【ポストコロナ】新型コロナウイルス感染症の影響で建設業界はどう変化するか?

新型コロナウイルスの感染拡大が日本や世界で起こっています。

そして、感染拡大の影響はさまざまな業界に及んでいます。建設業界においても例外ではありません。

この記事では、建設業界における新型コロナウィルス感染症の影響とポストコロナの建設業について見ていきます。

新型コロナウィルス感染症が建設業界に与えた影響

2020年4月7日に一部地域、2020年4月16日に全国を対象とした緊急事態宣言がだされました。

それを受けて、多くの大手ゼネコンは着手中の工事の一時中断に踏み切り、鉄筋業界を含む専門工事業者にも影響が出ました。

鉄筋業界にも影響が出ている

大手ゼネコンの建設工事を支えているのは、鉄筋工事を含む専門工事業者です。

そのため、大手ゼネコンが工事の中断を行うと、鉄筋業者は経営が苦しくなり従業員などの生活も維持できなくなります。

鉄筋業界などの専門工事業者のなかには、何カ月も工事の中断が続くと持ちこたえられない、長期化が怖いといった声もありました。

緊急事態宣言が出された当初は、専門工事業者に対して大手ゼネコンが休業補償を行う動きもありました。

しかし、見通しが立たず、不安に思う専門工事業者も少なからずいたでしょう。

特に日給月給制で働く2次下請け以降の技能労働者を中心として、先行きを危惧する方もいます。専門工事業者において1次下請けの自社社員は休業補償の対象となるものの、2次下請け以降への対応は困難という見方もありました。

また、自社の社員が別の会社に移ってしまうと、現場の再開時に戻ってきてくれないという不安から、自社の社員を休ませて2次下請け以降に稼働中の現場に向かってもらう対処をする鉄筋業者も存在しました。

緊急事態宣言の解除後

緊急事態宣言が解除されると中断していた工事は続々と再開し、国土交通省は工事や業務に対する対応方針を発表します。

緊急事態宣言解除後に国交省が工事や業務への対応方針を発表

国土交通省は緊急事態宣言の解除後に改めて、工事や業務への対応方針を発表しました。

具体的には2020年4月17日付けの通知「施工中の工事等における感染拡大防止策の徹底」や、2020年5月14日版の「建設業における新型コロナウイルス感染予防ガイドライン」などを参考に対応を呼びかけています。

それらの資料から現場用の内容をみると、朝礼時の配列間隔の確保や時間短縮、テレビ通話ツールの導入など、細かな取り組み事例も紹介されています。いわゆる「三密」状態の回避を中心とした行動事例の紹介です。

参考:「施工中の工事等における感染拡大防止策の徹底」(https://www.mlit.go.jp/common/001341807.pdf)
参考:「建設業における新型コロナウイルス感染予防ガイドライン」(https://www.mlit.go.jp/common/001344424.pdf)

なかには緊急事態宣言中も動いていた現場があった

緊急事態宣言を受けて建設工事の中断は相次いだわけですが、なかには工事を継続していた事案もあります。

というのも緊急事態宣言が出されても公共事業について、工事の継続をする方針がありました。

これは国土交通省の方針であり、公共工事は社会維持の観点から継続が求められたものです。

また、景気を下支えするためにも公共工事の早期執行が必要だと判断してのことになります。

たとえば、北海道の建設部や北海道開発局は工事を極力止めない方針に従い、地場のゼネコンは5月の連休明けには本格的な着工を迎える現場もありました。

現場を動かすことで作業員の働く場所を確保する意味もあり、専門工事業者への配慮を行うゼネコンもいたわけです。

建設業界全体が8年ぶりの景気の低水準

工事の中断などにより建設業界の景気は低水準となっています。

帝国データバンクの「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」では、全業種の8割以上の企業が新型コロナウイルス感染症により業績へマイナスの影響が出ていると回答しました。

建設業においても約8割の企業が業績への悪影響と回答しており、厳しい状況が続いています。

建設業も含めて、このような景気の低迷は8年ぶりとのことです。

前述のような公共事業を担当する鉄筋業者であれば大きな影響は考えにくいものの、大手ゼネコンの工事中断をみると先行きに不安を感じる鉄筋業者も多いのではないでしょうか。

参考:「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2020年5月)」(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p200605.pdf)

東京五輪後に景気の低迷が本格化か

2020年に開催が予定されていた東京五輪は延期となったため、建設業界の景気にも影響がでると考えられます。これはオリンピックの関係施設などの建設に関するものです。

東京都や神奈川県など各自治体がオリンピック関係経費として2020年の予算に計上していましたが、延期により2021年度に組み込む必要がでてきました。その財源をどう確保するか、今後の動向には注意が必要です。

また、建設業界への景気的な影響は1~2年後に来るともいわれており、2021年度以降の心配をするゼネコンや専門業者も少なくありません。

持続化給付金などの支援策が継続中

持続化給付金は、2019年以前から事業を継続している方で2020年1月以降に新型コロナウイス感染症の拡大の影響で事業収入が減った場合に支給されます。

前年同月比において、50%以上の減収の場合に最大200万円が支給されます。(個人事業主は最大100万円)申請期間は2021年(令和3年)1月15日までです。鉄筋業者も給付対象となりますので、対象要件を満たすかどうか再確認してみてください。

新規求人数はほかの業界に比べて下げ幅が小さかった

景気の低迷があると、雇用も厳しい状況になることが多いです。しかしながら、鉄筋業界では求人を出している業者もあります。また、観光業や宿泊業で仕事を失った方を積極的に採用する動きもみられます。

公共工事に関係できる鉄筋業者であれば、他業種に比べて新規求人の下げ幅も低いと考えられるのではないでしょうか。

原材料費の高騰

緊急事態宣言によるサプライチェーンの分断は、建設材料原価の高騰の原因になりました。

異形棒鋼価格は2020年初から41%上昇

特に、鋼材関係の異形棒鋼の原価は高騰しており、異形棒鋼価格は2020年初から41%も上昇しています。

東京製鉄HP

この傾向は根強く、2022年は一貫して材料価格の上昇が見込まれています。

ポストコロナについて

建設業界の課題である高齢化・人手不足、技術継承、などに対する解決の大きな糸口として「コンテック/建設テック」が期待され、AI(人工知能)による技術革新が進んでいます。

コロナ禍後には省人化、遠隔化、非対面といった分野でのデジタルシフトが急激に進行すると予測できます。

デジタル施工が主流になる?

具体的には、以下のような内容です。

・過去の各種データ(施工計画、工程、コスト)から最適な施工計画をシミュレーションし、 その結果を用いて、ロボット等により自動施工を行う。

・AIが作成した作業計画を基に、作業員の作業(個人の動き、グループの動き)、機械の動き、などをAR技術を用いて現場へフィードバックする。

・施工過程の見える化による若手技能労働者の生産性向上が推進されていく。

AI/機械学習を学ぶメリットが大きくなる

機械学習はすでに現代のいたるところに活用されており、「AI(人工知能)」とも言われています。

機械学習には、DeepLearning(ディープラーニング)や強化学習など色々な技術も登場してきたことで、より一層注目が集まっています。

今後、建設業界においてもAIを使いこなす必要性が急速に高まってくるかもしれません。

まとめ

新型コロナウイルス感染症により建設業界にも大きな影響が出ています。

特に、原材料価格の高騰は企業の設備投資心理にも大きな影響を与えており、建設事業者の利益を大きく逼迫しています。

ポストコロナを見据えて、デジタル施工を進める必要がありそうです。