横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
建設就業者数は平成9年度のピークでは685万人が就業してましたが、平成28年度では492万人と約28%減少しています。
建設業者数もピーク時の平成11年度から60万業者から47万業者と約22%減少しています。
就業者が少なくなると、技術の継承やインフラ整備や維持管理ができなくなったり、災害時の復旧作業にも支障が出てきます。
この記事では、建設業界の現状の就業状況と今後の建設業界の在り方について見ていきます。
目次
建設業の就業事情について
建設業への就業者では、55歳以上が約34%であり、29 歳以下が約11%と高齢化が進んでいます。
これからさらに高齢化が進んでいくことも考えられます。
全産業での55歳以上の割合は約29%ほどですが、建設業就業者は全産業よりも高齢化が著しい産業です。
55歳以上の方は大半が10年ほどで引退することが考えられるので、建設業への全体数の就業者数減少が顕著になることも考えられます。
一方、29歳以下の割合は全産業と比較しても低いです。
全産業では約16%の割合ですが、建設業の就業者の割合は約11%と割合が少なくなっています。
建設業での次世代への技術の継承が難しくなる確率は高くなります。
女性就業者数の推移
平成23年より女性就業者数は増加傾向にあります。
建設業の女性就業者数は平成26 年で75 万人となっています。
しかし、女性就業者の比率は全産業や製造業に比較すると、依然として低い状況にあります。
全産業の女性就業者の割合は40%以上となっていますが、建設業の女性就業者の割合は15%程と低く推移しています。
長年、男性の職場として定着していたため、職場環境などで女性に対して進んでいないことも見受けられます。
離職率
建設業の離職率は他の産業に比べて高く、年々改善傾向ではあります。
特に1年目の離職の割合が高くなっています。
建設業は高卒で就職した人が離職する率が高くなっています。高卒で就職した人の40%以上が離職しています。
有効求人倍率の推移 有効求人数は高まっており、建設技術者への需要は高まる一方、求職者数は減少しています。
有効求人倍率は6倍以上と求人数と求職者の数の乖離が長期化しています。
専門的・技術的職業の中でも高い倍率になっています。
今後も建設業各社で深刻な建設技術者不足が続くことが懸念されています。
建設業の労働環境について
技能者の労働時間全産業に比べて労働時間が多い傾向にあります。
全産業では下がりつつある労働時間ですが、建設業では上がっているのが現状です。
他産業と比べて週休2日を実施している建設業者が少ないことが要因と考えられます。
週休2日がとれていないと所定内労働時間が増えます。
それに追加して所定外労働として時間外勤務があります。
現場作業者よりもゼネコンの技術者などの施工管理や屋内作業をする技術者などが特に多くなる傾向です。
書類や図面等の整理などがあるため、時間外労働が増えていくことが考えられます。
公共工事においては、施工時期の平準化や ICT の活用などの取り組みを通じて、休日の拡大などの取り組みをしています。
公共工事で同じ時期に発注が重なると、休みが取れないことや労働時間が長くなることが生じてしまいます。
国の施策として工事時期を分散させて余裕のある工事期間で工事を行えるようにしています。
週休日
建設業において、完全週休2日制を行なっている企業の割合は全産業と比較して大きく低かったですが、他の産業と同様に40%以上に上がっています。
他に、何らかの週休2日制を採用している企業の割合も同程度の割合になっています。
年間休日総数建設業の年間の休日総数は全産業に比べても平均的な日数になっています。
正月休みやお盆などの長期休暇期間が長くとられていることもあります。
年間出勤日数は建設業は全産業の出勤日数よりも20日から30日ほど多くなっており、1ヶ月に2日ほど多くなっています。
週休2日制を採用している企業が少ないことが要因だと考えられます。
有給休暇
厚労省の就労条件総合調査の概況によると、年次有給休暇の付与日数は全産業とほぼ変わらない日数となっています。
しかし、取得日数は建設業の取得日数が少なくなっています。
建設業の企業としての付与数は同程度ですが、その他の産業より取得しづらい環境にあると考えられます。
建設業での労働条件として、遠方での作業が多いことやひと月の仕事量によって賃金が変動することなどが要因になっているのだと考えられます。
厚労省は、企業に時間ごとの有給休暇制度の導入を推進しており、少しづつですが、建設業従事者の有給の取りやすさは改善している印象を受けます。
時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう! – 厚生労働省
建設業退職金共済制度の加入
しかし、建設業の企業では多くが中小企業であることから自社で準備することは難しいです。
建設業退職金共済制度の他にも中小企業退職金共済や商工会などでも退職金制度があります。
公共工事においては建設業退職金共済制度への掛金収納を提出する必要があることから、元請企業の加入率は高くなっています。
建設業退職金共済制度のほかの退職金制度を利用している企業もあります。
技能者へ将来的な費用について不安を持たれないように不安を解消してあげることも技能者の確保に必要になります。
社会保険加入状況 建設業でも社会保険の加入を推進しています。
社会保険は3つあります。
・雇用保険
・健康保険
・厚生年金
平成24年から行政として加入を推進してきたことで、平成24年以降から加入が増加しています。
公共工事においても、元請け企業だけではなく一次下請企業だけではなく、二次以降の企業につ いても未加入企業のチェックの指導を実施しています。
技能労働者の処遇向上や建設産業の持続的な発展に必要な人材の確保のほか、法定福利費を適正に計上することでどの企業も健全な競争環境を担保することができることを実現する必要があります。
見積金額を積算するときに、社会保険費用を計上しなければ少しでも安く見積もりを出すことが可能になります。
それによって技能労働者の処遇が低下してしまうことを防ぐことを目的にしています。
建設業許可を更新する際には確認や指導を行っています。
指導に従わずに未加入の企業には保健担当部局に通報することもあります。
また、元請企業が下請け企業への加入指導を行っているのかも確認されることもあります。
また、経営事項審査を受ける際には未加入の場合の減点幅が大きくなります。
公共工事や大きな物件を請け負う場合、金額や経営事項審査の点数により入札に参加できないこともあります。
男女共用
高齢化や求職者の減少により建設業への就業者が高齢化し減少していることは、国や地方を含めて問題になっています。
技能者確保の対策として国土交通省などでも対策を立てられています。
女性技能者の確保や離職されないことを目指して、各社がそれぞれ試みています。
建設業の現場は男性が多い職場でしたので、トイレについても男女共用になっていることが多かったです。
女性用の更衣室やトイレを設置することなどが進んでいます。
技能者としての確保と合わせて、男性が多い現場で女性特有の視点を入れることができたり、男性よりも女性が得意とする作業もあるため、作業効率を上げることが考えられます。
建設業では時間外の労働時間が多いことがイメージされています。人材が確保できなければさら に時間外労働が増えてしまう悪循環に陥ります。
ICT技術などを効率に用いることによって作業時間を効率的に減らすことが可能になります。
また、公共工事でも作成する書類を減らすことやパソコン・タブレットなどでの確認など確認に おける作業時間を減らすことも行われています。
そのほか、労働者が定着しない主な要因として、
・休みが取りづらい
・労働に対して賃金が低い
・遠方の作業場が多い
・将来のキャリアアップの道筋が描けない
このような理由が挙げられます。
力仕事を行う面もありますし、ICT 技術が発展してきている昨今では、若者を確保したいと考え ることがあります。
しかし、休みが取りづらかったり、将来的に不安がある場合はうまく確保することが難しくなると考えられます。
今後の建設業界について
現状の建設業は、他の業界と比較すると働きやすさは劣ります。
国もこの現状を把握しており、様々な対策で建設業界全体の働き方改革に対応しようとしています。
今後の建設業はどのように変わるのでしょうか?
単純作業は機械やAI/システムに置き換える
少子高齢化の影響が甚大な建設業界において、労働者一人当たりの生産性を向上させる策の一つは、機械化やAI/システムの利用でしょう。
今まで人が行っていた単純作業を機械やAIに代用させることができれば、上記の有給取得率の問題や、女性労働者率の問題も解決できるかもしれません。
建設労働者のAI-redeay化
建設業の作業は人と人とのコミュニケーションが非常に大切な作業です。
その為、一見簡単な作業であっても、経験や知識が必要である場合がほとんどです。
しかしながら、誰がやっても同じ結果になりやすい単純作業というものが必ず存在しています。
このレベル1の単純作業は、企業によって様々です。
各企業における単純作業を機械やAIで代用できないか?と考察できる人材が建設業に求められていると考えます。
まとめ
建設業については、3Kと言われる業種だと考えられています。
しかし、目の前で完成していく現場では他の業種よりも達成感を得られる業種になります。
魅力的な部分を伝えられれば雇用も増えてくるのではないかと考えられます。
将来にわたるキャリアアップの道筋を示すことや技能者が適正な評価と処遇を受けられることが必要になります。
国や業界団体としても技能者の確保のために、将来にわたるキャリアパスを示すことを考えてキャリアアップシステムなどを構築しています。