壁の配筋 縦筋と横筋の内外関係と幅止め筋

壁配筋は「どちらを外に置くか」を決めてから始まる

壁の水平断面模式図。ケースAは横筋が外側で横筋がかぶりの基準になり、ケースBは縦筋が外側で縦筋がかぶりの基準になることを示す
壁の水平断面。縦筋と横筋のどちらを外側に置くかで、かぶりの基準が変わる

ダブル配筋の壁で最初に確定させるべきは、縦筋と横筋の内外関係です。これが決まらないと、かぶり厚さの取り方も、幅止め筋の掛け方も、横筋の継手位置も決められません。

内外関係は設計図書(構造図の配筋標準図、壁リスト)に示されるのが通常です。図に明示がない、または現場条件と食い違う場合は、着工前に監理者へ確認して記録を残します。「前の現場はこうだった」で進めると、階が変わったところで食い違いが表面化します。

内外を判断するときに効いてくる要素

  • かぶり厚さは最も外側の鉄筋から測るため、外に来る側の鉄筋が設計かぶりの基準になる
  • 縦筋は上下階の差し筋・継手と通りを合わせる必要があり、内外が階で入れ替わると継手が成立しない
  • 横筋は柱や直交壁への定着が絡むため、柱主筋・帯筋との取り合いで位置が制約される
  • 開口補強筋、設備スリーブの補強筋が、どちらの層に沿って入るか

つまり内外関係は現場の好みではなく、定着・継手・かぶりの三つが同時に成立する側で決まります。1枚の壁だけでなく、取り付く柱・梁・スラブ、上下階まで通して見ることが必要です。

段取りの順序と、各段階の押さえどころ

壁の水平断面模式図。上段はスペーサーがかぶり厚さ、幅止め筋が内外二層の間隔、セパレータが型枠相互の間隔を受け持つことを示し、下段は幅止め筋が不足すると鉄筋が片側へ寄り一方のかぶりが不足する状態を示す
スペーサー・幅止め筋・セパレータの受け持ちと、幅止め筋不足時の片寄り

下階からの差し筋と墨出し

壁配筋の精度は、実質ここでほぼ決まります。差し筋の位置がずれていれば、建て込み時に無理な曲げ戻しが必要になり、かぶりも壁厚も狂います。スラブ・基礎の打設前に、壁の通り芯と壁厚を墨で押さえ、差し筋の位置・本数・内外の層を確認しておきます。打設中に差し筋が倒れないよう、仮の振れ止めを入れておくと手戻りが減ります。

縦筋の建て込み

差し筋に継いで縦筋を立てます。この段階ではまだ自立しないので、横筋を数段先行して配り、仮の控えを取りながら建て入れを確認します。建て入れが倒れたまま横筋を全段結束してしまうと、後からの修正はほぼ不可能です。

横筋の配りと継手位置

横筋は、継手が同一断面に集中しないよう位置を散らします。壁の端部(柱際・開口際)は定着と継手が重なりやすい場所なので、継手を逃がす位置をあらかじめ施工図に落としておきます。継手長さ・定着長さの数値は設計図書・特記仕様書によります。

幅止め筋とスペーサー

ここで役割を混同しないことが重要です。

部材 受け持つ寸法 効かせる相手
スペーサー(ドーナツ・プラスチック等) かぶり厚さ 鉄筋と型枠の間
幅止め筋 内外二層の間隔(壁厚方向の鉄筋位置) 内側の鉄筋と外側の鉄筋
セパレータ 型枠相互の間隔=壁厚 型枠と型枠

幅止め筋が無い、または少ないと、型枠を建て込んだ瞬間に鉄筋が片側へ寄り、一方のかぶりが過大・反対側が不足という状態になります。セパレータが壁厚を保っていても、その中で鉄筋が偏れば意味がありません。

幅止め筋のフックは、縦筋に掛けるか横筋に掛けるか、配置間隔、千鳥とするかを設計図書・施工要領で確認します。掛ける相手が決まったら、現場で統一します。人によって掛け方が違うと、検査でも打設時の安定でもばらつきが出ます。

配筋検査で指摘を受けやすい箇所

  • 横筋の継手が同一位置に並んでいる
  • 壁端部(柱際)の横筋の定着・フックの向きが図と違う
  • 開口補強筋の定着が足りない、隅角部の斜め補強が入っていない
  • スペーサーが縦筋・横筋どちらに掛かっているかが不統一で、かぶりの基準が揃っていない
  • 幅止め筋が上下端部や開口まわりで抜けている
  • 設備スリーブの位置がずれ、補強筋が後追いになっている

打設時に動きやすい箇所

壁は型枠を建て込むと中が見えません。型枠建て込み前に、動きやすい場所を潰しておきます。

  • 打ち込み口の直下:コンクリートの落下と横流れで鉄筋が押される
  • 縦筋の上端:次階への継手部分。拘束が少なく、振動で振られやすい
  • 開口部まわり:型枠が分断され、補強筋が浮きやすい
  • バイブレータを当てる位置:幅止め筋のフックが外れやすい。結束を確実にする

打設中は、配筋担当を張り付けて、打ち込み位置を移動するたびに鉄筋の動きを目視します。打設後、型枠を解体した時点でかぶり不足が見つかっても、やり直しは効きません。

自動化の話を壁配筋に当てはめると

海外では、橋梁床版などの平場で自律結束ロボットが実用段階に入りつつあり、トンネル覆工やプレキャスト部材のように同一形状が繰り返される部位では、工場で鉄筋かごをロボット組立する取り組みも進んでいます。ただし成立条件は「広い平面」「上下筋が連続するマット」「形状のバリエーションが少ないこと」です。

壁は立面で、開口・設備スリーブ・柱梁の取り合いが毎枚違うため、そのままでは当てはまりません。現場に持ち帰れるのは機械そのものではなく、施工図・加工帳の段階で形状の種類を集約するという考え方です。開口補強や幅止め筋の仕様を部位ごとにバラバラに決めず、集約できるところは集約する。これは自動化の有無に関係なく、加工場の手間と誤組立を減らします。

なお、海外の規準における継手長さ・定着長さ・かぶり厚さ・材料規格は日本と体系が異なります。日本の施工は設計図書および日本の規準に従ってください。

※本記事は一般的な解説です。実際の施工にあたっては、設計図書および工事監理者の指示を必ず優先してください。

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