横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
長スパンの大型構造物の基礎鉄筋工事では、鉄筋部材を適切に1つにつなげることが必要になります。
複数の鉄筋部材を1つにつなげる(接合する)一般的な方法はガス圧接ですが、エンクローズ溶接を採用する場合もあります。
どのような場合にガス圧接ではなくエンクローズ溶接を採用するのでしょうか?
この記事ではエンクローズ溶接の基本知識とガス圧接との違いについて解説していきます。
目次
エンクローズ溶接とは?
エンクローズ溶接とは、鉄筋の突合せ溶接のことです。
専用治具にて接合部を囲い込み、大気をほぼ完全に遮蔽して溶接を行うことができます。
鉄筋継手の種類 | 【公式】一般社団法人エンクローズ溶接協会
エンクローズ溶接とはどのような溶接方法なのか特徴を確認しましょう。
エンクローズ溶接では鉄筋が引っ張られない
一般的に鉄筋を接合する際にはガス圧接が用いられます。
ガス圧接の場合、鉄筋を圧着させるために鉄筋が1d(鉄筋径)分引っ張られます。
なので、鉄筋業者は圧接で鉄筋が引っ張られる分を見越して適切な長さの鉄筋を使用しなければなりません。
例えば、1-4間で鉄筋材料を拾い出しをする場合を考えてみましょう。
この場合、鉄筋材料は圧接の引っ張りを考慮して以下のように計算されます。
1 2 3 4 5 |
(9150-305+1000)+9150+ (9150-305+1000)+25+25+25=28915mmm (1000はD25*40d) 中間材9000mmを2本使うとすれば、 28915mm-9000*2=10915mm 6000mm(追い出し筋)と4915mm(追い終い筋)で圧接の位置OK?→OK |
しかし、エンクローズ溶接の場合は鉄筋が引っ張られることはありません。
その為、引張分の鉄筋を考慮せずに鉄筋工事を行うことができます。
ガス圧接の場合の鉄筋の縮み代は1d
継手位置を500mmずらす必要がない
ガス圧接の場合、圧接の位置を図のように500mmずらす必要があります。
しかし、エンクローズ溶接の場合は、必要な強度を確保できるためずらす必要がありません。
単価はガス圧接よりも高い
エンクローズ溶接の場合、ガス圧接よりも単価が高くなります。
鉄筋が引っ張られない
継手位置をずらす必要がない
単価はガス圧接よりも高い
ガス圧接との違い どんな時にエンクロにするのか?
ではどのような場合にガス圧接ではなくエンクローズ溶接にするのでしょうか?
工区間の梁の主筋を溶接したいときに採用する
上記で説明した通り、エンクローズ溶接ではガス圧接と違って鉄筋が引っ張られないことが一番大きな特徴になります。
大型の工事現場ではクレーン等の揚重機の使用半径や大型車の搬入経路を確保するために工区分けが行われます。
エンクローズ溶接を採用するのは、以下の図のように工区間でコンクリート打設の工程がずれるときです。
コンクリートとコンクリートの間の梁の主筋はまだ接合されていません。
この場合にガス圧接を採用してしまうと鉄筋が引っ張られるためコンクリートに亀裂が入ってしまう場合があるため、ガス圧接ではなくエンクローズ溶接を採用します。
鉄筋を引っ張られたくない場合にエンクローズ溶接を採用する
まとめ
この記事ではエンクローズ溶接の基本知識とガス圧接との違いについて説明しました。
ガス圧接ではなくエンクローズ溶接を採用すると鉄筋を引っ張らずに接合することができるので、コンクリート間の鉄筋の接合を適切に行うことができます。