横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
鉄筋工事ではいろいろな種類の加工部材が複雑に組み立てられます。
熟練者は鉄筋工事の組立過程に適切な段取り筋を加えることで、見た目も非常に綺麗に組み立てることができます。
見た目が綺麗というのは、高さや幅が一律に揃っていて、高さに凹凸がないことを指します。
地中梁の施工を綺麗に実施する為、基礎エースや主筋のウマ等、たくさんの段取り筋が活用されます。
この記事で紹介するのは、梁と柱の連結部分に設ける「柱受け」という段取り筋についてです。
目次
地中大梁の上下関係について
地中梁の施工の手順をまず確認しましょう。
構造物には図面上、X方向とY方向が存在しており、地中梁の施工はまずどちらか一方の方向に主筋を配置していきます。
例えばY方向の梁の主筋を先に設置し、そのあとにX方向の主筋をY方向の主筋の上側に設置します。
どちらの方向の梁を先に施工するかどうかで、主筋の上下関係が明確に変化します。
その為、鉄筋工事の施工業者はゼネコンに対して「どちらが先方向なのか?」という質疑を良く行います。
柱部分は鉄筋が集中し、自重分沈んでしまう
鉄骨造基礎の柱の部分は、X方向とY方向の鉄筋が交差します。
特に先方向の主筋は後方向の主筋の自重によって高さが変化してしまうということが良く発生します。
柱部分の主筋の高さが変化すると、梁中央部の梁の主筋の高さと差が生じてしまい、全体的に鉄筋が波打つように歪んでしまう現象が発生します。
梁の中央部の主筋は基礎エースなどで適切な高さを確保できている一方で、柱部付近の梁の主筋が下がっているので見た目も綺麗ではなく、検査で注意されることもあります。
梁の主筋の鉄筋が下がると、柱のフープ筋のピッチにも影響が出るので良いことではありません。
柱受けの段取り筋について
地中梁の主筋の先方向、後方向が理解できたところで、柱受けについて説明していきます。
柱受けの役割は鉄筋の自重による沈下の防止
柱受けの段取り筋の役割は、柱部の鉄筋の沈下の防止です。
写真では赤線のようにベースから直立するコの字の鉄筋が梁の根元に設置されています。
地中大梁の先方向に柱受けを設置する
前述の通り、先方向の地中梁の主筋は後方向の主筋の下側に位置することになり、これが沈下の原因になります。
沈下を防ぐためには、先方向の梁の根元部分に柱受けを設置します。
柱受けの寸法
柱受けの寸法は以下の通りです。
形状は「コの字」が一般的です。
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・幅 梁の幅-100+10 ・高さ ベース下端から梁の天端までの高さ-かぶり50mm-鉄筋径*2 図の例(主筋がD29)であれば、1550+960-50-29*2≒2400mm(さらに10mm引いて2390mmとすることもある) 梁の主筋がD29の場合はD16で作成 梁の主筋がD22以下の場合はD13で作成 |
まとめ
この記事では梁の主筋の段取り筋「柱受け」について解説しました。
施工管理業務に従事している方は、構造図に記載されていない鉄筋があると疑問に思うかもしれません。
熟練者はいろいろな段取り筋を使用して綺麗に配筋作業を行います。「柱受け」などの段取り筋に注目すると熟練者の工夫を読み解くことができます。