央の順に検討する

支持点に近い位置を選ぶ

同じ重量でも、スラブの中央に置くのと梁上・壁上に置くのとでは、床版と支保工への効き方がまったく違います。基本は次の順で検討します。

  1. 地上ヤード・躯体外の仮設構台(スラブに載せない)
  2. 梁の直上、柱際、耐力壁の直上
  3. スラブ上の中央部(やむを得ない場合のみ、分散して少量ずつ)

下階の状況まで見る

支保工が残っている階に荷を置けば、その荷は下階の床へ流れます。盛替えが済んでいるか、下階が支保工の無い状態になっていないかを型枠業者と突き合わせてから降ろします。打設直後の階に仮置きするという判断は、元請の確認なしに現場だけで下さないことです。

分散して積む——高く積まない、面で受ける

左は枕木1本の上に鉄筋束を四段に高く積み、荷が一点に集中する悪い例。右は枕木を複数本入れて二段に低く積み、上下の段で枕木の位置を通し、荷が分かれて床に伝わる良い例を示した模式図。
高積み・枕木1本と、低く広く枕木を通した積み方の比較
  • 段積みは低く、広く。 高く積めば置き場は節約できますが、荷重は一点に集まり、崩落のリスクも上がります。置き場が足りないなら、積み上げるのではなく搬入を分割します。
  • 枕木を複数本入れて面で受ける。 枕木1本に荷が乗ると線荷重になります。束の長さに応じて本数を増やし、上下の段で枕木の位置を通します。段ごとに枕木位置がずれると、下段の鉄筋が曲げを受けます。
  • 床を傷めない敷材。 打継ぎ面、デッキプレート、防水下地などの上に直接降ろさない。仕上げ済み床では養生材の指定が別にあるので元請に確認します。
  • 1か所に集中させない。 「同じ品物は同じ場所に」とやると重量が集まります。部位ごとに置き場を分け、重い大径筋ほど支持点寄りへ。

束の向きと仕分け

向きは「次に吊る向き」で決める

仮置きの向きは、取り出す順・吊り込む向き・玉掛けのワイヤを通せるかで決まります。

  • 束の長手は、揚重機のブーム方向や通路方向と喧嘩しない向きに揃える
  • 玉掛け位置に枕木の隙間を確保しておく(後からバールでこじる作業を減らす)
  • 先に使う束を上・手前に。奥に先行品を置くと、全部をひっくり返す羽目になります

部位・仕口ごとに分ける

柱主筋、梁主筋、あばら筋、スラブ筋、壁筋、そして加工形状の違うもの。これらが混ざると、探す手間と誤使用の両方が出ます。荷札・色テープで部位と階・符号が見えるようにし、積む前に仕分けを決めてから降ろすこと。降ろしてから仕分け直すのは二重の揚重になります。

後工程の動線を潰さない

仮置きで多いトラブルは、荷重より「邪魔になる」ことです。降ろす前に次を潰しておきます。

  • 開口部、階段口、エレベーターシャフト周り、立上り筋の位置
  • 設備のスリーブ・インサート・配管ルート
  • 型枠材・サポートの搬入経路、墨出しのライン
  • 消火器・避難経路・開口養生

とくに開口養生の上や手すりの際に長尺束を置かない。養生材は積載を想定していません。

海外では場外ヤードを制度化する動きもある

海外では、発注者側が場外の鉄筋先組ヤードの運用を文書化し、プレハブ化を前提に計画させる例が報じられています(香港の公共工事発注機関による技術通知など)。現場内に仮置きする量そのものを減らすという発想で、狭隘な都市部の現場では参考になる考え方です。ただし、材料規格・継手・定着・かぶりの扱いは国ごとに体系が異なります。日本での施工は、設計図書・特記仕様書および国内の規準・指針と監理者の指示に従ってください。

搬入当日のチェック

タイミング 確認すること
搬入前日 置き場所と上限重量、揚重時間、仕分け区分、敷材の準備
荷下ろし直前 下階の支保工状況、床の養生、開口・動線の確保
荷下ろし中 枕木の通り、段数、1か所への集中、荷の転がり止め
荷下ろし後 荷札の視認性、通路幅、次工程への引き継ぎ

置き場は一度決めて終わりではなく、階が上がるたび、工程が進むたびに条件が変わります。階ごとに置き場を決め直すのを習慣にすると、集中荷重も動線潰しも大きく減ります。

※本記事は一般的な解説です。実際の施工にあたっては、設計図書および工事監理者の指示を必ず優先してください。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA