先組み鉄筋カゴを現場ヤードで組む段取り

先組みが成立する条件をまず確かめる

先組みは「上で組むより下で組んだほうが速い・安全だ」という判断が成り立つときに選ぶ工法です。逆に言えば、次のどれかが欠けると地組はかえって足を引っ張ります。

確認項目 見るポイント
揚重能力 カゴ重量+吊り治具に対して、作業半径での定格荷重に余裕があるか
ヤード面積 組立架台+仮置き+玉掛け作業スペースが同時に取れるか
搬入動線 加工材の荷下ろし位置からカゴ組立位置まで人力小運搬が発生しないか
建て込み順 組み上がった順に建てられるか(仮置きが積み上がらないか)
天候 風で吊れない日が続いたときの滞留を許容できるか

特に見落としやすいのが仮置きの滞留です。組立速度が建て込み速度を上回ると、ヤードにカゴが溜まり、やがて組立架台の周りが塞がって手が止まります。地組の生産性は「1日に何本組めるか」ではなく「1日に何本建てられるか」で決まります。

ヤード配置の考え方

現場ヤードの平面模式図。クレーンを中心に作業半径を二重の弧で示し、内側に組立架台、その上方に建て込み位置、両側に玉掛けスペース、外側左に加工材置場、外側右に仮置きを配置し、加工材から架台へ、架台から建て込みと仮置きへの流れを矢印で示す。
ヤードの平面配置と流れ。作業半径・玉掛けスペース・仮置きの関係
  • クレーンの作業半径から逆算する。組立架台は、定格荷重に余裕のある半径内に置く。半径の端で組んでしまうと、あと少しの重量増で吊れなくなる。
  • 加工材の置き場は径・部材別に分ける。カゴ組立は同じ材を連続で拾う作業なので、混ざった山から探す時間がそのまま工数になります。
  • 玉掛け側に人が回れる幅を残す。架台を壁際に寄せると、反対側の玉掛けができず吊り点が偏ります。
  • 足元は転圧して水勾配をつける。架台が沈むと通りと相互が狂い、雨後に泥がかぶるとかぶり厚さ確保用のスペーサーが汚れます。

組立架台をどう作るか

架台は「水平が出ていて」「高さが揃っていて」「動かない」ことが条件です。角材や形鋼を渡した簡易なもので構いませんが、次を押さえます。

  • 複数の受け台の天端レベルを通しで確認する。1点だけ低いと、そこで曲がったまま結束され、建て込み時に修正が効きません。
  • 主筋が転がらないよう受け台に受け溝や止めを設ける。
  • 人が下に手を入れられる高さにする。腹筋・帯筋の結束、スペーサー取付、継手の確認は下側からの作業が必ず出ます。
  • 組み上がったカゴを架台から直接吊れる位置関係にしておく。一度地面に下ろすと持ち替えが増えます。

杭のカゴは長尺で細長く、柱・梁は断面が大きく短い。同じ架台で両方を賄おうとせず、部材ごとに受け台のピッチと高さを決め直すほうが結果的に早く進みます。

吊り点と変形対策

左は天秤を使わない直吊りで、吊り角度が寝てカゴの両端に内側へ向かう圧縮力が働く模式図。右は天秤(スプレッダー)を使い吊り角度を立てた多点吊りで、圧縮が小さく、カゴ内に仮補強材を入れた状態を示す。下部に吊り点の決め方と地切り確認の注意を記載。
直吊りと天秤吊りの比較。吊り角度が断面に与える力の違い

先組みで最も事故と手戻りが出るのが吊り上げです。

吊り点

  • 吊り点数と位置は、カゴが自重でどうたわむかを見て決める。長尺物は多点吊りとし、天秤(スプレッダー)を使って吊り角度を立てる。
  • 吊り角度が寝るほど部材を内側に圧縮する力が働き、断面が潰れます。天秤を使うのは荷重を分けるためだけでなく、この圧縮を避けるためです。
  • 吊り点となる主筋は、点で結束に頼らない。吊り用の当て材や締付け金具で確実に保持する。

変形対策

  • 断面を保つための仮の補強材(仮筋交い・仮枠・つなぎ材)を入れる。建て込み後に外す前提のものは、外し忘れが起きないよう色分け・数量管理をする。
  • 上下・前後の向きを決めておく。組んだ姿勢のまま建てられる向きで組み、地上で反転させない。
  • 吊り上げは一度地切りで止め、姿勢と変形を確認してから巻き上げる。ここで見ておけば、空中での修正を避けられます。

継手処理をどこまで残すか

先組みの範囲を決めるのは、実質的に継手の処理方法です。

  • 重ね継手の場合、下側の突出筋とのあき・重ね位置がカゴ側の寸法精度に直結します。突出筋の乱れを地上で修正しておかないと、建て込み時にカゴが入りません。
  • 機械式継手・ガス圧接を採用する場合は、接合作業のスペースと足場が建て込み後に必要になります。カゴの外周に人が取り付ける余地を残した割付にしておく。
  • 継手の種類・位置・必要性能は工事ごとに異なります。設計図書・特記仕様書と監理者の指示で確認してください。カゴの分割位置を現場都合だけで決めないことが肝心です。

海外の「工場製作型」との距離

海外では、先組みカゴを現場の地組ではなく専業ヤードや工場の製品として供給する形が定着しつつあり、鉄筋加工業者が先組みカゴを生産性向上の中核として打ち出したり、機械式継手メーカーが安全性・工期の面から先組みを推す例があります。ロボットセルでカゴを自動製作する研究も出ています。

この分業が成り立つ前提は、現場に残る作業を「建て込みと継手処理」だけに絞れることです。運搬できる寸法にカゴを分割し、分割位置の接合を機械式継手などで確実に処理する設計が要ります。日本でも杭・柱・梁の先組みは広く行われていますが、多くは現場ヤードでの地組で、天候・面積・揚重能力に左右されるのが実情です。

真似できるのは考え方の部分——「どこまでを地上で完結させ、何を空中に残すか」を最初に決める——であり、かぶり厚さ・継手位置・定着・材料規格は国ごとに規準が異なります。日本での施工は設計図書および日本の規準に従ってください。

段取り前のチェックリスト

  • 定格荷重に対するカゴ重量(吊り治具込み)の余裕を確認したか
  • 組立架台の天端レベルを通しで確認したか
  • 吊り点位置・吊り治具・仮補強材を組立前に決めたか
  • 建て込み順と仮置き本数の上限を決めたか
  • 継手位置・種類を設計図書で確認し、分割位置に反映したか
  • 強風・降雨で吊れない日の代替作業を用意したか

※本記事は一般的な解説です。実際の施工にあたっては、設計図書および工事監理者の指示を必ず優先してください。

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