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機械式継手が選ばれる場面
ガス圧接は多くの現場で標準的な選択肢ですが、次のような条件では機械式継手が有利になります。
- 火気を使えない、または使いにくい場所 — 改修工事、稼働中の施設、可燃物が近い区画、地下や狭隘部での換気制約がある場所
- 天候・工程の影響を切りたい場合 — 圧接は降雨・強風時の養生が必要になるが、機械式継手は作業条件の制約が比較的少ない
- 太径鉄筋、異径接合、鋼種の異なる接合 — 製品によっては径違い用の継手が用意されている
- プレキャスト部材の接合 — 下階から突き出した鉄筋をスリーブで受ける納まりは、モルタル充填継手の代表的な用途
- 既存構造との接合、後施工の差し筋 — あと施工アンカーと組み合わせて主筋を継ぐ場合
- 鉄筋を回せない場所 — 柱主筋の上下接合など、鉄筋を回転させられない条件では、回転を必要としない方式を選ぶ
検査面でも違いがあります。圧接は外観検査に加えて超音波探傷試験などの抜き取り検査を伴いますが、機械式継手はトルク値やマーキング位置、グラウトの排出といった施工時に目で追える確認が中心になります。ただし継手方式ごとに要求される性能等級(A級・B級・SA級など)と適用範囲は設計図書で指定されるものなので、「圧接の代わりに使える」と現場判断で置き換えないでください。工法変更は監理者の承諾事項です。
主な種類と施工の勘所
| 方式 | 接合の原理 | 主な確認対象 |
|---|---|---|
| ねじ節鉄筋継手 | ねじ節形状の鉄筋にカプラーをねじ込み、ロックナットやグラウト・樹脂で固定 | ねじ込み量、トルク、ロックナットの締付け、充填材の有無 |
| 端部ねじ加工継手 | 鉄筋端部に転造・切削でねじを加工し、カプラーで接合 | 加工長さ、ねじ部の傷・錆、ねじ込み量、残ねじ |
| モルタル充填継手 | スリーブに鉄筋を挿入し、専用グラウトを充填して付着で伝達 | 挿入長さ、スリーブの固定、グラウトの練り・充填・排出 |
| 圧着(かしめ)継手 | スリーブを油圧機で塑性変形させ、鉄筋を機械的に拘束 | 圧着回数・位置、圧着後の外径、変形の均一さ |
ねじ節・端部ねじ加工継手
要はねじ込み量が足りているかに尽きます。鉄筋端部やカプラー端部に基準となるケガキ線・マーキングを入れ、締付け後にマーキングが規定位置にあるかを見ます。トルクレンチを使う方式では、締付け後に合いマークを入れておくと、後から見ても締めたことが分かります。トルクレンチは校正記録のあるものを使い、校正証の写しを施工記録に添えてください。
ねじ部を傷めないことも重要です。搬入から建方までの間、保護キャップを外したまま放置するとねじ山に泥やモルタルが入り、ねじ込み不良の原因になります。
モルタル充填継手
- 鉄筋の挿入長さを、建て込み前に鉄筋側へマーキングしておく。挿入後は目視できないため、事後に確認する手段がなくなります
- スリーブの位置ずれ、傾き、シール材の浮きを充填前に確認する
- グラウト材は水量・練り混ぜ時間・練上がり温度・可使時間を製品仕様書どおりに管理する。水を足して流動性を上げる行為は禁止です
- 注入口から充填し、排出口から気泡のない材料が連続して出ることを確認してから栓をする
- 充填後は硬化するまで鉄筋・型枠に衝撃を与えない。振動や建て入れ直しは養生期間を確保してから
寒中・暑中の施工は温度管理が結果を左右します。低温時の加温養生、高温時の可使時間短縮について、事前に要領書で取り決めておいてください。
配筋検査で見られる点
- マーキングが検査時に見えるか — 締付け・充填後に確認できる位置に印があるか
- 継手位置の相互ずらし — 同一断面に継手が集中していないか。ずらし方は設計図書による
- かぶり厚さ — スリーブやカプラーは鉄筋径より外径が大きい。継手部でかぶりが確保できているかを、型枠面との実測で確認する
- 鉄筋のあき — 継手部の外径により隣接鉄筋との間隔が狭まり、コンクリートの充填性に影響する場合がある
- 材料の照合 — 継手のメーカー・型番・適用径が施工計画書と一致しているか、ミルシートおよび製品の証明書類が揃っているか
- 施工者の資格・講習 — 多くの機械式継手は製品ごとの施工講習修了者による施工が前提
記録の残し方
コンクリートを打てば継手は見えなくなります。打設前に記録を完結させるという段取りで臨んでください。
| 記録項目 | 内容 |
|---|---|
| 施工計画・要領 | 使用製品、性能等級、施工手順、管理値の出典(製品仕様書) |
| 作業者 | 講習修了証の写し、担当した部位 |
| 機材 | トルクレンチ・圧着機の校正記録、グラウトミキサの仕様 |
| 施工記録 | 部位・通り・階、継手本数、締付けトルクまたは圧着回数、施工日時 |
| グラウト管理 | 練り混ぜ水量、練上がり温度、外気温、充填・排出の確認、供試体の採取と強度試験結果 |
| 写真 | マーキング位置、締付け後の合いマーク、排出口からの排出状況、部位が特定できる引き(全景)と寄り |
写真は「寄りだけ」だと後から場所を特定できません。黒板に通り符号・階・部材記号を明記し、全景と寄りをセットで残してください。
不具合が出たときの扱い
ねじ込み不足、トルク不足、グラウトの排出未確認といった不具合は、その場で監理者に報告し、製品メーカーの指示を含めて処置方法を決めるのが原則です。締め直しの可否、鉄筋の切断・添え筋による対応など、製品によって認められる処置が異なります。現場判断で追い締めや再充填を行うと、性能の裏付けが取れなくなります。
海外では
海外では、工場でプレファブ化した鉄筋ユニットや、大面積の版部材を機械で組み立てる工法が広がっており、その接合部にカプラー方式の機械式継手が使われる例があります。ただし、継手の性能区分、必要な試験、適用条件は国ごとの規準で定められており、日本の現場にそのまま持ち込めるものではありません。国内の施工は、設計図書・特記仕様書と日本の規準、および製品ごとの技術評定・仕様書に従ってください。
※本記事は一般的な解説です。実際の施工にあたっては、設計図書および工事監理者の指示を必ず優先してください。
