横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
働き方改革と言われ、残業時間を無くしましょうという運動が始まり、各業種では残業時間の削減や土曜日、日曜日の完全休業が増えてきました。
しかし、建築業界ではまだまだ残業や休日出勤が多いのが実情です。
建築業界では36協定を雇用元、従業員との間で契約をする事で勤務外残業の時間を延長する事が可能になっています。
しかしながら、建設業の働き方改革が進まなければ、建設業就労者は今後益々減少してしまうでしょう。
では、今後の建設業界はどのようにあるべきなのか?
今回の記事では、現行の労働時間の規制と、建設業界の残業を減らすアイデアに関して見ていきましょう。
目次
土木建築の労働時間上限規制とは
残業量による死亡事故が日に日に多くなってきている中、トップともいえるものは土木建築業界になります。
実際に某オリンピック会場建築において、20代と非常に若い年代の作業員が業務時間の多さに精神的障害を持ってしまい自殺をしてしまったという事もあります。
そこで、労基署はそういった事が起きないよう気を付けるべく労働基準法の改正が行われました。
土木建築の労働基準法の改正は2024年から
元々労働基準法の改正は土木建築業界については改正をするこという事に対して5年後に行う事が決定しています。
労働時間の上限規制に一定期間の猶予が与えられたのは医師、自転車運転業務、建設業などの業種です。
中小企業の場合には1年間の猶予でしたが、建設業に対しては5年間の猶予が与えられ、2024年4月から施行されることとなりました。
建設業でこれまで時間外労働を多く要請してきた企業は、2024年4月以降は、労働時間の上限規制を遵守する必要があります。
土木建築業界の労働時間は全職種の中で最も労務時間が長い
ではどうして土木建築業界の労働基準法の改正は5年と他と比べ長いのでしょうか?
それは全職種の中でも建築業が労務時間が長い事からあります。
建築業界では平均の残業時間が月51時間程となっており、残業時間が100時間を超える事も珍しくありません。
国土交通省による2016年の調べによると、産業では1年の中222日が出勤の平均ですが、建設業の平均は251日と多い出勤の平均となりました。
したがって、改正法に対応する状態までの用意にも時間がかかる事が予想され、こうして改正までに5年という猶予を設定されました。
実際にゼネコンは複数の県に派遣している事も少なくないので、そういった所から全体への引継ぎに時間がかかっていくようです。
労働時間上限規制へ改正される事で起こりうる土木建築
こうして2024年に改正が決定した労働基準法による労働時間上限規制ですが、これによる土木建築業界への問題は少なくありません。
建築職は工期を守らなければいけない職業です。
ですが、問題が発生する等といった事からどうしても残業をしなければいけないといった事が日常茶飯事です。
しかし労働時間上限規制によって時間に制限が出来てしまう事で普段できた事が出来なくなるケースが増え、次第に労働時間上限規制を超えてしまう事が発生する可能性も起きてしまいます。
もし破ってしまった場合、違反してしまった場合どうなってしまうのでしょうか?
労働基準法改正を破ってしまった場合の罰則とは
労働時間上限を超える業務をすると、労働基準法に違反となってしまいます。
そういった事にならないよう時間を守る会社もあれば、オーバーした時間を隠す会社も存在します、特に後者であれば隠蔽になってしまうので更なる罪にも問われる事になります。
労働基準法改正を破ってしまった場合、6カ月以下の懲役、もしくは30万以下の罰金になります。
災害、近隣への影響が起きた問題の場合において、労働時間の規制は例外
災害が起きてしまった場合や、建築現場での業務中に近隣への影響を与えてしまうほどの問題が起きてしまった場合はどうなるのでしょうか?
上記のような災害、近隣への影響が起きた問題の場合において、労働時間の規制は例外として外れます。
ですが、あくまでも例外はそういった災害等の場合でしかないので、社内での工期等による事態では例外はありません。
建設業の残業を減らすアイデア
建設業においては、2024年から労働基準法の改正が実施され、残業を実施している事業者は厳しく罰せられることになります。
建設業従事者は、この法改正に備えて働き方改革を実施することが必須になります。
では、どのように働き方改革を実施すれば良いのでしょうか?
ノウハウを蓄積/データ化する
建設業に限った話ではありませんが、仕事量に対する作業時間は、作業者の経験や体験量に比例します。
特に、建設業の場合は熟練作業員ほど作業時間は短くなる傾向が顕著に現れます。
つまり、残業を減らすには、全員が熟練作業員と同じ知識や解決プロセス思考を持ち合わせれば良いわけです。
そのためには、熟練作業員のノウハウをデータ化し、蓄積するというプロセスが重要です。
単純作業を洗い出して自動化する
単純作業をロボットやAIに任せてしまうというのも働き方改革の一つの案になるのではないでしょうか。
建設業の場合は、工事のマネジメントに建設業に関する専門知識や経験は必要不可欠です。
建設業におけるすべての作業をロボットやAIに任せることが絶対に不可能が、技能のレベルを必要としない作業が必ずあるはずです。
上記の例は、「本数を数える」という単純作業を自動化した例になります。
誰がやっても同じ結果になりやすい作業というのはロボットやAIの得意分野です。
このようなシステムを自社で開発できる体制を整えることができれば、働き方改革は大きく前進するのではないでしょうか。
まとめ
熟練建設業従事者は年々減少傾向にあり、その技能の承継が働き方改革のひとつの課題になっていると考えます。
労働基準法の改正によって、表面上は残業時間や勤務時間は減るかもしれませんが、技能レベルが低下してしまっては本末転倒です。
建設業における残業を減らすアイデアとして、ノウハウを蓄積/データ化することや、単純作業を洗い出して自動化することをご紹介しました。
ぜひ、このような事例から自社でも同じようなことができないか検討してみてはいかがでしょうか。