横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
建設業界では技能者の高齢化が進んでいる中、将来の担い手の確保や育成が課題となっています。
その解決策のひとつとして女性の活躍も挙げられています。
この記事では、建設業界で女性を雇用するメリットと、女性を雇用するのに必要な環境について見ていきます。
目次
建設業界で働く女性の割合
建設業界で働く現状の女性の割合をみていきましょう。
女性就業者の割合は約15%:増加傾向
建設業全体の女性就業者の割合は約15%となっており、その多くが事務系職員です。
平成26年の集計では、建設業の現場で働く女性技術者・技能者の数は約10万人になります。
建設業の女性技術者・技能者の割合は3%であり、製造業の平均値である30%や全産業の平均値である43%と比べて大きく低い状況です。
しかし、平成23年度より建設業界で働く女性の割合は増えてきています。
男性中心の業界で女性の活躍が遅れをとっているイメージであった建設業界でも違った動きが出てきました。
さらに、今後建設業で働く人数も増加傾向にあるでしょう。
なぜなら、大学の土木や建築系の学科で学ぶ女性の割合も増えているからです。
工学系学科では女性の入学者が15%程度なのに対して、土木・建築学科では20%程度になっています。
建築分野の学科では25%ほどの割合になっていて、建築学科の女性の割合は増えつつあります。
誰でも働ける環境作りについて
女性を雇用することはメリットも多くあります。
例えば、女性ならではの視点が取り入れられる・人材不足に対応できる・助成金が利用できる、といったメリットです。
女性目線で業務改善
女性の視点が建設現場に入れば、男性社会である建設業界に新たな視点で管理が可能になります。
工程調整や安全管理などでは違った視点から調整することで、工事の進捗を考えることが可能です。
安全管理ではちょっとした気づきが労働災害の予防に繋がるため、複数の違った目線から管理することは事故防止に効果的でしょう。
例えば、通常の業務で10kgの荷物を手運びで運搬している業務があったとします。
男性であれば力技で運搬ができますが、女性は男性のようにはいきません。
そこで、新たに運搬通路を用意してフォークリフトを導入したり、10kgではなく5kg単位の荷物の作り方にしたりと作業の方法はたくさん考えられます。
このような業務改善提案によって、今まで行っていた作業の効率化が進む可能性は十分考えられます。
誰でも同等に結果を出せる環境=人材の確保につながる
女性でも資格を持っていれば男女の差は関係ありません。
土木や建築工事では施工管理や技能検定など多くの資格を取得するので、産休や育休などで休みを取っても資格があれば他の現場や会社での後方支援など多くの仕事があります。
もし退職したとしても資格取得者への求人は多いので、キャリアを変更しても資格があればまた機会はあります。
建設現場といえば、特に専門工事業の場合は肉体労働とのイメージが先行しますが、上記の例のように業務改善の方法はたくさんあります。
女性でも作業できるように企業側が作業環境を整える努力をする必要があります。
作業の細分化
建設業では作業員が作業されている一方、施工管理を行う技術者は机上の業務を行っています。
施工管理の場合、工程管理や品質管理、安全管理などの仕事を細分化することが可能です。
施工管理は小さな現場では一人で行いますが、大きな現場になるとチームで施工管理を行います。
また、スポットでイレギュラーな対処や書類整理、施主との調整や関係工事会社との調整などもあり、現場作業だけではないため細分化することでそれぞれが得意な分野で活躍できるでしょう。
福利厚生の充実
大手ゼネコンや大企業では産休や育休などの制度が整備されている企業もあります。
しかし、中小企業などではまだ進んでいない企業も多いようです。
企業でもどのように対処して良いのかがわからず、整備が進んでいないことが挙げられます。
制度整備は女性に限った話ではありませんが、積極的に女性を採用しようとするのであれば、福利厚生が整っているにこしたことはありません。
トイレの整備
男性社会の建設業界では、トイレ1つとっても女性用の整備が必要です。
労働環境が古いままだと、トイレや更衣室などが男性のみが使うことを考えられて配置されていることがあります。
最近では、トイレや更衣室などは整備が進んできていますが、女性の意見も聞きながら進めていくことが必要でしょう。
女性だけに限らず、長時間労働の防止対策も必要になります。国土交通省でも適正な休日を取ることができるような工期設定を行って工事の発注が始まりました。
まとめ
この記事では、誰でも働ける環境作り、特に女性が働きやすい環境づくりについて書きました。
建設業の女性技術者・技能者の割合は3%であり、製造業の平均値である30%や全産業の平均値である43%と比べて大きく低い状況です。
そんな建設業であっても女性が活躍できる環境をどう整備するかが企業側の課題になってきます。
特に、作業の細分化・会社の制度整備・職場環境の整備、といった作業環境の整備が必要です。