打設中の鉄筋の見張り 何を見て、どう直すか

打設中に鉄筋を動かすのは何か

打設中の配筋乱れは、ほとんどが次の三つのどれかで起きます。原因が分かれば、見る場所も直し方も決まります。

  • 生コンの重さと流動圧 — 落下地点から横に流れる力、壁・柱では型枠内を落下する流れが、スペーサやセパを押しのける
  • 人と道具の荷重 — 上端筋の踏み抜き、バイブレータの引っ掛け、トンボ・レーキで手前に引く力、ポンプ筒先やホースの振り
  • 打設前から効いていた不備が表に出る — 結束の飛ばしすぎ、バーサポートの数不足・座りの悪さ、スペーサの向き違い、仮止めのままの差し筋

三つ目が厄介です。打設前は形になっていても、荷重がかかった瞬間に崩れる。打設中の見張りは「異常を見つける仕事」であると同時に、「打設前の段取りの答え合わせ」でもあるという前提で臨むと、見るべき場所が絞れます。

部位別に、どこがどう動くか

スラブ・壁・梁・柱の模式断面に、上端筋の沈み、差し筋の傾き、スリーブの浮き、壁縦筋の型枠側への寄り、フープのずり下がり、下端筋スペーサの倒れを矢印で示した図
部位ごとに、打設中に起きやすい変状と動く向きを示した模式断面
部位 起きやすい変状 主な原因 打設中に直せるか
スラブ上端筋 踏み倒れ・沈み込み、かぶり過大 バーサポート不足、通り道の集中歩行 直せる(生コンが柔らかいうち)
スラブ下端筋 スペーサの倒れ・めり込み 打設圧、スペーサの座り不良 ほぼ直せない
壁の縦筋・横筋 型枠側への寄り、かぶり不足 落下する生コンの流れ、セパ・スペーサ不足 上部は直せる、下部は困難
柱 かぶりの片寄り、フープのずり下がり 筒先を一方に固定、締固め不足での偏り 天端付近のみ
梁 あばら筋の傾き・間隔開き、スラブ筋との干渉 バイブレータの引っ掛け、上端筋の踏み 部分的に直せる
開口部・スリーブ回り 補強筋の逃げ、スリーブの浮き上がり・移動 生コンの回り込み、固定不足 スリーブは早期発見なら直せる
天端の差し筋・アンカー 位置ずれ・傾き・埋没 仮止めのまま、天端仕上げ時の押し込み 直せる(最重要の見張り点)
打継ぎ面 目荒らし面へのノロ被り、鉄筋の汚れ 打設順序、洗い出し不足 直せる

見張りの立ち位置

打設中のスラブ断面に、打設面で筒先まわりを見る人、打ち上がりの後ろを追いかけて直す人、一段下の足場から型枠外側を見る人の三か所の立ち位置を示した図
見張りの立ち位置。打設面・追いかけ・一段下の三点に目を置く

打設面の上に一人立たせただけでは、片面しか見えません。上と下、両方に目を置くのが基本です。

  • 打設面 — 筒先の位置、上端筋の踏み、バイブレータの当て方、天端定規まわり
  • 一段下・型枠の外側 — 壁のはらみ、セパの効き、下端筋のかぶり、型枠からの漏れ
  • 打ち上がりの追いかけ — 打設が進んだ後ろを歩き、生コンが柔らかいうちに直す

見張りの役割を持った職長が筒先を持ってはいけません。手が塞がると見なくなります。見張りは手ぶらで、ハッカーと結束線だけ持って歩く。これが実務上いちばん効きます。

打設前でなければ直せないこと

打設が始まってから「これは無理だ」と気づくと、止めるか、やり直すかの判断になります。次の項目は打設前の検査で潰しておく類のものです。

  • 主筋の本数・径・継手位置・定着の納まり(打設中は手が入らない)
  • 下端筋のスペーサの種類・配置と、その座りの安定
  • 壁の縦筋と型枠の間隔を保持する部材の配置
  • 開口補強筋の位置と固定
  • 差し筋・アンカーボルトの位置出しと、型枠・受け材への本固定
  • 上端筋を支えるバーサポートの数と、通行動線の養生(歩み板の敷設)

かぶり厚さ・スペーサの配置数・補強筋の仕様は設計図書と特記仕様書に従います。監理者検査の記録写真は、打設中に「元はこうだった」と照合できる唯一の証拠になるので、部位ごとに残しておきます。

その場で直せること

生コンが柔らかいうちであれば、次は現場判断で復旧できます。ただし直したことを記録に残すのが条件です。

  • 上端筋の沈み — バーサポートを追加で差し込み、鉄筋を引き上げて結束し直す。人が乗った直後に直すのが鉄則で、時間が経つと持ち上がらない
  • 上端筋の間隔開き — 隣の筋との間隔を戻して結束。飛ばし結束だった箇所は本結束にする
  • スリーブの浮き — 型枠側または鉄筋に控えを取り直す。位置がずれていれば補強筋の要否を監理者に確認
  • 天端の差し筋 — 天端仕上げが終わるまで見張り続ける。仕上げ工が邪魔にして寝かせてしまうことがある。定規を残し、仕上げ後にもう一度位置を確認
  • 打継ぎ面の鉄筋のノロ — 硬化前に水と刷毛で落とす

逆に、打設中に無理をしてはいけないのは、硬化が進んだコンクリートの中の鉄筋を叩いて動かすこと。周囲を緩めるだけで、かぶりの改善にならないことがあります。この場合は打設を止めて監理者に報告し、処置を協議します。

「動かない配筋」を先に作る

海外では、橋梁床版のような広い平場を対象に自走式の結束ロボットが実用段階に入っており、また鉄筋かごを専業の工場から購入するサプライチェーンも定着しています。日本の現場にそのまま持ち込める話ではありませんが、考え方として参考になるのは「打設に耐える剛性をどこで確保するか」を工程の初期に決めている点です。

自社の現場に置き換えるなら、次の二点です。

  • 結束の順序と省略のルールを社内で言語化する — どの交点を本結束にし、どこを飛ばすかは熟練者の判断で回っていることが多い。これを部位ごとに文書化すると、打設中に崩れる箇所が減り、新人への引き継ぎも早い
  • 先組みの可否を早期に判断する — 揚重能力・搬入路・保管ヤードが揃うなら先組みは有効ですが、吊り込み時の変形対策と定着部の納まりが勝負どころです。採用の可否と仮補強の方法は、設計図書と監理者の確認のうえで決めてください

打設立会いは、鉄筋工の仕事の最後の関門です。その日の直しの記録を、次の階の段取りに反映する。同じ場所で毎回同じ変状が出るなら、それは打設の問題ではなく、組み方の問題です。

※本記事は一般的な解説です。実際の施工にあたっては、設計図書および工事監理者の指示を必ず優先してください。

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