建設業の会計特有の勘定科目について具体例も踏まえて解説

建設業では、一般的な会計処理と異なる会計処理が必要とされます。建設業特有の勘定科目も存在します。

この記事では、建設業の会計処理と勘定科目について具体例を踏まえて解説します。特殊な建設業の会計について理解を深めましょう。

↓↓一般的な会計処理についてはこちらの記事で解説しています↓↓
現金主義、発生主義、現実主義の違いは?損益計上方法について解説 | てつまぐ (tetsumag.com)

建設業の会計処理が特殊な理由

建設業で通常とは異なる特殊な会計処理が行われるのはなぜなのでしょうか。

それは、長期間にわたる工事を適切に損益計上するためです。戸建ての一軒家を建てるだけであれば数か月で済むことも多いですが、土地を切り開くような大規模な工事は数年単位でかかります。

1年ごとに行う会計処理において、数年かかる工事を通常の会計方法で適切に損益計上するのは難しいのです。そこで、建設業では損益計上の基準となる2つの考え方があります。

  • 工事完成基準
  • 工事進行基準

この2つの会計方法に基づき、建設業特有の勘定科目が存在しています。

↓↓工事完成基準と工事進行基準についてはこちらの記事で解説しています↓↓
【建設業の会計】工事完成基準と工事進捗基準の違いと特徴を解説 | てつまぐ (tetsumag.com)

建設業特有の勘定科目

建設業特有の勘定科目について、一般会計との比較と概要をまとめます。

一般会計の科目 建設業での会計科目 意味
売上高 完成工事高 工事完了で得られる収益
原価 完成工事原価 材料費、労務費、外注費、経費
売上総利益 完成工事総利益 売上から原価を引いた利益
売掛金 完成工事未収入金 引渡し済みであるが、未回収の金額
仕掛品 未成工事支出金 引渡しまでに発生した工事原価
買掛金 工事未払金 未払いの工事費
前受金 未成工事受入金 引渡し前に顧客から受領した金額

完成工事原価については、決算時に完成工事原価報告書に集計します。完成工事原価報告書では、材料費、労務費、外注費、経費のそれぞれについて内訳が記述されます。

一般会計と建設業の決算書の比較

建設業特有の勘定科目が決算書の中でどのように記述されるか具体的に見ていきます。

貸借対照表

一般的な会計の貸借対照表は以下のような構成になっています。

【資産の部】

(流動資産)
現金預金
受取手形
売掛金
仕掛品

(固定資産)
建物
土地
車両運搬具

(繰延資産)
開業費

【負債の部】

(流動負債)
支払手形
買掛金
前受金
短期借入金

(固定負債)
長期借入金

【純資産の部】
資本金
資本剰余金
利益剰余金

これに対して、建設業の場合は一部が特有の科目に変化します。

【資産の部】

(流動資産)
現金預金
受取手形
完成工事未収入金
未完成工事支出金

(固定資産)
建物
土地
車両運搬具

(繰延資産)
開業費

【負債の部】

(流動負債)
支払手形
工事未払金
未成工事受入金
短期借入金

(固定負債)
長期借入金

【純資産の部】
資本金
資本剰余金
利益剰余金

流動資産の売掛金と仕掛品が、工事完成未収入金と未成工事支出金に代わります。また、買掛金と前受金が工事未払金と未成工事受入金になります。

損益計算書

一般的な会計の損益計算書の大枠は以下のような構成になっています。

売上高
売上原価
売上総利益
販売費及び一般管理費
営業利益
経常利益
当期純利益

これに対して、建設業の場合は以下になります。

完成工事高
完成工事原価
完成工事総利益
販売費及び一般管理費
営業利益
経常利益
当期純利益

基本的には「売上」が「完成工事」に変化しただけです。

建設業の会計処理の仕訳例

実際に建設業特有の勘定科目がどのように仕訳されるのか具体的な例を基に見ていきます。

工事完成基準の仕訳例

取引先と以下の工事請負契約を締結したとします。

  • 1億円(税込1億1,000万円)のビルの建設の請負契約
  • 頭金として1,000万円、中間金として3,000万円、引渡しの2か月後、7,000万円を支払う

頭金受領時

借方 貸方
現預金 10,000,000 未完成工事受入金 10,000,000

中間金受領時

借方 貸方
現預金 30,000,000 未完成工事受入金 30,000,000

工事完成時

借方 貸方
完成工事未収入金 70,000,000 完成工事高 100,000,000
未成工事受入金 40,000,000 仮受消費税 10,000,000

未成工事受入金を受領した段階では消費税は認識せず、売上(完成工事)のタイミングで消費税を認識します。一般の前受金と同様で、現預金を受け入れた段階で消費税を認識する必要はありません。

工事進行基準の仕訳例

取引先と以下の工事請負契約を締結したとします。

  • 1億円(税込1億1,000万円)のビルの建設の請負契約
  • 頭金として1,000万円、中間金として3,000万円、引渡しの2か月後、7,000万円を支払う
  • 工期が決算をまたぎ、決算時の工事進捗率は60%

頭金受領時

借方 貸方
現預金 10,000,000 未完成工事受入金 10,000,000

中間金受領時(決算前)

借方 貸方
現預金 30,000,000 未完成工事受入金 30,000,000

決算時

借方 貸方
完成工事未収入金 22,000,000 完成工事高 60,000,000
未成工事受入金 40,000,000 仮受消費税 6,000,000

完成工事高は、請負価格1億円の進捗度60%なので、6,000万円となります。

工事完成時

借方 貸方
完成工事未収入金 44,000,000 完成工事高 40,000,000
仮受消費税 4,000,000

上記2期分の決算を通して、合計1億円の売上(完成工事高)が計上されます。

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