目次
加工帳で食い違うのは「寸法」より「形状の呼び方」

誤加工の報告を追っていくと、寸法を書き間違えたというケースは意外に少ない。多いのは、
- 同じ形を、拾い出した人と加工場の人が別の符号で認識していた
- フックの向き(内側か外側か)が図面から読み取れず、加工場が慣例で判断した
- 曲げの寸法が「外々」なのか「内々」なのか、記載がないまま流れた
- 同じ「L形」でも、長辺を先に書く会社と短辺を先に書く会社が混ざっていた
といった、形状の解釈のズレである。寸法の書き間違いは検収で見つかるが、解釈のズレは「書いたとおりに加工されている」ので、現場に出して組もうとした瞬間に初めて発覚する。そこから再加工・再搬入となると、半日から一日の手戻りになる。
海外では、香港の建造業議会が場外プレファブ向けに標準鉄筋形状コードを整備し、設計から加工帳、ヤード、現場搬入までを同じ記号で通す仕組みを公的に後押ししている。形状に共通の番号を振るという発想そのものは、日本の社内運用でもすぐ真似できる。ただし曲げ半径・定着長さ・継手の扱いは国ごとに規準が異なるため、日本の施工は設計図書と日本の規準に従うのが前提になる。
拾い出しの段階で決めておくこと
加工帳を書き始める前に、その工事で使うルールを一枚にまとめて関係者に配る。後から口頭で補足すると、必ず伝わらない人が出る。
| 決めておく項目 | 決め方の例 |
|---|---|
| 寸法の基準 | 外々寸法か、内々寸法か。図面と加工帳で統一する |
| 形状の書き順 | どの辺から書くか(例:左下から時計回り) |
| フックの表記 | 角度と向きを図示。「右」「左」だけで済ませない |
| 定尺の扱い | 定尺長さと、継手を入れる位置の考え方 |
| 符号の付け方 | 部材記号+通り+階+連番など、桁数まで固定する |
定着長さ・継手長さ・かぶり厚さの具体的な値は、設計図書と特記仕様書、監理者の指示による。加工帳のルールを決める段階では「どこに書いてある値を使うか」を明示しておけばよい。「前の現場と同じ」は禁句にする。
加工帳に必ず載せる項目
社内様式がどうであれ、次の情報が欠けていると加工場が判断で埋めることになる。
- 符号(図面と一対一で対応すること)
- 径・鋼種(SD295/SD345などの区別)
- 形状コードと形状図(コードだけでなく図も併記する)
- 各辺の寸法(基準が外々か内々かを様式の欄外に明記)
- 本数
- 加工後の総長さ(切断長。加工場の材料手配用)
- 使用部位(何階の何通りの何部材か)
- 搬入希望日と荷姿・玉掛け位置
最後の「搬入希望日と荷姿」を書かない加工帳が多いが、これを省くと搬入待ちが起きる。どの結束単位で、どの順番に、どこへ降ろすかまで書いておくと、現場でのバラシと仕分けの手間が減る。長尺物やかご物では、吊ったときに変形しない結束・吊り点の指定も入れる。
二重チェックはどこに入れるか

全数を二人で見直すのは現実的ではないので、間違えると痛いところに絞る。
1回目:拾い出し者 → 職長 図面と加工帳の符号が一対一で対応しているか。拾い漏れた部材がないか。図面の変更(設計変更・質疑回答)が反映されているか。ここでは寸法より「数え漏れ」と「最新版かどうか」を見る。
2回目:加工場からの加工帳返し 加工場が読み取った内容を返してもらい、形状図と寸法基準の解釈が一致しているか確認する。特に、
- フックの向き
- 曲げの内法寸法
- 同じ符号で径が違うものが混ざっていないか
この3点は、現場に出てからでは直せないコストが大きい。加工場が「たぶんこうだろう」と判断した箇所には印を付けて返してもらう運用にすると、危ない箇所が可視化される。
3回目:搬入検収 荷札の符号と加工帳を突き合わせ、本数を数える。全数の寸法を測るのは無理なので、その日の荷から、形状が複雑なものと初出の符号を優先して抜き取り検寸する。定型の直筋は本数確認で足りる。検収記録は写真とセットで残し、後で食い違ったときに「どちらの解釈だったか」を遡れるようにする。
社内の形状コードを揃える
会社として一度整理しておくと、現場が変わっても通用する。
- 過去1〜2年の加工帳から、実際に出てきた形状を全部書き出す
- 同じ形なのに別名で呼ばれているものを統合する
- 番号を振り、形状図・寸法の基準・フックの表記ルールをセットで1枚にする
- 加工場にも同じ表を渡し、合意を取る
- 表にない形状が出たら、その都度「臨時コード+形状図必須」として登録していく
大事なのは4番で、社内だけで決めても加工場が別の体系を持っていれば意味がない。逆に、加工場が既に整った体系を持っているなら、そちらに合わせるほうが早い。
この整理は、将来的に加工・組立を場外に出す場合の下地にもなる。海外では鉄筋かごの組立を工場側へ寄せる動きが進んでいるが、その前提になっているのが形状情報を同じ記号で受け渡せる状態である。現場で組むか工場で組むかにかかわらず、「誰が読んでも同じ形に読める加工帳」であることが出発点になる。
※本記事は一般的な解説です。実際の施工にあたっては、設計図書および工事監理者の指示を必ず優先してください。
