【自力で申請】人材開発支援助成金の特定訓練コースについて

今回は、「人材開発支援助成金」という制度の1つ「特定訓練コース」についてご紹介します。

昨今、人口の減少に伴いどの産業においても人材不足が問題となっています。

新しい人材を採用しても、その人材が育たなかったり、育てる環境がなかったりと、人手不足による弊害もあり、若年人材の職場定着がままならない状況にあります。

この「特定訓練コース」は、職業訓練などを実施することで人材の確保と育成を行い、それによる労働者の雇用の安定を図ることを目的とした助成金制度です。

建設業界でも問題となっている、若年人材の採用と育成をこの助成金を使って実施してみてはいかがでしょうか?

助成金について

まず、助成金について基本的なところから確認しましょう。

申請すれば受給できるが、予算に上限がある

助成金は適切に申請を行えば、受給が可能です。

しかし、助成金の予算には上限があるので、人気の助成金はすぐに予算に達してしまい、申請したかったのに受給できないケースもあります。

例えば、テレワーク助成金です。

新型コロナウィルス感染症の影響により、国はテレワークの推進をしています。

テレワークを普及させるための策がテレワーク助成金です。

企業当たり最大200万円の助成金が受給できるということで申請が殺到しました。

厚生労働省/働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)

このように、上限金額が多く汎用性が高い助成金はすぐに上限金額に達してしまう場合があるので注意が必要です。

最新情報は厚労省のHPから確認しよう

テレワーク助成金以外にも国はたくさんの助成金を用意してくれています。

最新情報は厚労省のHPで必ず確認しましょう。

厚労省HP

複雑で申請に時間がかかる!しかし、自力でも十分可能


助成金の申請には非常に時間がかかるため、途中で申請をあきらめてしまう事業者も多数います。

パソコンでの入力作業が苦手な事業者は、少し困難かもしれません。その場合は、手数料を支払って社労士の方に相談するのも一つの手です。

しかしながら、自力でも十分申請は可能です。

自力で申請する際は、近くのハローワークに相談するのが一番良いでしょう。

ポイント

自力で申請する際は、ハローワークに相談する!

ハローワークはとても丁寧に対応してくれる

特定訓練コースの趣旨と7つの助成類型

「特定訓練コース」には、7つの助成類型があり、それぞれの訓練によって対象となる労働者に違いがあります。

また、産業や企業規模、職場によっては合わない訓練もあります。

これからご紹介する各訓練の趣旨や内容をよく理解し、ご自分の企業にあった訓練を実施しましょう。

特定訓練コースの趣旨

「特定訓練コース」の趣旨については、支給要領に以下の様に書かれています。

「人材開発支援助成金(特定訓練コース)は、職業能力開発促進法第12条に規定する職業能力開発推進者を選任し、かつ、同法第11条に規定する事業内職業能力開発計画及び当該計画に基づく年間職業能力開発計画等に基づき、職業訓練又は教育訓練の実施その他職業能力開発に係る支援を行う事業主等に対して助成を行うことにより、労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を促進し、もって企業内における労働者のキャリア形成の効果的な促進に資することを目的とするものである。」

回りくどく、判りづらいですね。

簡単に言うと、「職業能力開発促進法という法律に従って、社内の労働者の中から1人、職業能力開発推進者を選任して、同じく法律で規定されている事業内職業能力開発計画に従って、若年者の訓練や、熟年技術者の訓練などを実施することで、助成される制度」ということです。

つまり、この助成金の目的は「労働者のキャリアアップを図ること」なのです。

7つの助成類型とそれぞれの趣旨

「特定訓練コース」には7種類の訓練があり、その訓練毎に趣旨があります。

ここでは、それぞれの趣旨についてご説明いたします。

なお、助成金の対象となる訓練内容については、支給要領のほか「人材開発支援助成金(特定訓練コース・一般訓練コース)のご案内(詳細版)」や、「令和2年度 雇用・労働分野の助成金のご案内」でご確認頂けます。

労働生産性向上訓練

支給要領によれば

「今後の労働力人口の減少が見込まれる中で、企業が競争力を高めるためには、労働生産性を高めていくことが必要になっています。」

とあります。

つまり、この「労働生産性向上訓練」は、労働生産性の向上を目的としています。

そのため、労働生産性に役立つ職業訓練を実施します。

若年人材育成訓練

支給要領によれば、

「若年者の就職環境が厳しい状況にある一方で、中小企業は若年人材の確保や定着に困難を感じており、人材育成の意欲も低い状況となっている。このことが、若年人材の確保・定着を一層難しくする一因ともなっている。」

とあります。

実際、多くの中小企業では人手不足を理由に、新入社員教育をおざなりにし、その一方でベテラン社員並みの能力・技術を要求します。確かに、そのような環境では育つ人材もつぶれてしまうだけでしょう。

この「若年人材育成訓練」は、そんな若年層の雇用を安定させるための訓練を目的とした制度なのです。

グローバル人材育成訓練

支給要領によれば、

「国内市場が縮小する中で、国内産業の活性化と雇用の維持・増加を図るため、国外への市場の拡大等により、事業の高付加価値化を進めることが重要であり、特に人材育成の取組を支援する必要がある。」

とあります。

簡単に言えば、この「グローバル人材育成訓練」は、国内での販路拡大が難しくなってきている昨今、その販路を海外に見出すために海外に事業拠点となる支店等の設置や、輸出の強化など、海外との取引実務を行える人材を育成することを目的としているのです。

熟練技能育成・承継訓練

支給要領によれば、

「ものづくり離れや技能離れの傾向がある中で、今後とも我が国の成長の軸となる製造業等の競争力を維持・向上させ、成長分野等における高付加価値製品の国内生産を可能とするためには、経済発展の基盤となってきた優れた後継者の育成が急務であり、ものづくり技術の強化・継承を推進する必要がある。」

とあります。

例えば、古い大工さんなどは「職人なら見て覚えろ」とか、「ワザは盗め」などと言って、手取り足取り丁寧に教えてくれることは、ほとんどありませんよね。

この古い技能継承の方法も、現代の若年層が建設業に定着できない要因の1つと言えます。

「熟練技能育成・承継訓練」の助成対象となる訓練の中には、「熟練技能者の指導力強化」といったものもありますので、建設業界における「技能継承の不備・不足」といった課題を解決できるかもしれません。

特定分野認定実習併用職業訓練

支給要領によれば、

「基幹産業である製造業等において、技能継承や中核人材の育成を図ることは喫緊の課題となっている。」

とあります。

ここで言う「基幹産業」とは、製造業に加え、建設業、情報通信業も含まれています。つまり、現場で活躍できるいわゆる「職人」の育成が課題なのです。

先ほどご紹介した「熟練技能育成・承継訓練」や「若年人材育成訓練」と合わせ、建設業界で活躍できる人材の確保と育成を実施することが、今後の建設業が抱える課題解決への糸口となることでしょう。

認定実習併用職業訓練

支給要領によれば、

「人口減少社会が到来する一方、現場における技術・技能や管理能力等の低下が問題となる中で、実践的な資質を持った青少年を現場の戦力として養成する効果的な仕組みづくりが求められている。」

とあります。

ここまでにもご紹介してきた訓練内容ともリンクする部分があり、やはり現場における人材不足が課題となっている建設業界において、必要な訓練の1つと言えるでしょう。

中高年齢者雇用型訓練

支給要領によれば、

「人手不足業界においては若年層の採用が困難なため、中高年齢者を人材確保の主な対象としているところであるが、求められる個別能力の習得や新たな職務での適合性等の課題により、職場定着が困難な場合があり、その支援策が求められている。」

とあります。

この訓練の対象は45歳以上の労働者です。ということは、これまでの訓練とは違い中高年層への訓練が支給対象となります。

しかし、建設業界においてこの訓練が意味を成すのかというのは疑問があります。

というのも、建設業の、特に訓練が必要となる専門職となると、ある程度の知識や経験、技能が求められるため、残念ながら未経験の中高年層は採用枠外になるからです。

助成金支給の要件

訓練を実施する前にまずは、支給要件をご確認ください。

折角訓練を実施しても、支給要件を満たしていなかったり、不支給要件に当てはまったりすると、助成金は支給されません。

また、支給要件は全てを満たさなければいけませんし、不支給要件は1つでも当てはまってはいけないのです。事前に支給要件・不支給要件を理解していなければ、助成金申請をしても意味が無くなってしまいますよ。

支給対象となる事業主と事業主団体

「特定訓練コース」は、「雇用・労働分野の助成金」に含まれますので、まずは「令和2年度 雇用・労働分野の助成金のご案内」9pにある「A 受給できる事業主」に書かれている要件すべてに該当する必要があります。

また、「共通要領」6pにある「0300 支給要件」もあわせて確認しておきましょう。助成金すべてに対する支給要件です。

ここまでは、助成金すべてに係る要件です。1つでも該当しなければ支給対象となりませんので、しっかり確認しましょう。

次に、「特定訓練コース」独自の支給要件をご紹介していきます。

詳細は「支給要領」をご確認ください。

  1. 当該事業主の事業所の労働組合等の意見を聴いて作成した事業内計画を、その雇用する被保険者に周知した事業主であること
  2. 当該事業内計画に基づき、年間職業能力開発計画を作成し、その雇用する被保険者に周知した事業主であること
  3. 職業能力開発推進者を選任している事業主であること
  4. 年間職業能力開発計画を管轄労働局長に対して提出している事業主であること
  5. 基準期間に、当該年間職業能力開発計画を実施した事業所において、雇用する被保険者を解雇など、事業主都合により離職させた事業主以外の事業主であること
  6. 基準期間に、当該年間職業能力開発計画を実施した事業所において、法第23条第1項に規定する特定受給資格者となる離職理由のうち、離職区分1Aまたは3Aに区分される離職理由により離職した者として法第13条に規定する受給資格の決定が行われた者の数を、当該事業所における支給申請提出日における法第4条に規定する被保険者数で除した割合が6%を超えいている事業主以外の者であること
    1. 以下3種類の書類等について整備している事業主であること
    2. 対象労働者に係る訓練等の実施状況を明らかにする書類
    3. 訓練等に要する経費等の負担の状況を明らかにする書類
  7. 対象労働者に対する賃金の支払いの住協を明らかにする書類
  8. 当該訓練等を受ける期間、当該訓練等を受ける被保険者に対し所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の額を支払う事業主であること
  9. 構成事業主の雇用する被保険者に対する訓練等に係る(団体型訓練)訓練実施計画書を作成している事業主団体等であること
  10. 対象訓練等を被保険者に受講させる構成事業主に対して、同一の訓練については経費助成が受けられないこと、及び、支給申請にあたって事業主団体等が実施する対象訓練等を受講した旨を労働局長に申告しなければならないことについて、周知した事業主団体等であること

支給対象となる事業主は、以上10項目のうち、8番までの要件を満たし、さらに、以下の訓練毎の要件に該当する事業主です。

また、支給対象となる事業主団体等は、以上10項目のうち9番と10番両方に該当し、さらに以下の訓練毎の要件に該当する事業主団体等です。

労働生産性向上訓練

【特定雇用型訓練以外の要件】

  1. 労働者に以下3種類の訓練等のどれか1つ以上を受けさせること
    1. 能力開発促進法第15条の7に規定する高度職業訓練
    2. 中小企業等経営強化法第40条第2項第1号の事業分野別指針に定められた事項に関する研修として行う訓練
    3. 支給要領0200のに 労働生産性向上に資する特定訓練」

若年人材育成訓練

【特定雇用型訓練以外の要件】

  • 訓練開始日において、雇用契約締結後5年未満でかつ、35歳未満の若年労働者を対象に訓練等を受けさせること

グローバル人材育成訓練

【特定雇用型訓練以外の要件】

  • 海外関連の業務を行っている事業主又は今後海外関連の業務を行うことを計画している事業主が受けさせる訓練等

熟練技能育成・承継訓練

【特定雇用型訓練以外の要件】

  1. 労働者に以下3種類の訓練等のどれか1つ以上を受けさせること
    1. 熟練衣者の指導力強化のための訓練等
    2. 熟練技能者による技能承継のための訓練等
    3. 認定職業訓練

特定分野認定実習併用職業訓練

【特定雇用型訓練の要件】

  1. 主たる事業が、日本標準産業分類の大分類における建設業、製造業又は情報通信業であって、以下の3種類の訓練毎の要件を満たす事業主であること
    1. 企業単独型訓練
      1. 年間職業能力開発計画に基づき、雇用している15歳以上45歳未満の被保険者となる労働者に特定分野認定実習併用職業訓練を受けさせる事業主であること
    2. 企業連携型訓練
      1. 対象となる被保険者について、以下5項目のいずれにも該当する出向をさせた出向元事業主と当該出向をさせたものを雇い入れる出向先事業主とが共同して作成する「年間職業能力開発計画」に基づき、当該対象被保険者に特定分野認定実習併用職業訓練を受けさせる出向元事業主又は出向先事業主であること
        1. 出向をした日が、出向先事業主が当該対象被保険者に特定分野認定実習併用職業訓練を消させる日の前日までであること
        2. 出向をした日から起算して2年を経過しる日までの間に当該出向を終了し、当該対象被保険者が出向元事業主の当該出向に係る事業所に復帰するものであること
        3. 出向元事業主と出向先事業主が出校日の前日までに締結した出向に関する契約に基づき、出向元事業主及び出向先事業主の当該出向に係る事業所において行われる当該特定雇用型訓練の期間、当該対象被保険者が所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の額が支払われていること
        4. 出向の時期、出向の対象となる労働者の範囲その他出向の実施に関する事項について、あらかじめ出向元事業主と当該出向元事業主の当該出向に係る事業所の労働組合等との間に書面による協定がなされ、当該協定の定めるところによって行われるものであること
        5. 出向させたものの同意を得たものであること
      2. 事業主団体等連携型訓練
        1. 対象被保険者を雇用する事業主と事業主団体等とが共同して作成する年間職業能力開発計画に基づき、当該対象被保険者に特定分野認定実習併用職業訓練を受けさせる事業主

認定実習併用職業訓練

【特定雇用型訓練の要件】

  1. 年間職業能力開発計画に基づき、以下の3項目のどれかに該当する、15歳以上45歳未満の労働者に認定実習併用職業訓練を受けさせる事業主であること
    1. 新たに雇い入れた雇用保険被保険者
      1. 雇入れた日から訓練開始日までが2週間以内の者に限る
    2. 能力開発促進法第26条の3第1項及び第2項に定める実習併用職業訓練実施計画の認定申請の前に、既に雇用している短時間等労働者であって、引き続き、同一の事業主において新たに通常の労働者に転換した者
      1. 転換日から訓練開始日までが2週間以内の者に限る
    3. 既に雇用する被保険者

中高年齢者雇用型訓練

  1. 年間職業能力開発計画に基づき、直近2年間に継続して正規雇用されたことがない者であって、以下の2項目に該当する中高年齢者の労働者に中高年齢者雇用型訓練を受けさせる事業主であること
    1. 新たに雇い入れた雇用保険の被保険者
      1. 雇入れ日から訓練開始日までが2週間以内の者に限る
    2. 中高年齢者雇用型訓練実施計画の申請の前に既に雇用している短時間等労働者であって、引き続き、同一の事業主において、新たに通常の労働者に転換した者
      1. 転換した日から訓練開始日までが2週間以内の者に限る

支給対象とならない訓練は?

通常、職業訓練で教鞭をとれる講師は、その職業内容について熟知している人物でなければなりません。

例えば、鉄筋を扱う職人の訓練に会計士が講師として立つことは出来ませんよね。では、鉄筋を扱う職人であれば誰でも良いのかというとそうでもありません。実務経験が1年未満の方では、訓練講師として相応しいとは言えません。

つまり、支給対象となる訓練を実施するためには、訓練内容のほか講師も対象となる方を準備する必要があるのです。

とはいえ、支給対象となる訓練を必死に考えて実施するのは大変ですよね。

ということで、ここでは対象となる訓練ではなく、対象とならない訓練についてご紹介します。

ここでご紹介している訓練内容や訓練方法のほか、支給要領に書かれている内容もしっかりとご確認ください。

Off-JT訓練の内容

以下の表にある訓練は、支給対象外となります。カリキュラムの中の一部として組み込まれていたとしても、不支給対象となる訓練内容については、訓練時間数として認定されません。

そのため、支給対象となる訓練時間数からは除外してください。

ちなみに、訓練時間数として必要となるのは、10時間または20時間以上です。

 画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」18p
画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」18p

この他、以下の時間も訓練時間に含まれません。カリキュラム作成時にしっかりと確認しておきましょう。

  1. 昼食など、食事を伴う休憩時間
  2. 移動時間
  3. 以下のうち、定められた範囲を超える時間
    1. 小休止(訓練と訓練の合間にとる1回30分以下の休憩時間)・・・1日累計60分まで
    2. 開講式、閉会式、オリエンテーション等・・・一の年間職業脳六開発計画当たり累計60分

Off-JT訓練の方法

訓練の実施方法によっても、支給対象とならない場合があります。

以下の様な訓練方法は、不支給対象となりますので注意しましょう。

 画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」19p
画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」19p

支給対象となる経費は?

この「特定訓練コース」の助成金は、訓練を実施した際にかかった経費や賃金に対して支給されます。

支給対象となる経費については、以下の通りとなります。

 画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」17p
画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」17p

この他、対象の訓練に関連した職業能力検定や、キャリアコンサルティングのための費用なども支給対象となります。

また、「グローバル人材育成訓練」の場合、海外の大学や教育訓練施設などが主催する訓練を利用する場合、以下の経費も支給対象となります。

  1. 入学金、学費、受講料 等
  2. 家賃、宿泊費、交通費 等

これらの経費については、全額ではなく事業主が負担した分のみが対象となります。

支給対象となる経費について、詳細は支給要領で確認できます。

支給対象とならない経費は?

訓練を実施する際にかかる経費のうち、助成金の対象外となるものもあります。申請の際には助成額の算定から除外しましょう。

 画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」19p
画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」19p

また、賃金についても対象とならない場合があります。

  1. 所定労働時間外・所定休日(あらかじめ別日に所定休日を振り替えた場合は除く)に実施した訓練
  2. 通信制を含む訓練等の場合は、通信による授業時間(スクーリング部分のみ対象となる)
  3. 一般教育訓練給付指定講座のうち通信性等で実施する訓練
  4. 育児休業中の訓練
  5. グローバル人材育成訓練の内、海外で実施する訓練
  6. 事業主団体等が実施する訓練

これら支給対象とならない経費等について、支給要領に詳細があります。しっかり確認しておきましょう。

助成金額と助成率と算定方法

ここでは、この「特定訓練コース」を実施した場合に支払われる助成金の種類と助成金額などについてご紹介します。

助成金額と助成率

支給対象となる訓練を実施した場合、そのかかった経費や訓練を受講させた労働者の賃金に対して、助成金が支払われます。

では、どの程度助成されるのでしょうか?

ここでは、賃金助成の額と経費助成の助成率についてご紹介します。

なお、今回ご紹介するのは中小企業事業主の場合、大企業事業主の場合、事業主団体の場合です。東日本大震災に係る暫定措置については、支給要領でご確認ください。

また、助成額と助成率に関する詳細や、経費の算定方などは支給要領で確認できます。

中小企業の場合

中小企業事業主が訓練を実施した場合は、以下の表の通りとなります。

訓練の種類 OFF-JT OJT
賃金助成額 経費助成率 実施助成額
生産性要件 生産性要件 生産性要件
労働生産性向上訓練 760円 200円 45% 15%
若年人材育成訓練
グローバル人材育成訓練
熟練技術者育成・承継訓練
認定実習併用職業訓練
中高年齢者雇用型訓練 665円 175円
特定分野認定実習併用職業訓練 60% 15%

生産性要件を満たす場合の助成額や助成率は割り増し分です。

また、この表の助成額は1人1コース1時間当たりの金額です。この金額に訓練時間数と訓練受講者数を掛けて出た値が、申請金額となります。

この表の助成率については、1人1コース当たりです。1人分の経費にこの助成率を掛けて出た値が、1人当たりの申請可能な経費額となります。

大企業の場合

大企業事業主の場合は、中小企業事業主とは違う助成額・助成率となります。

訓練の種類 OFF-JT OJT
賃金助成額 経費助成率 実施助成額
生産性要件 生産性要件 生産性要件
労働生産性向上訓練 380円 100円 30% 15%
若年人材育成訓練
グローバル人材育成訓練
熟練技術者育成・承継訓練
認定実習併用職業訓練
中高年齢者雇用型訓練 380円 100円
特定分野認定実習併用職業訓練 45% 15%

事業主団体の場合

事業主団体の場合、助成対象となるのはOFF-JT訓練の経費のみです。

上の表の様に訓練類型毎の助成率はなく、一律45%です。

また、生産性要件も関係がありません。

賃金助成額の算定方法

前項にある助成額等の表のうち、賃金助成額の算定方法をご紹介します。

訓練方法によってその算定方法に違いがあります。

  1. 特定雇用型訓練(企業連携型訓練を除く)
    1. 賃金助成額 × 助成対象労働者が受講したOFF-JT賃金助成対象時間数
  2. 特定雇用型訓練(企業連携型訓練)
    1. 出向元事業主
      1. 賃金助成額 × 助成対象労働者が受講したOFF-JT賃金助成対象時間数
    2. 出向先事業主
      1. 賃金助成額 × 助成対象労働者が受講したOFF-JT賃金助成対象時間数

企業連携型訓練の場合は、出向元事業主と出向先事業主それぞれで実施したOFF-JTの賃金助成対象時間数を出して、計算してください。

時間数を明確に分けることが出来ない場合は、出向元・出向先双方合意の上で任意の時間数を決定します。

特定雇用型訓練の実施助成額の算定方法

前項の助成額等に関する表のうち、OJT訓練に係る助成額の算定方法をご紹介します。

賃金助成額の算定方法同様に、企業連携型訓練とそれ以外の訓練で算定方法に違いがあります。

  1. 特定雇用型訓練(企業連携型訓練を除く)
    1. 実施助成額 × 助成対象労働者が受講したOJT実施助成対象時間数
  2. 特定雇用型訓練(企業連携型訓練)
    1. 出向元事業主
      1. 実施助成額 × 助成対象労働者が受講したOJT実施助成対象時間数
    2. 出向先事業主
      1. 実施助成額 × 助成対象労働者が受講したOJT実施助成対象時間数

支給額の算定方法

経費助成、賃金助成の算定は以下によって行います。

  1. 所定労働時間外および休日に訓練等を行った訓練時間数にかかわらず、一の年間職業能力開発計画の実訓練時間数が10時間以上であることを確認
  2. 育児休業中の訓練等、グローバル人材育成訓練のうち海外で実施する訓練等および専門実践教育訓練または特定一般教育訓練のうち訓練の実施方法が通信制として講座指定された訓練等および事業主団体等が実施する団体型訓練を除き、上記1番の実訓練時間数のうち、受講生の受講時間数が8割以上であることを確認
  3. 教育訓練休暇を与えた場合の賃金助成については、当該休暇の時間数のうち訓練等を受講した時間数を助成対対象とし、経費助成については当該休暇の時間数にかかわらず、助成対象として助成額を算定

詳細は、支給要領でご確認ください。

支給限度額

助成金には、支給限度額が設けてあります。無制限に支給されるわけではありませんので注意しましょう。

経費の支給限度額は以下の表の通りです。

企業規模 20時間以上100時間未満 100時間以上200時間未満 200時間以上
中小企業事業主
事業主団体等
150,000円 300,000円 500,000円
大企業事業主 100,000円 200,000円 300,000円

この表の時間数は、訓練時間数です。金額は時間数に応じて決められています。また、この金額は1人1年間職業能力開発計画当たりのOFF-JTにかかる経費助成の限度額です。

賃金助成の限度額は、訓練時間数で制限されます。

訓練時間数は1訓練当たり1,200時間です。

また、認定職業訓練、専門実践教育訓練については、1,600時間が限度時間数となります。

OJT実施助成の限度額についても時間数で制限されます。

特定分野認定実習併用職業訓練と認定実習併用職業訓練の場合は680時間が限度となります。

中高年齢者雇用型訓練については、382.5時間が限度時間となります。

なお、これらの時間については1人が受講できる時間数です。

そのほか、以下の様な支給に関する制限もあります。

  1. 訓練等受講回数の制限
    1. 1労働者当たり年間職業能力開発計画期間内で3回まで
  2. 1事業所・1事業主団体等の支給額の制限
    1. 1年度当たりの受給制限額は1,000万円

助成金限度額に関する詳細は、支給要領のほか「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」でも確認できます。

申請の流れと申請書類

申請の手続きは以下の通りに行います。

上の図は、申請手続きの流れを表したものです。それぞれの手順について、以下に簡単にご説明します。

  1. 申請の前提 ・・・ 各都道府県労働局と相談
    1. 社内の職業能力開発推進者の選任
    2. 社内の事業内職業能力開発計画の策定
  2. 認定実習併用職業訓練と特定分野認定実習併用職業訓練の場合
    1. 実習併用職業訓練に関する厚生労働大臣の認定
      1. 実践型人材養成システム実施計画の提出 ・・・ 各都道府県労働局
      2. 厚生労働大臣の認定通知の受領
  3. 訓練実施計画届の提出 ・・・ 各都道府県労働局
  4. 訓練の実施
  5. 支給申請書の提出 ・・・ 各都道府県労働局

2番の手順は、認定実習併用職業訓練と特定分野認定実習併用職業訓練のみです。それ以外の訓練については、1番の後3番に飛びます。

なお、2番の厚生労働大臣の認定を受けるために提出する書類は以下の通りです。

 画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」24p
画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」24p

これらの書類は厚生労働省のHPからダウンロードできます。また、記載例やジョブ・カードの評価方法などもありますので、是非、ご確認ください。

訓練実施計画届の作成と提出

前項手続きの手順3番の「訓練実施計画届」の提出に係る書類についてご説明します。

また、訓練の種類によって添付書類に違いがあります。間違えない様に「人材開発支援助成金(特定訓練コース)の申請に必要となる書類一覧」で確認しながら準備しましょう。

必要書類

 画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」26p
画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」26p

この一覧にある申請書類などは、各訓練共通のものです。書類のダウンロードは厚生労働省HPから行えます。

その他、訓練毎に添付が必要となる書類がありますが、ここではすべての紹介を割愛させて頂きます。

添付書類などの詳細については、支給要領書類一覧、「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」等でご確認ください。

提出期限

「訓練実施計画届」の提出期限は、訓練開始日から起算して1か月前までです。この期限は必須で、1日でも遅れると支給対象となりません。

ただ、1か月前とは言え、月によって日数に違いがあります。判り易いように表にまとめてみました。

訓練開始日 書類提出期限
7月1日 6月1日
7月30日 6月30日
7月31日 6月30日(31日がないのでその前日)
9月30日 8月30日(前日の同日が期限)
3月29日、3月30日、3月31日 2月28日(うるう年の場合は2月29日)

基本的には訓練開始日の前月の同日が提出期限となります。

ただし、同日がない場合には、上の表の様に日付がずれます。

また、提出期限はあくまでも訓練開始日から起算して1か月前ですが、準備が難しい添付書類などは、事前に申し出れば訓練開始日の前日までに提出を延期してもらえます。

助成金支給申請の書類と期限

訓練が終了したら、助成金の支給申請をします。

支給申請で提出する書類には、一部各訓練共通の書類がありますが、訓練によって提出が必要となる申請書類などもあります。

また、事業主団体等が実施する場合も申請書類などに違いがあります。

詳細については、支給要領書類一覧、「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」等でご確認ください。

必要書類

 画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」29p
画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」29p

これら申請書類は厚生労働省HPからダウンロードしてください。

また、「共通要領様式第1号」と「支払方法・受取人住所届」は、他の申請書類とは別のページがからダウンロードしてください。

 画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」30p
画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」30p

事業主団体等が実施する訓練については、以下の申請書類と添付書類が必要です。

 画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」30p
画像引用:「人材開発支援助成金のご案内(詳細版)」30p

この他、訓練毎にも必要な申請書類や添付書類があります。詳細は、支給要領などでご確認ください。

申請期限

助成金の支給申請は、訓練が終了してから行います。

支給申請の期限は、訓練修了日の翌日から起算して2か月以内です。1日でも提出が遅れると、不支給となりますので注意しましょう。

まとめ

これだけの長文を読んでしまうと、「特定訓練コース」という助成金制度に対して抵抗を感じてしまうかもしれませんね。

ですが、7種類ある訓練のうち必要となる訓練内容だけをしっかりと理解し、助成金の支給対象となる訓練を実施すれば良いだけなので、実はそれほど難しい制度ではありません。

制度内容に関する詳細については、以下の資料を参考にして頂ければ理解できるのではないでしょうか?

また、厚生労働省HPの「人材開発支援助成金」ページでも様々な情報を掲載しています。

建設業界の労働人口減少や人手不足解消のために、ぜひ、この「特定訓練コース」を検討してみてはいかがでしょうか?

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