打継ぎ部の差し筋 倒れと位置ずれを防ぐ

差し筋が倒れる・ずれる仕組みを先に押さえる

先行躯体から立ち上がる差し筋の模式図。左からコンクリートの流動圧、上から踏み付け、斜めから挿入したバイブレーターの接触が加わり、右端の一本が倒れている様子。右側に倒れ・ずれを起こす力として流動圧、バイブレーター接触、踏み付け・引っ掛け、型枠支保工の変形、結束だけの固定を列記。
打継ぎ部の差し筋に働く力と、倒れが起きる仕組みの模式図

打継ぎ部の差し筋は、先行躯体のコンクリートに根元を埋め込んだ「片持ち」の状態で打設を迎えます。根元が動かなければ倒れませんが、現実には次の力が同時にかかります。

  • コンクリートの流動圧 筒先から落ちた生コンが片側から当たり、差し筋を押し倒す
  • バイブレーターの接触 締固め中に振動機を差し筋に当てると、根元が緩んでこね返しになる
  • 作業員の踏み付け・引っ掛け 天端均しやレベル出しのときに足場代わりにされる
  • 型枠・支保工の変形 せき板が孕むと、差し筋を固定していた受け材ごと動く
  • 固定が結束だけ 結束線による結束は回転を止められても、曲げ方向の押しには弱い

つまり「打設中に押された」のではなく「押されても動かない固定になっていなかった」のがほとんどです。対策は打設前の段取りに集中します。

打設前の固定──三点で考える

差し筋の固定方法の模式図。先行躯体側の鉄筋に根元を二方向から結束し、出の部分は上下二段の水平材で串刺しにして列を一体化、水平材は型枠側から控えを取る。芯位置は通り芯・仕上げ墨から追い、打設直前に照合することを示す。
根元・天端側の水平材・墨からの照合という三点で固定する考え方

1. 根元を逃がさない

差し筋の根元は、先行躯体側の鉄筋(スラブ上端筋、梁主筋、柱帯筋など)に確実に結束し、できれば二方向から拘束します。一点結束だけだと、結束点を支点にして倒れます。定着は設計図書に従い、埋込み側の長さを現場で勝手に短くしないこと。

2. 天端側を定規で揃える

差し筋の出の部分は、水平材で串刺しにして一列を一体化するのが基本です。

  • 鉄筋(振れ止め筋・横つなぎ筋)を差し筋の外側に走らせて全数結束する
  • 桟木・ばた角を上下二段で挟み、差し筋をその間に通す
  • 型枠の天端やセパレーターから控えを取り、水平材自体を動かないようにする

一列が一体になっていれば、一本が押されても列全体で受けます。ここを省くと、端部の数本だけが必ず倒れます。

3. 位置は墨で決めて、打設前に照合する

差し筋の芯位置は、後工程の壁・柱の仕上がり位置とかぶりを決めます。型枠の内法で合わせるのではなく、躯体の通り芯・仕上げ墨から追って配置し、打設直前に再度照合します。配筋検査の記録写真は、墨と差し筋が同じ画面に入るように撮っておくと、後で揉めません。

打設中に見る点

タイミング 見る点 動き方
打込み開始前 水平つなぎ材・控えの緩み、結束の外れ 増し締め、結束の追加
筒先が近づいたとき 差し筋列への直撃 筒先位置をずらす、人が当て板で受ける
締固め中 バイブレーターと差し筋の接触 鉄筋を避けて挿入する旨を声掛け
天端均し 踏み付け、引っ掛け 足場板を渡す、立入りルートを決める
打設終了直後 全数の倒れ・位置 コンクリートが硬化する前に直す

最後の行が一番重要です。生コンが初期硬化に入る前であれば、手で戻して水平材で押さえ直すことができます。打設翌日に気付いた場合、この手が使えません。打設班とは別に、差し筋を見る役を一人決めておくのが確実です。

打設後の確認と養生

  • 硬化後、墨から全数の芯ずれとかぶりの余裕を確認する。一本ずつ見ること
  • 倒れ・ずれの有無を、位置ずれ量とともに記録に残す
  • 次工程まで日数が空くときは、キャップや養生材で先端を保護し、歩行動線から外す
  • 養生シートやホースを差し筋に引っ掛けると、そこから曲がる。結束でまとめて立ち上げておく

ずれが出たときの手直し

ここは現場判断で進めてはいけない領域です。

  • 台直し(曲げ戻し)の可否・方法は、監理者の指示による。 加熱の可否、曲げの基点をどこに取るか、曲げ半径の扱いは、鉄筋の種類と部位によって判断が変わります
  • かぶりが確保できない、定着が足りないといった場合、添え筋やあと施工アンカーへの切替は設計判断です。施工側で決めず、位置ずれ量を測って報告し、指示を仰ぎます
  • 報告には「どの位置の何本が、どの方向に、どれだけずれたか」を図と写真で添える。これがあるかないかで、復旧の指示が出るまでの時間が変わります

倒れを根本から減らす段取り

差し筋を一本ずつ立てるのをやめ、先組みのユニットとして搬入・設置すると、倒れは大きく減ります。地組ヤードで水平材込みの一体物を組み、クレーンで据え付けて根元を結束する形です。海外では、こうした繰り返しの多い配筋を工場やヤードで自動化する取り組み(プレキャスト工場での結束自動化、トンネル覆工の鉄筋かご組立など)が実案件で動いていますが、適用できるかどうかは部位の形状と繰り返し性次第です。日本の現場では、継手位置・かぶり・組立精度はいずれも設計図書と特記仕様書、監理者の指示に従って決めてください。

差し筋は、打ち終わった後では直しにくく、直せば記録が残る部位です。手間は打設前の固定に寄せるのが、結局いちばん安く済みます。

※本記事は一般的な解説です。実際の施工にあたっては、設計図書および工事監理者の指示を必ず優先してください。

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