【建築業界の働き方改革】長時間労働を解消するための4つの改善策について

長時間労働は建設業界の抱える重要課題です。

  1. 繁忙期 ➡ 発注時期の偏り
  2. 無理なスケジュール ➡ 極めて不適切な工期の設定
  3. 人材不足 ➡ 若年層の不足、離職、低賃金、待遇の悪さ など
  4. 作業の非効率 ➡ IT化、AI化の遅れ など

これらの問題を解決することは、長時間労働の削減を含め、建設業界の働き方改革や地域維持にもつながっていくのです。

今回の記事では長時間労働の解決策について言及していきます。

建設業界の長時間労働を減らす4つの改善策

長時間労働という課題を解決する策は現状は以下の通りです。

改善策1.工事発注の平準化

特に公共事業において予算組の関係から、年度初めの4月・5月の工事発注が少なく年度末に工事発注が集中する傾向にありました。

閑散期と繁忙期があるという状況は、以下の様な問題が起こります。

  • 閑散期:技能者・技術者の収入が不安定、人材・機材の余剰
  • 繁忙期:人手・機材の不足、長時間労働、無休

この問題を解決するために国土交通省では「工事発注の平準化」を推進しています。

平準化により何が解決するのか?

1年を通じて仕事があれば、複数の工事を一度にかけ持ちをする必要もなくなります。

その結果、人手不足による個人の作業負担が軽減されますし、収入も安定します。

改善策2.直轄工事における適正な工期の設定に向けた取り組み

    • 準備・後片付け期間の見直し
        • 工事規模や地域の状況に応じて、準備・後片付けに最低限必要な日数を設定
    • 余裕期間制度の活用
        • 工期の30%を超えず、かつ、4ヶ月を超えない範囲で余裕期間を設定
    • 工期設定支援システムの導入
        • 工期設定に際し、歩掛りごとの標準的な作業日数や、標準的な作業手順を自動で算出する工期設定支援システムを導入
    • 工事工程の受発注者間での共有
        • 施行当初段階において、工事工程のクリティカルパスと関連する未解決課題の対応者・対応時期について共有することを受発注者間でルール化

建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン

働き方改革が関連法による改正労働基準法が平成31年4月に施工されました。
建設業界では、5年間の猶予期間後、時間外労働の罰則付き上限規制が適用されます。
そのため、受発注者相互の理解と協力の下に取り組むべきとして、ガイドラインを策定しています。
以下、今回の記事テーマに関連した内容を抜粋します。

【ガイドラインの内容】
時間外労働の上限規制の適用に向けた基本的な考え方

    • 受注者の役割
        • 建設工事従事者の長時間労働を前提とした不当に短い工期とならないよう、適正な工期で請負契約を締結
    • 発注者の役割
        • 施行条件の明確化を図り、適正な工期で請負契約を締結

時間外労働の上限規制の適用に向けた取組

    • 適正な工期設定・施工時期の平準化
        • 工期の設定にあたっては、下記の条件を適切に考慮
            • 建設工事従事者の休日(週休2日等)
            • 労務・資機材調達やBIM / CIM活用等の準備期間、現場の後片付け期間
            • 降雨日、降雪・出水期等の作業不能日数 など
        • 業種に応じた民間工事の特性等を理解のうえ協議し、適正な工期を設定
        • 受注者は違法な長時間労働に繋がる「工期のダンピング」を行わない
        • 予定工期内での完了が困難な場合は、受発注者協議のうえ、適切に工期を変更

改善策3.待遇の見直し、改善

人材不足を補うための新たな雇用の拡張は、一番難しい課題でもあります。
特に若年層の入職・定着を図るためには、以下の問題を解決する必要があるのです。

    1. 収入が低い
    1. 仕事がきつい
    1. 休日が少ない
    1. 作業環境が厳しい
    1. 社会保険等福利厚生が未整備

この5つの問題の内「休日が少ない」は、前章でご紹介した通り工期の見直しや工事発注の平準化によって徐々に確保できるようになります。

また、「社会保険等福利厚生が未整備」については、「未加入事業者への建設業を許可しない」や「工事見積書に福利厚生費の項目を設ける」などの取組が進んでいますので、徐々に改善しつつあります。

問題は、「収入が低い」「仕事がきつい」「作業環境が厳しい」の3点です。

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収入増加のための施策

公共事業・民間事業を問わず、適正な工事費による契約締結が実現するようになれば、元請け企業・下請け企業どちらも人件費を削る必要が無くなります。

日本建設業連合会では自主行動計画として、

  1. 下請取引の適正化
    1. 合理的な請負代金と工期の決定
    2. 適正な請負契約の締結
    3. 下請代金支払の適正化
    4. 協力会社に対する普及啓発・支援活動及び定期的なフォローアップ
  2. 適正な受注活動の徹底
    1. 適正価格での受注徹底
    2. 適正工期の確保
    3. 適正な契約条件等の確保

を掲げ、極端に安い代金で工事を受発注しないよう業界全体に働きかけています。

また、災害復興なども含め国による公共事業においては予算の増額を測り、工事費の増加または、公共事業数の増加による利益増を目指しています。

これにより、徐々に賃金UPを推し進めているのです。

仕事がきつい、作業環境が厳しいは改善できない?

正直に言えば、建設業において作業環境を改善することは難しいでしょう。

ただ、工事現場ごとに例えば熱中症対策の一環として、製氷機を導入したりクーラー完備の休憩所を設けたりといった対策も行っています。

改善4.日建連による建設生産システムの合理化

日建連では長期ビジョンとして、新たな精進化技術の活用を促進しています。

プレキャスト工法の活用

一般的な住宅の中にはプレハブ工法やプレキャスト工法が浸透してきています。

ですが、道路工事や橋梁工事などではまだまだ一般的ではありません。

道路の構造物や橋梁などをプレキャスト化できれば、人材不足でも工事を効率的に進めることが出来ます。

機械の遠隔操作や自律制御などの自動化

製造業ではすでに一般的となっているロボットによる作業の代替を促進することで、人材不足を補うだけでなく人が行うには危険すぎる作業を効率よく行うことが可能となります。

また、介護の分野で活躍しているパワースーツの導入により重労働となりがちな現場作業員の作業を支援することが可能となります。

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現場における待ち時間や手戻りの解消

ICTの活用により元請け・下請け間の情報共有、工程の進行状況の把握など、効率的な工程管理を行うことが可能となり、現場での無駄な待ち時間などを軽減することが出来ます。

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BIM・CIMの活用

BIMは建築物、CIMは土木構造物の3DCADで、ただ3次元形状をモデリングするだけではありません。

作成した3次元データを元に2次元図面の作成、施工図面の作成、コンピューター上でのシミュレーションなど、様々な分野・部門で活用することができます。

BIMやCIMは高額ということもあり、末端企業にまで導入することはかなり難しいと言えるでしょう。

また、これら3DCADを操作するための人材の育成という課題もあります。

BIMと3DCADの違い

建設業にも働き方改革を

長時間労働是正のために働き方改革関連法が施工され、労働基準法も改正されました。

建設業には5年間という猶予を設け長時間労働をなくす取り組みを行うよう、提言されています。

長時間労働をなくすためには、工期の見直しはもとより人材の確保も課題となってきます。

ここでご紹介した以外にも、「処遇改善の提言」や「人材確保の提言」などがあり、業界全体を通して取組を実施しています。

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