時折、社会問題として話題になるのがゼネコンと国や自治体による汚職事件です。
これまでさまざまな汚職事件が起きていますが、当時、世の中に激震を与えた「ゼネコン汚職事件」をご存知でしょうか。
この記事では、1993年から1994年にかけて起きた「ゼネコン汚職事件」についてご紹介します。
目次
ゼネコン汚職事件の概要
ゼネコン汚職事件とは、ゼネコン各社から中央政府や地方政界に多額の賄賂が送られた事件です。
この事件は金丸信元副総理の脱税事件から判明しましました。
1993年6月に当時の仙台市長であった石井亨氏の逮捕をきっかけに各地で贈収賄事件が発覚しました。
石井亨を含む収賄側は8人、贈賄側は大手ゼネコントップを含む25人が逮捕される事件として世間に震撼を与えています。
さらに、1994年3月には「埼玉土曜会談合事件」の告発見送りから、建設大臣であった中村喜四郎氏があっせん収賄の容疑で逮捕されました。
ゼネコン汚職事件の一覧
ここからは、ゼネコン汚職事件の一覧をご説明します。
ゼネコン汚職事件には以下の4つの事件が含まれます。
仙台市汚職事件
前述の通り、仙台汚職事件は一連のゼネコン汚職事件の発端となった事件です。
これは1993年6月29日、当時仙台市長であった石井亨氏、さらにゼネコン幹部ら9人が逮捕された事件です。石井氏は公共工事に関係して、4社のゼネコンから1億円を受け取ったとして逮捕に至りました。
さらに、石井氏は仙台市中心部の再開発においても、汚職疑惑が浮上して再逮捕されています。仙台汚職事件では、鹿島建設の専務(元鹿島建設 東北支店長)らが石井氏への闇献金疑惑で東京地検特捜部が聴取する運びとなりました。
なお、当時の鹿島建設の専務は建設業の談合組織である東北建設業協議会(すでに解散)のしきり役だったとみられています。
宮城県汚職事件
宮城県汚職事件は、宮城県の開発事業に関係する汚職事件です。
1993年9月27日、名取市の県立がんセンター工事の業者選定において、当時宮城県知事であった本間俊太郎氏が逮捕されています。
なお、本間氏は業者選定の際に2000万円を受け取ったとされています。
茨城県汚職事件
茨城県汚職事件は、県が発注する県庁庁舎移転新築工事などに関係する汚職事件です。
この事件において逮捕されたのは、当時の茨城県知事である竹内藤男氏らです。
竹内氏は参議院議員を1期努めたあとに茨城県知事の職についています。当時の茨城県は文化施設の進行が近隣県と比べて遅れていたこともあり、竹内氏は熱心に文化振興を進めていました。
しかしながら、在任中である1993年にゼネコン4社から9500万円を受け取った収賄容疑で逮捕されています。
最終的に竹内氏本人が病気により公判手続きが停止して、その後、死去したことで控訴は棄却されました。
埼玉土曜会事件
埼玉土曜会事件は、中村喜四郎氏が埼玉土曜会の談合事件に関して公正取引委員会に刑事告発阻止をはたらきかけたことで明るみになった事件です。
それにより中村氏は斡旋収賄罪に問われました。
中村氏が罪に問われたことで、国会は26年ぶりに逮捕許諾権請求を全会一致で決定しています。
なお、中村氏は実刑判決により失職しますが、のちに衆議院議員に返り咲いています。
汚職事件でよく聞く「談合」とは?
ここからは、汚職事件でよく聞く「談合」についてご説明します。
談合とは公共工事において、業者同士があらかじめ話し合って協定を結ぶことです。
その内容は本来競争する業者同士であるものの、高い価格での落札、持ち回りでの落札により業界の利益を不正に分け合う行為です。
そのような談合が起こる背景には、入札制度の特徴があります。
入札制度には、どの建設業者でも参加できる「一般競争入札」と自治体があらかじめ決めた業者を複数指名して行う「指名競争入札」があります。
ただし、一般競争入札は不適格な業者も参加する恐れがあるため、多くの場合で指名競争入札が行われます。
とはいえ、指名競争入札は指定される業者の固定化により、自治体の担当者や首長などと癒着を生みやすくなります。
談合がしやすいのも指名競争入札のデメリットです。
談合などに対する法律や制度
談合に関しては、「入札談合等行為防止法」が2003年より施行されています。
この法律では、公務員が入札談合に関与した場合に公正取引委員会が改善を求めることができます。
さらに、2005年には独占禁止法が改正されて、公正取引委員会が家宅捜索、書類の差し押さえなどができるようになりました。
これにより全国各地の地方検察庁が談合に関する調査ができるようになっています。
また、企業向けには「課徴金減免制度」があります。
課徴金減免制度は、事業者自ら関与した入札談合やカルテルについて、違反内容を自主報告すると課徴金が免除されます。
ただし、公正取引委員会の調査開始日前に最初に申請した場合は免除となり、2番目以降の申告は減額率が下がっていきます。
なお、談合は談合罪や独占禁止法の刑事責任が問われるほか、課徴金が課せられる可能性があります。
まとめ
この記事では、1993年から1994年にかけて起こったゼネコン汚職事件を解説しました。ゼネコン汚職事件は、多数の逮捕者がでた事件であり、逮捕者のほとんどが有罪判決を受けています。
談合はさまざまなリスクがあるため、回避すべきことです。そして、汚職事件を起こさずに健全な業務受注を行いましょう。