トンネルの設計について

トンネルはどうやって作られているのでしょうか?

トンネル構造の力学的安定性は、トンネル周辺の地山がトンネルを支えるという支保機能で確保されています。

H鋼材などで作成する支保部材は、地山の支保機能を最大限に発揮させるための補助部材です。

構造の安定性チェックは計算によってはできません。

山岳トンネルの設計は構造計算や部材配置の検討というよりは、施工方法の経験的な検討になります。

その為、ゼネコン勤務している方で、トンネルを施工してきた人は、生涯ずっとトンネルの施工担当になることが多いです。

トンネル工事では、地山のトラブルはつきもので、地山の安定確保と掘削の進行とはトレードオフの関係にあります。

いかに安全かつ合理的に掘削を進めるかについては、施工者の経験・裁量に委ねられる部分が現在でもとても大きいです。

この記事では、トンネルの一般的な施工方法を学んでいきます。

トンネルの分類

まずはどのような種類のトンネルがあるのか見ていきましょう。

トンネルの分類には2つの分類方法があります。

場所による分類方法と施工方法による分類方法がある

一般的には場所による分類方法の方が分かりやすいですが、施工方法による分類方法もあることを抑えておきましょう。

場所による分類方法

・山岳トンネル…山岳部のトンネル
・都市トンネル…都市部でのトンネル
・水底トンネル…海や河川の下を通るトンネル

施工方法による分類方法

・山岳工法
・シールド工法
・開削工法
・沈埋工法

NATMは山岳トンネルの標準工法

山岳工法は、在来工法とNATMに分けられます。

現在では、NATMが標準的な工法になっています。

参照:福岡市地下鉄「ナトム工法について」

NATMによる一般的なトンネル掘削フローを見てみましょう。

NATMの一般的な掘削サイクルは、削孔→装薬→発破→ずり出し→鋼製支保工建込→吹付けコンクリート打設→ロックボルト打設となります。

1.削孔
爆薬を入れるために孔を掘る作業です。
2.装薬
削孔した孔に爆薬を入れる作業です。
3.発破
爆薬に点火して爆破させる作業です。
4.ずり出し
発破により砕かれた岩を切羽から運び出す作業です。
5.鋼製支保工建込
掘削後にトンネルの壁面が崩れるのを防ぐ為、アーチ状に加工したH形鋼を設置する作業です。
6.吹付けコンクリート打設
掘削したトンネルの壁面に厚さ5~20cm程度のコンクリートを吹付ける作業です。
7.ロックボルト(鉄筋)打設
壁面にロックボルト(鉄筋)を挿入する作業です。

在来工法は、掘削によって生じるトンネル周辺の緩み荷重をアーチ支保工と矢板で支持し、厚肉の覆工コンクリートで巻き立てることによってトンネルの安定を確保します。

親杭横矢板工法のトンネルverですね。

矢板工法では地山の緩みの拡大が避けられないこと、偏圧に対して弱いこと、裏込め注入をしても地山との間の空隙を完全に充填することが困難であること等の欠点があります。

トンネルの設計方法

トンネルの大まかな分類と掘削フローが分かったところで、具体的なトンネルの設計方法について見ていきましょう。

荷重設定が困難なため、特殊な設計方法を採用している

一般的な構造物の設計方法において、まず初めに行うことは荷重の評価です。

構造物でなくても、型枠等の支保工の設計方法に関しても同様です。

最初に行うことは、設計荷重の設定であり、単純梁モデル化→応力・変位照査を行っていくのが基本的な設計フローになります。

基本的な設計フロー

①設計荷重の算定
②単純モデル化
③応力・変位の照査

しかしながら、トンネルの設計はこの基本的な設計フローとは大きく異なります。

トンネルは特殊な設計条件の場合を除き、トンネルに作用する荷重を想定することが困難なため、トンネルの設計では、掘削(応力解放)に伴う地山の変形を許容し、変形が収束した段階を地山とトンネルがともに安定した状態と評価します。

つまり、山岳トンネルでは、過去の設計や施工実績および経験を反映した設計手法を用いることによって、トンネルに作用する荷重等の設計条件を包括的に加味するとの考え方を採用しています。

支保工の設計=地山の状況評価

上記の通り、トンネルの設計では荷重を評価することができないので、経験則に基づいた施工に頼るしかありません。

その為、ゼネコン各社はトンネルを施工した際の過去の記録を保存しており、地山がどのような場合にどの程度の支保工を設計すればよいのか経験的に判断ができます。

既往の施工実績のうち、地山条件や断面形状等の設計条件が類似していると判断される場合には、トンネルの用途や諸元が異なっても、それらの事例を参考として設計がなされることがあるということです。

図のように、地山の良し悪しに応じて、ロックボルトの施工間隔や覆工コンクリートの厚さが変化しているのが確認できます。

まとめ

トンネルの設計では、荷重の評価が困難である為、経験的な施工に大きく依存しています。

その為、地山の評価と観測が非常に重要になります。

型枠支保工の設計と大きく異なっていることを理解しておきましょう。