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建築士にはどうすればなれる?受験資格、実務経験の範囲とは

『建築士』の主な仕事は、建物の設計と工事監理です。

建物のプロフェッショナルとして広く活躍するには、どのようなプロセスが必要なのでしょうか?

建築士の将来性から一級・二級建築士の受験資格まで、建築士を目指す人に役立つ知識を解説します。

街づくりに欠かせない「建築士」

建築士は、街づくりに欠かせない職業です。

近年は建築士の高齢化が進み、業界では若手の需要が拡大しています。まずは建築士の仕事内容や求められる資質について、理解を深めましょう。

建物の設計や工事監理を行う人を指す


建築士は建築士法に定められた国家資格で、『一級級建築士』『二級建築士』『木造建築士』に区分されます。

類似の職業に『建築家』や『設計士』が挙げられますが、建築士は国家資格に合格し、資格を取得した人だけが名乗れる称号です。

建築士の仕事は大きく、以下の二つに分けられます。

・設計図の作成

・工事監理

家やビルを建てるとき、建築会社は『設計図』に基づいて工事を行います。

建築士は依頼主の要望を聞き入れつつ、建築基準法に基づいた設計図を完成させなければなりません。

外観・内装のデザインだけでなく、法律・防災・構造などに関する高い専門知識が求められます。

また、設計図書と照合し、工事が問題なく実施されているかどうかを確認する『工事監理』も建築士の重要な業務の一つです。

若手の建築士の価値は高い


建築業界では建築士の高齢化が進んでいます。

特に一級建築士の半数以上は50~60代で、20~30代の建築士はごくわずかです。

10年後、20年後には多くの一級建築士がリタイアするため、若手建築士の稀少価値は一層高くなるでしょう。

近年は老朽化による建物の解体が、全国的に増加しています。

建築士の資格を持っていれば、管理技術者として解体工事にも携われるため、将来性は高いでしょう。

2021年11月の調査値では、建築・土木・測量技術者の有効求人倍率が5.57倍にとどまりました。

建築業界全体を見ても、需要に対する供給が足りていない現状がうかがえます。

建築士の需要は今後ますます増えていくと予想されますが、試験に合格したからといって、すぐにプロとして活躍できるわけではありません。

実務経験を積み、『免許登録』をしてはじめて建築士の入り口に立つことができます。

参考:国土交通省『建築行政に係る最近の動向』)
参考:一般職業紹介状況(職業安定業務統計) / 一般職業紹介状況 / ~令和3年11月(調査:厚生労働省))

創造力や継続力が求められる


建築士は将来性が高い職業の一つですが、建築士として活躍できるかどうかは本人の素質や努力によって変わります。

建築士は、依頼主の希望に添った建物をデザインすることが仕事なので、『創造力』や『感性』が重要なのは言うまでもありません。

普段から多くの美術品や建築物に触れる機会を持つことで、センスやクリエイティビティが磨き上げられていきます。

実務においては、『忍耐力』や『継続力』が求められます。実際、数カ月や数年単位で動くプロジェクトもあり、結果を急ぐ人には不向きです。

そもそも、建築士の国家資格は難易度が高く、日々の地道な努力と積み重ねがなければ合格は難しいといえます。

資格を取得した後も、知識や技能を維持するために学び続けなければなりません。

センスや感性だけでなく、目標やゴールに向かって着実に物事を進められるかどうかが問われるでしょう。

建築士になるメリットと魅力


建築業界における建築士の需要は右肩上がりで、就職や転職に困らないのが大きな魅力です。

『自分のイメージが形になること』や『依頼主に感謝されること』に喜びを見出す建築士も多く、将来性とやりがいの両方を満たせる職業といえるでしょう。

建築業界で就職・転職しやすくなる

建築士の資格保有者は、建築業界での就職・転職に有利になるのがメリットです。

建築会社の多くは、他社に依頼せずに設計から施工までをワンストップで済ませたいと考えています。

自社に建築士がいれば、施工だけでなく設計も自社で実現するため、建築士を1人でも多く確保したいのが本音です。

近年は、建築士の高齢化が進んでおり、リタイアで自社の建築士が0人になるケースも珍しくありません。

実務経験のある若手建築士は、建築会社・建設会社では引く手あまたといえるでしょう。

そのほか、『設計事務所』『住宅関連設備メーカー』『ハウスメーカー』でも、資格保有者は歓迎される傾向があります。

高年収を目指すことも可能になる


建築士の資格は、建物の構造や規模・用途によって『一級建築士』『二級建築士』『木造建築士』に分かれます。

中でも一級建築士は最も難易度が高く、誰もが簡単に取れる資格ではありません。

建築業界では、建築のプロとして一目置かれる存在となり、高収入・好待遇が期待できます。

建築・建設会社の中には、一級建築士の資格を『昇給・昇進の条件』としているところもあるほどです。会社やスキルによっては、年収1000万円以上も不可能ではないでしょう。

建築・建設会社で十分な実績を積んだ後は、自分で設計事務所(建築士事務所)を立ち上げる道もあります。

多くの人々の役に立てる


建築士の魅力は、高収入・好待遇だけではありません。自分の設計した建物が多くの人々に利用され、評価されたときの喜びはひとしおです。

特に、一級建築士になると、劇場や病院・学校といった規模の大きな建築物も手掛けることができます。

完成後は何十年もその場所に残り、地域の人々に末永く愛されるでしょう。建築を通して街づくりに貢献ができるのは、建築士にしか持てない特権です。

家を設計して依頼主に引き渡すときは、人々に感謝され、その笑顔に触れることができます。多くの建築士は、依頼主の喜ぶ顔を見たときに「この仕事をやってきてよかった」と感じるようです。

建築士の職務内容とは


建築士の主な仕事は設計や工事監理です。

仕事に就いてから負う責任や業務内容は、具体的に何なのでしょうか?

建築業界でAIの活用が進んだ場合の仕事の変化についても解説します。

建物に責任を持つこととなる


『建築士法』の第一章・第二条には、建築士の職務として次のような記載があります。

”業務に関する法令及び実務に精通して、建築物の質の向上に寄与するように、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない”

この規定は、『建築士の責任の明確化』と呼ばれ、2006年に建築士法が改正されたときに条文化されたものです。

当時、耐震性に問題のある建築物が次々に建てられる『耐震偽装』が社会問題化し、建築物の質を誰がどう担保するかが争点となりました。

耐震偽装事件の再発を防止するため、政府は『建築士の受験資格の見直し』や『講習の受講』『ピアチェック(構造計算適合性判定制度)』などを新たに義務付けたのです。

建築士には、設計と工事監理を独占的に行う権利が与えられています。資格者として、建物に責任を持つことを忘れてはいけません。

参考:建築士法 第2条の2 | e-Gov法令検索

図面作成や打ち合わせを行う


建築士は建物を建てるとき、最初に依頼主と打合せをして『どんな建物を建てたいか』『何を重視するか』『予算はいくらか』をじっくりとヒアリングします。

とはいえ、いくら相手が要望しても、建築基準法に違反する建物は設計できません。依頼主を納得させられる『提案力』も必要となってくるでしょう。

建物のイメージが決まった後は、CADソフトや模型などを使って、建築物の構造を設計していきます。

外観や内装の細かな部分を設計図に落とし込んだ後は、依頼主と再び打ち合わせをして実際の施工に入ります。

建設にあたって、建築基準法に基づく『確認申請』を行うのも建築士の仕事です。役所から確認済証が交付されなければ、工事を開始することはできません。

工事開始後は、『現場監督との打ち合わせ』『職人への指示出し』『進捗状況のチェック』といった工事監理業務がメインとなります。

AIの活用で仕事が変わる?


今後は、さまざまな分野にAI(人工知能)が導入され、私たちの暮らしや仕事が大きく変化することが予想されます。

AIの導入で仕事がなくなるのではないかと考える人もいますが、人とAIの分業スタイルが当たり前になれば、建築士の負担が大きく軽減される可能性があります。

AIはルール化や情報収集・分析といった論理的な作業が得意ですが、人の感情をくみ取ったり創造力を発揮したりすることは苦手です。

AIを活用すると、データ整理・構造計算・解析・見積もり計算などはAIに任せられます。

建築士は顧客との打ち合わせやクリエイティブな作業に、より多くの時間を割けるようになるでしょう。

設計図を作るときは、AIの情報処理能力と建築士の創造力がうまく融合され、これまでにない設計図が完成するかもしれません。

一級建築士と二級建築士の違い


建築士を目指す人が押さえておきたいのは、主に『一級建築士』と『二級建築士』の資格です。

それぞれどのような建物を扱えるのかを知って、最終的なゴールを決めましょう。

一級建築士はどんな建物も扱える


二級建築士は扱える建物の規模や構造が限定的なのに対し、一級建築士は、あらゆる建築物の設計・工事監理に携わることが可能です。

病院や学校・スタジアム・高層ビルなどの大規模な建物を設計したい場合は、一級建築士の資格は欠かせないでしょう。

建築士の試験は『学科試験』と『設計製図の試験』の2本立てで、学科試験に合格しなければ設計製図の試験には進めません。

建築技術教育普及センターのデータによると、2021年度の合格率は学科が15.2%、設計作図が35.9%です。最終的な合格者(総合)はわずか9.9%で、限られた人しか通過できない狭き門であることがうかがえます。

参考:試験結果 建築技術教育普及センターホームページ

二級建築士は小規模な建物を扱える


二級建築士は、携われる建物の規模や構造・用途などに制限があります。

設計や工事監理ができるのは、高さ13m以下かつ軒高9m以下の『戸建て住宅程度』と考えましょう。

学校や病院・公会堂・映画館・デパートなど、大衆が利用する建物は取り扱えません。

2021年度の合格率は、学科が41.9%・製図が48.6%、総合で23.6%です。一級建築士を目指すための最初のステップとして受験をする人が多い傾向にあります。

木造の住宅や歴史的建築物をメインに扱いたい人は、『木造建築士』の資格も視野に入れましょう。

対応する建物の規模だけで見れば、二級を取得した方が仕事の範囲は広がりますが、木造建築の本質を理解するのであれば、木造建築士の資格は欠かせません。

一級建築士の資格に木造建築士の知識があれば、木造建築においてさらに有利です。

木造建築士は2021年度の合格率が学科で49.9%、製図は67.7%、総合33.0%となっています。

参考:試験結果 建築技術教育普及センターホームページ(二級建築士)
参考:試験結果 建築技術教育普及センターホームページ(木造建築士)

建築士になるには


国家資格の試験には『受験条件』があります。

民間資格と違い、受験料を支払えば誰でも自由に受験ができるわけではありません。

2020年に実務経験が『受験要件』から『免許登録要件』に変わった点にも注目して、一級・二級それぞれの条件を確認しましょう。

一級建築士の場合


建築士法第14条で、一級の受験資格・学歴は以下のように定められています。

・大学・短期大学・高等専門学校・専修学校などで『指定科目』を修めて卒業した者
・二級建築士
・建築設備士
・その他国土交通大臣が特に認める者(外国大学を卒業した者など)

一級建築士への近道は、大学や工業系の専門学校などで『建築系の学科』を卒業することです。

2009度以降に卒業した学生は、『国土交通大臣が指定する科目の単位数』に応じて試験資格が与えられます。

学校の種類によって必要単位数が変わるため、早い段階で確認しておきましょう。

社会人になってから一級建築士を目指すには、二級建築士か建築設備士の資格を取る必要があります。

また、2020年には建築士試験の見直しが行われ、実務経験が『受験要件』から『免許登録要件』に変更されました。

これまで一級建築士の試験を受けるまでに2年以上の実務経験が必要でしたが、新たな制度では、試験合格後に実務経験を積めば、建築士として免許登録が可能です。

二級建築士の場合


建築士法第15条では、二級建築士の受験資格及び実務経験要件は以下のように定められています。

・大学・短期大学・高等専門学校・高等学校・専修学校・職業訓練校などで『指定科目』を修めて卒業した者(試験までに必要な実務経験:最短0年)
・建築設備士:(実務経験:0年)
・その他都道府県知事が特に認める者(外国大学を卒業した者など):所定の年数以上
・建築に関する学歴なし:(実務経験:7年以上)

一級建築士と同じく、2020年からは『免許登録までに実務経験を積めばよい』というルールに変更されました。

学校で建築に関する学科を選択した学生は、『二級建築士の受験・合格』→『実務経験』→『免許登録』という流れになります。

建築に関わる学科を出ていない場合、必要な実務年数が長くなります。建築士を目指すことを決めたら、早めに受験の準備を始めた方がよいでしょう。

「実務経験」の範囲が改正で拡大


2020年の改正では、建築士の免許登録要件として認められる『実務経験の範囲』が広くなりました。

建築士には建築物の専門家として、総合的な役割やスキルが求められているといえるでしょう。

例えば、『建築物の設計に関する業務』に関しては、以下の二つが加わっています。

・建築士事務所で行う標準的な設計業務(トレース作業は除く)
・基本計画策定に関連する業務のうち、建築士事務所で行う建築物の設計に関する図書作成業務(設計与条件整理・事業計画検討など)

また、実務経験の項目には『建築物に関する調査又は評価に関する実務』が新たに追加されています。

詳しくは、建築技術教育普及センターのホームページか、建築士試験のパンフレット(国土交通省)で確認しましょう。
参考:建築士試験のパンフレット|国土交通省

まとめ


少子高齢化が進む日本では、建築士の人材が減っている傾向にあります。

今後、建築業界では一級建築士を持つ若手の需要が高まっていくでしょう。

建物のプロフェッショナルとして活躍するには、建築士の試験に合格し、実務経験を積む必要があります。

特に一級建築士の合格率は低く、誰もが簡単に免許登録をできるわけではありません。

ただ、2020年の制度改正では受験要件の見直しが行われ、試験を受けるハードルが大きく下がりました。

将来の選択肢の一つとして、二級建築士試験からチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

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