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建設業のAI導入事例を紹介

人材不足が深刻な課題である日本ではITの力で人材不足を解消することが必要不可欠になっています。

建設業のうち、特に弊社のような専門工事業者では人材不足がかなり深刻化しており、人材確保が喫緊の課題です。

この記事では建設業のAI導入事例を紹介します。

AI(人工知能)について

第四次産業革命という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

近年では、あらゆるモノやヒトがインターネットとつながることで大量のデータの蓄積が可能になりました。

そして、「デープラーニング」の登場により、その大量のデータを学習するプログラムの研究が活発化し、性能が飛躍的に向上しています。

AIは社会の様々な分野に導入され、社会システムが劇的に変革しています。

身近な例でいえば、タクシーの配車アプリ(Uber)や音声解析システム(alexa)です。

長らく、生産性が向上しないと言われてきた建設業においても、AIの導入の動きが活発化してきています。

まずは、AIの基本知識をご紹介します。

建設業においてもAIが注目されている

AIとは、「Artificial Intelligence(アーティフィシャル インテリジェンス)」の略で、人工知能のことです。

AIは、学習用プログラム(機械学習)に学習データを投入することで学習済みモデルを作成し、この学習済みモデルから推論をするシステムです。

最近では、自分の顔が芸能人の誰に似ているか判別するアプリや、植物の葉っぱの写真から植物の名前を判別するアプリなど、多くのAIアプリ(画像認識アプリ)が開発されています。

建設業においてもAIが注目されています。

ゼネコンの中にはAIを使いこなすことを前提として、業務改善を提案できるスキルも重要視されつつあります。

AIには識別、予測、実行の3種類がある

AIで推論させた結果の出力(機能)は識別、予測、実行の3種類に大別されます。

識別とは、情報の判別や仕訳、意味の理解、異常の検知などの機能を指します。

予測は、数値の予測の機能を指します。

実行は、行動の最適化や作業の自動化を指します。

例1:画像認識
鉄筋の本数のカウント
<入力>
画像
<出力>
識別(情報の判別)

AIによる部資材(鉄筋)の個数カウントについて課題から開発手順まで解説!

例2:amazon alexa(AIアシスタント・音声解析サービス)

<入力>
音声「~を○○して」
<出力>
識別(意味理解)
実行(表現生成)
実行(作業の自動化)

実世界とサイバー空間が相互関連したデータ駆動型社会が加速している

AIは、社会の様々な分野に導入されています。


商務流通情報分科会 情報経済小委員会 中間取りまとめ ~CPSによるデータ駆動型社会の到来を見据えた変革~平成27年5月

CPS(Cyber-Physical-System)とは、実世界とサイバー空間が相互関連した社会のことを意味します。

過去の各種データより、コスト、品質、工程等すべてが最適化されたサイバー空間でのシミュレーション結果を用いて、リアル空間にて各種ロボット等を活用して自動化・自律化が進んでいます。

AIには4つの知識レベルがある

AIには、知識レベルというものが定義されています。

知識レベルは、学習を行うデータ量と学習プログラムの性能に比例します。

AI知識レベル

AIの知識レベル=学習済みモデルのレベル=学習データ量×学習用プログラムの性能

AIとは「大量のデータを収集し、知識レベルを向上させる自己学習システム」

AIの知識レベルは4段階にレベル分けされています。

レベル1 定型業務の自動化


・自動翻訳機
・不良品判別
・自動コールセンター
・チャットボット

レベル1

定型業務の自動化

ポイント
・人間の与えた基準や手順に従ってAIが判断する
・単純作業を自動的に処理する

レベル2 非定型業務の半自動化

レベル1の定型業務に自動化の場合、鉄筋本数アプリでいえば約1000枚程度の写真のデータでも十分な効果を得られました。

レベル2の非定型業務の半自動化となってくると、より大量のデータの入力が必要になります。


・投資アドバイス
・リコメンデーション
・故障予兆検知
・amazon alexa(音声アシスタント・音声認識)
・タクシー配車最適化システム

レベル2

非定型業務の半自動化

ポイント
・人間の与えた基準や手順に従ってAIが判断する
・複雑な作業において、人間の判断を支援し、人間が処理する

タクシーの配車アプリの事例を紹介します。

タクシーの配車アプリの目的は2つあります。

1.タクシー乗務員のスキルのばらつきを解消すること

2.鉄道の運行状況や天候を分析し、事故による遅延や異常事態に対応する能力の向上

タクシーの配車アプリは個人のGPSデータや鉄道の運行状況、道路の混雑状況、天候、大規模イベント情報をデータとして収集し、分析します。

集めたデータは、タクシーの需要予測シュミレーションとしてAI化されます。

AIは、電車の遅延等によりタクシーの需要が高まる地域を予測し、タクシーの運転手はAIの指令を受け、最適ルートで運転ができるという仕組みです。

レベル3 非定型業務の自動化


・自動車の自動運転
・株式自動取引

レベル3

非定型業務の自動化

ポイント
・人間の与えた基準や手順に従ってAIが判断する
・複雑な作業を人間の判断を介せず自動的に処理する

レベル4 自律化

レベル4ではAIは完全に人間を超越するレベルになります。

よく映画でAIが暴走し、世界が大混乱に陥るものがありますが、レベル4のAIが題材になっています。

レベル4

自律化

ポイント
・AI自身が手順や判断基準を身につける
・道の状況にも対応し、自ら判断実行する
・シンギュラリティ(人間を超える領域)

建設DXについて

人材不足が深刻な建設業界を、AI等のITの力で一人一人の生産性を上げていこうとする取り組みが建設DXです。

しかしながら、建設業界ではまったく建設DXが全く浸透しておらず、googleで検索する人もほとんどいないのが現状です。

現在、建設業界でAIに取り組んでいるのはスーパーゼネコン等の一部の大企業だけですが、人材不足が最も深刻なのは中小企業です。

ここでは、建設業界でのAIの意義や、数少ない建設業界でのAIの導入事例を紹介していきます。

建設DXは人材不足を解決する手段となる

建設業界では人材不足が深刻化しています。

特に専門工事業者の「職人」の高齢化が深刻で、10年後には50万~100万人の人材不足が発生すると国土交通省が試算しています。

人材不足を解消するには一人当たりの生産性を向上させるか、もしくは外国人人材に頼るしか現状は方法がありません。

しかし、外国人人材は最長で5年で母国へ帰国してしまうので、長期的な対策には不向きなのが現状です。

建設業界で一人一人の生産性を向上させるには、ITの力が不可欠になっています。

レベル1定型業務の自動化から始めよう

AIの4つのレベルのうち、一番レベルが低いのは「定型業務の自動化」です。

普段の業務を見直した際に、単純作業なのに非常に時間がかかる業務が必ずあるはずです。

例えばパン屋さんの例でいえば、どのパンがいくらなのかを判断する作業などです。

このように、普段の作業を見直したときに、単純作業があればAIが導入できる可能性があります。

ゼネコンの事例

建設事業分野のAI導入事例を具体的にみていきます。

ゼネコンの場合、渉外・営業部門と施工管理部門でAIの使用目的が異なります。

ゼネコンのAIの導入目的の多くは施工の最適化です。

今までアナログで管理していた施工管理内容をビックデータとして蓄積し、AIを活用したシミュレーションによって最適な施工計画を作成します。

レベル1のような単純作業が発見できれば、その作業を自動化・ロボット化してコストを低減させます。

大成建設 AIを活用した設計支援システム「AI設計部長」の開発に着手

大成建設 Wi-Fi環境とAI・IoTを一体化したDX標準基盤「T-BasisX」を構築

<渉外・営業>のAI活用

渉外・営業部門のAI活用事例をみてみます。

例えば、
・営業案件の特性(工種、発注者、見積価格etc..)に基づいて落札の可能性を予測する。
・設計条件(構造,材料 etc..)から、床の遮音性能を予測する。
・設備情報・測定データ(空調設備,外気温,湿度 etc..)から、施設の消費電力を予測する。

などです。基本的には顧客のニーズに対して、過去の実績から分析したときの課題の洗い出すことが主な使用用途になるでしょう。

<渉外・営業>のAI活用目的

・顧客のニーズをヒアリングし、ニーズや関連法規に基づいた自動設計を行い、その結果を施工シミュレーションし、最適なコスト、工程を算定し提案できるようになること。
・適切な顧客ニーズを引き出す渉外活動を行うこと。
・適切な顧客ニーズを基にして、更にAIシステムの制度の向上を行うこと。

<施工管理>のAI活用目的

例えば、
・シールド工法の場合、掘進データ(蛇行量、マシンの向き等)から修正操作を予測する。
・ケーソン工事の場合、測定・計測データ(刃先抵抗、周面摩擦、土圧・水圧等)から、掘削位置・順序を予測する。

基本的には、現場の出来高データを分析し、より良い原価・工程のための対策の洗い出しが主な用途になります。

<施工管理>のAI活用目的

・現場での出来高データの計測をする
・ロボット等の自動施工によるコスト・工期短縮の達成

中小企業の事例

専門工事業の場合、AIを用いて、技能レベルのばらつきを解消することが最大の課題になっています。

国土交通省が発表している通り、日本のものづくり産業を支えてきた熟練技能者の高齢化が加速しています。

資料によれば、10年後の2025年には技能労働者数が50万~100万人不足すると試算されています。

工期設定が厳密な建設業では技能労働者不足が進むと商品やサービスの品質低下や工期延長の発生が予想されますので、技能労働者の確保は最重要課題です。

技能労働者不足の解消という課題に対して、取り組まれている主な対応策は「技能実習生(外国人労働者)の雇用」です。

日本の建設業が抱える課題はもはや日本人だけで解決できるものではありません。

若手技術者の不足により海外からの人材を調達することが不可避となっており、グローバルな視点で対策を講じていく必要があります。

レベル1 鉄筋の本数のカウントミスを無くす取組み

AIによる部資材(鉄筋)の個数カウントについて課題から開発手順まで解説!

「鉄筋の本数を数える」という定型業務を自動化した例になります。

鉄筋加工機には自動で本数を計測して切断する機械が存在しますが、とても高額です。

レベル1の画像認識AIであれば低コストで実装でき、施工ミスを減らすことができます。

レベル1であれば費用は10万円前後

レベル1であれば費用は5万~15万円で整備することができます。

自社開発であればGPU搭載のパソコンが必須になりますが、高性能のパソコンも今は非常に安価で用意することができます。

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専門工事業にAIは導入できる?

この他にもAIを導入できそうな作業はあるかどうか検討してみます。

鉄筋工事業の作業プロセスは大まかに以下の通りです。

加工工程での作業について

加工場での作業は、機械化が進んでいます。

高性能な機械が材料径や本数を適切に判断してくれます。

ただし、高性能な機械は高額なので費用対効果を考える必要があるでしょう。

材料径の選別ミスの防止案は次のような対策が考えられます。

材料径の選別ミスの防止案

・絵符の材料径の部分を色分け
・ヤードを径ごとに分ける
・ハンコ等のダブルチェック

人間が目視で材料径を判断するという作業は非常に単純なので、AI導入が進みそうです。

しかしながら、わざわざAIを導入しなくても上記のような対策をとればミスは軽減できそうです。

曲げ加工のミスの防止策は次のような対策が考えられます。

一般的なミスは、加工角度のミスが多いと思います。

角度が適切に加工されていないと現場で余分な作業が増えてしまい、工事の粗利益にも影響を与えます。

曲げ加工ミスの防止案

・角度を測る治具を用意する
・ダイヤル式の加工機等の高精度な加工機を導入する
・ハンコ等のダブルチェック
・鉄筋加工に優先度をつけ、1°ほど角度を強くする

曲げ加工のミス防止策としては、最先端の加工機を導入することで対応する企業が多いようです。

鉄筋の本数カウントAIのように、90度を写真で判定する方法もありかと思いますが、手間がかかり非効率です。

出荷に関しては、単純そうに見えますが、熟練技能者と若手技能者とで大きな差が出ます。

遠方の工事現場への出荷であれば、出荷忘れがあると余計な経費がかかってしまうので、工事成績に大きな影響を及ぼします。

出荷ミスの防止案

・出力した加工帳をチェックする
・絵符に印刷したQRコードで出荷物の確認

鉄筋の加工部材は様々な形をしています。生材のみであれば大型車にスムーズに積み込みを行うことができます。

しかしながら、片アンカーやスターラップ、両アンカーなどの様々な形の部材を大型車に積み込む際はテクニックが必要になります。

大型運搬車の最大積載重量に対して60%しか積み込めていないと40%分の運搬費を損することになるからです。

また、玉掛をスムーズに行えるように積み込むことも非常に重要です。

このように、出荷作業は単純そうに見えて意外と複雑な作業を含んでいます。AIを導入できそうな単純作業は無さそうです。

工事現場における作業について

実際の工事現場では、リーダーシップが非常に重要になります。

人材不足が深刻な現在では、ベトナムやミャンマー、モンゴルといった海外からの技能実習生に対してもリーダーシップを発揮することが必要です。

言葉も文化も異なる相手に対してコミュニケーションをとり、効率的な行動をとらせることはとても難しいことです。

では、工事現場へのAI導入は不可能でしょうか?

まずは作業を洗い出してみます。S造基礎の鉄筋工事の場合です。

人員を経験が豊富な職長等のマネージャークラス(Mクラス)とその他のメンバーで分けて考えてみます。

Mクラスは、建設会社から提供された構造図を元にキープランと呼ばれる施工図の作成を行います。

キープランの作成方法には正解はなく、実際に作業するメンバーに応じて仕上げます。

例えば、作業するメンバーが全員Mクラスレベルであり、各々が配筋手順や配筋部材の位置、配筋検査での対応TIPS等を完璧に把握しているようであればキープランは全く必要ありません。

しかし、実際はMクラス1人に対して複数のメンバーが指示待ちでぶら下がる状況がほとんどかと思います。

メンバーが外国人実習生の場合、実習生でも可能な作業に対してキープランを丁寧にわかりやすく作成すれば生産性がアップしそうです。

施工図(キープラン)作成作業について

S造基礎の場合、施工図は大きく4種類あります。基礎エース、ベース柱、梁、スラブの4種類です。

梁やスラブの場合は段取りが複雑で難易度が高いですが、基礎エースやベース柱であれば実習生であっても作業ができそうです。

ダブルチェックを徹底すればさほど全体の工程に大きなインパクトを与えることもないでしょう。

基礎エース計画書、ベース柱計画書の作成作業であればAI導入ができそうです。

施工図作成作業はAI化できそう

施工図作成作業は一部AI導入可能性があるかもしれません。

打合せ、組立、納品に関しては作業が複雑すぎるため、AIを導入することはほぼできないと考えます。

これらの作業に関してはAIというよりはユニット化・機械化の方が良いかもしれません。

まとめ

日常業務の中には単純作業が必ず存在しています。

単純な定型業務を洗い出すことができれば、AIを導入することで生産性を安価に向上させることが可能です。

AIの導入を検討している方は、まずがレベル1のAIの開発を行ってみてください。

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