スラブ段差部の配筋 下がり床の納まりと補強

段差が生じるのはどこか

スラブに段差が出るのは、だいたい決まった場所です。

  • バルコニー・ルーフバルコニーの下がり(室内床との水返し)
  • 浴室・洗面・トイレなど水回りの下がり床
  • 玄関土間、ポーチ、外部廊下
  • 設備ピット、エレベーターピット周り
  • 屋上の防水立上り取り合い

共通するのは「水を室内に入れない」という目的で生まれた段差だということです。つまり段差部にはほぼ必ず防水層が絡み、ドレン・スリーブ・排水勾配も集まります。配筋だけを見て段取りすると、後で設備屋・防水屋と取り合いが衝突します。

着工前に押さえる項目は次のとおりです。いずれも図面から拾うもので、現場判断で決めるものではありません。

確認項目 拾う図面
段差寸法(天端レベル差) 平面詳細図・矩計図
段差前後のスラブ厚(変わるか) 伏図・断面リスト
上端筋・下端筋の処理方法(通す/折る/定着) 標準配筋図・特記仕様書
段差部の補強筋の有無と仕様 標準配筋図・リスト
段差位置に梁や壁が来るか 伏図
かぶり厚さ(外部/内部で変わる) 特記仕様書
ドレン・スリーブ位置 設備図

上端筋・下端筋をどう処理するか

スラブ段差部の配筋模式図。上段に①クランクで連続させる、②高い側・低い側をそれぞれ立上り部に定着させる、③段差線上の梁や壁に定着させるの三方式の断面図。下段に入隅での折り曲げ方向のNG例(折り曲げ外側が外へ開き、合力がかぶりを押し出す)とOK例(鉄筋を交差させ反対側の面へ定着)を並べた図。
段差部の上端筋・下端筋の三つの処理と、入隅での折り曲げ方向の原則

考え方は大きく三つに分かれます。どれを採るかは段差寸法とスラブ厚の関係で決まり、その境目は標準配筋図に書かれています。現場で「このくらいなら曲げて通せる」と判断してはいけない部分です。

① 折り曲げて通す(クランク)

段差が小さい場合、主筋をクランク状に折り曲げて段差を乗り越えさせます。鉄筋が連続するので力の伝達は素直ですが、折り曲げの勾配が急すぎると折れ点に力が集中します。緩勾配で振るための展開寸法を加工帳で押さえておくこと。

② それぞれのスラブで定着を取る

段差が大きい場合は連続させず、高い側・低い側それぞれの鉄筋を段差の立上り部(または立上りに相当する小梁・壁)に定着させます。定着長さと定着の方向(下向きに折るのか、水平に延ばすのか)は設計図書によります。

③ 段差位置に梁・壁がある場合

段差線上に梁や立上り壁が入っていれば、そこへ定着するのが基本の形になります。伏図で梁の有無を先に確認してください。

折り曲げ方向で絶対に外さない原則

段差部は入隅と出隅がセットで発生します。引張を受ける鉄筋を、コンクリートの外側に向かって開く形で折ってはいけません。 折り曲げの外側に引張が働くと、その合力がかぶりを押し出し、角のコンクリートを剥がす方向に作用します。入隅側では鉄筋を交差させて反対側へ定着させる納まりになるのが一般的で、標準配筋図に図解されています。段差部の不具合で最も多いのが、ここを「見た目でつながっているから良い」と処理してしまうケースです。

段差部に入る補強筋

左に段差立上り部の断面模式図。立上り部の縦筋(断面で線として表示)と横筋(断面で点として表示)、入隅の斜め補強筋を示す。右にスラブ平面模式図で、ドレン開口の四周を囲む開口補強筋を示す。径・ピッチ・本数は標準配筋図と特記仕様書で確認する旨の注記付き。
段差立上り部と開口周りに入る補強筋の位置関係(模式図)

段差立上り部には、主筋とは別に補強筋が入ります。代表的なものは次の三種です。

  • 立上り部の縦筋・横筋(立上りを小壁とみなす形の補強)
  • 段差入隅の斜め補強筋
  • ドレン・スリーブ開口周りの補強筋

径・ピッチ・長さ・本数は案件ごとに違うため、ここでは書きません。標準配筋図と特記仕様書を突き合わせ、不明なら監理者に確認します。段差部の補強筋は伏図に書かれず標準図だけに載っていることが多く、拾い漏れの常連です。加工帳作成時に段差の総延長を拾い、別符号で発注しておくと現場で慌てません。

現場での段取り

  1. 段差型枠の建込み時期を型枠大工と詰める(先行か後行かで配筋順序が変わる)
  2. 下端筋を敷き、段差位置に墨またはマーキングを出す
  3. クランク筋・定着筋は別符号・別荷姿で搬入し、色テープで識別
  4. 立上り部の補強筋を先に組む
  5. 上端筋を配り、段差際のバーサポート・スペーサーを確実に入れる

段差際はバーサポートが型枠に寄りすぎて効かず、上端筋が沈みやすい箇所です。配筋検査のときだけでなく、打設直前にもう一度見てください。

なお海外では、橋梁床版のような広い平場の交点を自動結束するロボットが商用段階に入っていますが、狙いはあくまで「障害物のない平場」です。段差部や開口周りのような納まりの集中する箇所は人の手が要る、という構図は国内でも同じで、省力化を考えるなら平場と納まり部を分けて歩掛を見るのが現実的です。もちろん、国内施工の仕様・寸法は設計図書と日本の規準に従います。

配筋検査で見られる点

見られる点 ありがちな指摘
上端筋・下端筋の処理が標準図どおりか 段差で切りっぱなし、重ねただけ
定着長さ・定着方向 定着不足、折り方向が逆
折り曲げ外側に引張が開く納まりになっていないか 入隅で鉄筋が外へ開いている
補強筋の有無・位置 拾い漏れで未施工
かぶり厚さ(外部側は厳しくなる) 立上り型枠側のかぶり不足
段差際の上端筋の高さ保持 バーサポート不足で沈み
ドレン・スリーブ周りの補強 設備との干渉で補強筋を抜いている

指摘を受けてから直すと、段差型枠を外す・組み直すという手戻りになります。段差部は型枠が建ってしまうと手が入りにくいため、立上り型枠の建込み前に自主検査を一回挟むのが結局いちばん早い段取りです。

※本記事は一般的な解説です。実際の施工にあたっては、設計図書および工事監理者の指示を必ず優先してください。

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