横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
近年、情報の民主化と収入の多様化が進展し、多くの人々がペーパーアセットを活用して資産を築き、小金持ちを目指すことが最適解の1つとなっています。
若いZ世代は、せどりやYouTubeなどの社会的価値が低い職業に傾倒する一方で、3K(きつい、汚い、危険)の建設業界で働く人々は今後急速に減少するでしょう。
稼ぎ方は何でもよいというこの地獄のような状況において、不人気な建設業界は大きな変革をしなくてはなりません。
本記事では、今後の建設業の熟練者がどのようにキャリアを転換させるべきなのか考察します。
目次
人材確保のための新たな職務分担
建設業は少子高齢化の影響によって深刻な人材不足に陥っています。
さらに、元請けからの厳しい指値も影響し、建設業従事者の実質賃金も上がりにくい状況です。
このような状況下では、建設業で働くメリットは少なくなりつつあります。
日本の建設業界で働くメリットが大きいのは、外国人だけになってしまうかもしれません。
今後の建設業では、外国人の方々と働く基盤を作り上げる必要があり、外国人とうまくコミュニケーションできない日本人労働者は淘汰されてしまう可能性もあります。
現場で作業する方が外国人であり、彼らの母国語を話せる外国人の方がうまくコントロールできるかもしれないからです。
特に、技能の足りない外国人実習生を罵倒し、いわゆる「背中を見て学習しろ」的な熟練の方は、若手のコントロールができないので細々と一人で作業する事しかできず、企業では徐々に評価されなくなってしまうでしょう。
J3相当の等級職は上位(技術・人文知識・国際業務)のビザを持つ外国人に任せる
J3の等級内容の「積極的に関係者を巻き込み、周囲のメンバーを支援する」とは、鉄筋工事でいえば、鉄筋の組立順序や重要な検査項目(定着長さ、重ね継手長さ)、墨・定着起点、配筋順序、配筋の上下関係、段取り筋の配筋等を正確に理解することです。
これらの専門的な知識を持っていなければ、下位の作業者をうまくコントロールすることはできません。
技術、人文知識、国際業務のビザを保有できる外国人人材は、勉強熱心でまじめな性格の方が多く、上記の専門用語の理解をすることが可能でしょう。
J3相当の等級職には、技術、人文知識、国際業務のビザを保有している外国人を配置させることが適切と考えます。
J1およびJ2相当の等級職は技能実習生の外国人に任せる
一方で、J1およびJ2の作業のような肉体的な負担が大きい作業に関しては、技能実習生に任せるのが良いと考えます。
これらのJ1およびJ2の作業を今からやり始める日本人はほとんどいない為、日本と外国との物価差のメリットを享受できる外国人実習生が適任だと思います。
多くの外国人実習生は、日本でいうところの小学生低学年レベルの常識と知識レベルしか持ち合わせていません。
彼らの多くは母国で多額の借金をし、出稼ぎ労働が目的で来日します。
彼らにJ3等級に期待される専門知識を身に着けてもらうことは、ほとんど不可能と考えてよいでしょう。(残念ながらこれが現実です)
中には、意欲的に勉強を開始してN2まで取得する実習生もいますが、そのような方はとても稀です。
J1やJ2の作業内容は機械化、ユニット化・単純化し、ミスなく作業できるようにする
建設業界では、一部の専門工事も単純化の道を進むことが不可避です。
高度な技術を要する一部の作業は、機械化や自動化によって効率的に実行できるようになります。
鉄筋工事でいえば、J1やJ2の作業内容とは、鉄筋の結束や材料の小運搬です。
鉄筋の結束に関しては、ツインタイヤの使用が普及していますが、材料の小運搬に関しては、玉掛の資格が必要であったり、図面を読み取る必要が出てきたりと、J3の分野にも干渉してきてしまいます。
可能であれば、ベースや柱、梁を工場で先組みしてしまう、等の対応が必要になってくるでしょう。
技能をもつ熟練者はどう対応すべきか?
では、M1以上の技能を持っている熟練者は、今後どのように働き方を変えるべきでしょうか?
死ぬまで現場仕事をするような働き方は辞め、J3の若手外国人を管理することをメインの仕事にする
熟練作業者の多くは、長年にわたり現場での技術を磨いてきました。
その技能や経験は本当に素晴らしいもので、若手がそう簡単にマネできるものではありません。
ただ、熟練作業者が高齢化したときに、体が動かなくなるまで現場で働き続けるのではなく、若手外国人を指導・管理する役割に転身することが重要だと考えます。
経験を次世代に継承し、新たな才能を育てることが業界の持続につながります。
自身の経験を動画などの資料にまとめ、外国人用に資料を修正して来日前のJ3人材に学習してもらうなどのITの利活用も効果的かと思います。
熟練者の技能の情報が民主化されていなかったひと昔では、「背中をみて学べ」のやり方でも問題ありませんでしたが、現代は違います。
Z世代は外国人であってもスマホで情報収集し、youtubeを学習のきっかけにすることが多くなりました。
時代の流れに沿って、熟練者は仕事内容をシフトさせていく必要があります。
貴重な経験をできるだけデータ化し、AI開発に取り組むことが急務
chatGPTのような生成AIの台頭は、世の中のあらゆる業務に革新的なインパクトをもたらしています。
少子高齢化が深刻な日本では、AIの利活用が今後必須になってきます。
22年の出生数は80万人割れ、出生率は過去最低の1.26(厚労省人口動態統計)
貴重な経験をデータ化し、AI開発に取り組むことは、現代社会において不可欠であり、日本政府は中小企業のこの活動を推進すべく毎年数千億の補助金を交付しています。
人材不足が深刻な建設業では、補助金を活用してリスクを下げ、AI開発に取り組むことが必須になるでしょう。
熟練者は、この背景を理解し、開発者と協力しながらキャリアを転換する必要があると考えます。
まとめ
日本のZ世代は中小企業にとって最悪の世代です。
情報の民主化と収入の多様化がすすんだ現代では、Z世代の彼らにとってお金を稼ぐ方法は不問であり、ペーパーアセットを活用して資産を築いて小金持ちを目指すことが彼らにとっての最適解になっています。
Z世代のような若手が建設業で働くメリットは小さいため、建設業で働くのは外国人だけになるのは間違いないでしょう。
その時に、熟練者は外国人をコントロールするキャリアに転換する必要があります。
国が交付する補助金を活用しながら、熟練者のキャリア転換を効率的に実施することが今の中小企業に求められています。