横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
『建設業の労働時間って長いって聞くけどいったいどれくらいなんだろう?』
『働き方改革で残業が規制されるようになったって聞くけどもう規制されているのかな?』
この記事では上記のような悩みをもつ方に向けて、建設業の労働時間の実態と、働き方改革による残業規制の流れや猶予期間などをご紹介します。
目次
建設業における労働時間の実態
国土交通省の調べによると、建設業と全産業における労働時間の実態は図のようになっています。
建設業は、他の産業に比べて年間340時間ほど労働時間が多いです。
週休2日が取れていないことや、作業環境に応じて残業が多くなっているようです。
ここでは、労働時間の推移や休日の状況、年齢・役職による労働時間の違いなどを見ていきましょう。
労働時間の推移
他産業を見ると、労働時間は順調に減っていますが、建設業を見ると驚くほど横ばいで推移しています。
原因は様々ですが、IT化など働き方改革が進んでいないことや過度なダンピング、人手不足、短工期であることが要因と考えられているようです。
休日の状況
休日の状況を見てみると、週休2日を達成しているのはなんと5.7%だけという1割以下の衝撃的な数字です。
また、約65%が週に1度以下の休みで働いています。
元請・下請・技能労働者による休日形態の違い
上図は元請や下請けの技術者、技能労働者の違いによる休日の実態と望ましい休日です。
完全土日休みを取れているのは元請技術者が多く、次いで下請技術者、技能労働者の順になっています。
現場監督の方が職人よりも休みは取れているという結果です。
年齢・役職による労働時間の違い
年齢ごとによる労働時間の違いを見ると、年齢が高いほど1日の労働時間が短いことが分かります。
若い方が元気でたくさん働けるからという意見もありますが、年齢が上がると役職が上がるからという意見もあるでしょう。
役職ごとの労働時間を見ると、課長職になると労働時間が短いですが、係長や主任だと労働時間が長い傾向があります。
一方で、役職なしは労働時間が短い一面もあるようです。主任クラスの仕事がある程度分かっている人にしか対応できない問題が多く、労働時間が増えているとも考えられます。
残業・休日作業現場の割合と理由
上図はH22年の残業・休日作業を行っている現場の割合と理由を示しています。
その他以外のすべての理由が工程上の理由です。適正工期で契約なされていないため、休日返上で作業をしていることが見て取れます。
建設業における残業規制の流れ
今までの労働基準法では原則として、労働時間は1日8時間、週40時間までとし、残業は月45時間かつ年360時間までと定められていました。
しかし、建設業では36協定により残業時間を実質無制限に延長していたのです。それが時代の流れに逆行しており、徐々に残業を規制する流れになってきています。
ここでは、36協定とは、36協定の適用除外、今後の働き方改革による残業規制の猶予期間と逃げ道について紹介します。
36協定とは
36協定とは、時間外・休日労働に関する届け出のことを言います。
36協定の36というのは、労働基準法第36条の条数から取られているのです。
労働基準法第36条によると、会社は1日8時間、週40時間を超える時間外労働及び休日勤務などを命じる場合、労働組合などと書面による協定を結び労働基準監督署へ届け出ることが義務付けられています。
わかりやすく簡単に言うと、残業する時は事前に労組と話し合って内容を監督署に届けてね、というのが36協定です。
36協定の残業上限適用除外
ただし、残業を規制する36協定にも抜け道があり、特定の職種は残業の上限が適用されません。
工作物の建設等の事業を扱うものが適用除外となっており、土木、建築の現場作業、大規模な機械・設備の工事などを行う職種においては36協定による残業上限の適用は除外されています。
そのため、建設業は36協定の適用除外で、36協定を結ぶと、建設業では無制限に残業できてしまいました。
働き方改革による残業規制の猶予期間と逃げ道
電通や国立競技場で過労死が明るみに出て、その状況を見た国土交通省が働き方改革として2017年に労働基準法を改正しました。
2019年4月~2024年3月までを猶予期間として残業時間は現在のまま、2024年4月からは一般企業と同じように月45時間、年360時間まで残業OKと残業上限を規制したのです。
しかし、ちゃんと逃げ道も用意されており、うまくいかなかった場合などは特別条項により、残業は年720時間未満、2~6か月の平均が80時間以内、単月100時間未満、45時間を超えてよいのは年6回までとなりました。
まとめ
建設業の労働時間は他の産業に比べて年間340時間ほど長く、週休2日を達成しているのは5.7%だけでした。
約65%が週に1度以下の休みで働いており、その理由は主に工程上の理由のようです。
働き方改革による残業規制の猶予期間は2024年3月までであり、2024年4月からは一般企業と同様の月45時間、年360時間までという上限が規制されます。
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