横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
何も前提知識を持っていない若手の外国人実習生に対して、どのように鉄筋施工を教えたらよいのか、どのような知識から教えたらよいのか、毎日悩んでいます。
現場からはよく、「実習生がかぶりについて全く理解していなくて困る」という意見を頂きます。
「かぶり厚さを確保することは重要だ。土に接している部分と接していない部分でかぶり厚さは変化する」とただ単に実習生に伝えても、彼らはその重要性をなかなかイメージできない場合が多いです。
この記事ではかぶり厚さについてできるだけわかりやすく噛み砕いて解説します。
目次
かぶり厚さとは?(concrete cover)
かぶり厚さに関して調べ始めると、意外にも非常に学問的な話が多く、かぶり厚さについて詳細に理解するには学問的な論文を何個も読む必要が出てきてしまいます。
しかし、実務ではそのような学問的な理解は不必要なので、簡単なイメージと管理基準を押さえておきましょう。
人間でいうと皮膚のようなもの
かぶり厚さは、鉄筋を保護するために不可欠です。
かぶり厚さが確保されたコンクリートは、衝撃や摩耗、湿気の侵入、化学物質、さらに、悪天候から鉄筋を守る役割を持ちます。
そのため、かぶり厚さが確保されたコンクリートは高密度で、耐摩耗性があり、強度があり、透過性が低い必要があります。
かぶり厚さが確保されたコンクリートは、構造物の靭性と耐久性に非常に重要な役割を果たします。
このような役割は、人間の皮膚が肉体や他の部分を保護する上で果たす役割と類似しています。
かぶり厚さは鉄筋を外部の環境から保護し、腐食を防止する役割を果たす
当たり前のようにかぶり厚さについて述べていますが、コンクリートのかぶり厚さが重要視され始めたのは1960年代のことです。
1960年代以降、鉄筋コンクリートの耐久性や腐食対策に関する研究が進み、かぶり厚さの重要性がより強調されるようになりました。
特に、塩害や化学物質による腐食が問題視され、かぶり厚さが保護対策の一環として注目されました。
コンクリートのかぶり厚さは、鉄筋を外部の環境から保護し、腐食を防止する役割を果たします。
鉄筋は水や湿気、化学物質などの侵入によって腐食し、損傷や弱体化を引き起こす可能性があります。
適切なかぶり厚さが確保されることで、鉄筋は長期間にわたって耐久性を維持し、構造物の安全性を確保することができるようになるのです。
鉄筋施工でかぶり厚さを確保する方法
柱や梁、スラブなど鉄筋が配筋されている箇所では必ずコンクリートのかぶり厚さを確保する必要があります。
鉄筋の適切な配置を維持しつつコンクリートのかぶり厚さを確保するためには、コンクリートブロックやスペーサーを使用します。
「墨」を理解し、現場のリーダーと適切なかぶり厚さを共有する
コンクリートのかぶり厚さを理解するには、基準となる位置(コンクリート面)を理解する必要があります。
現場では、コンクリート面の位置は測量作業によってマーキングされており、この位置を一般的に「墨(sumi)」と呼びます。
この墨は、写真のように線で表示されているものもあれば、実物のコンクリート面や鋼矢板や軽量鉄骨、型枠面だったりと様々です。
これらの墨から何mm確保して鉄筋を配筋するのが適切なのか、現場のリーダーと確認しましょう。
かぶり厚さはいくつが適切ですか?(What is the appropriate concrete cover thickness?)
などと墨の位置を事前に確認しておくことが重要
土に接している部分と土に接していない部分でかぶり厚さが変わる
コンクリートが土に直接接している場所では、土壌中に存在する湿度や化学物質、その他の腐食要因による影響を受けやすくなります。
そのため、埋め込まれた鉄筋の追加保護を目的として、一般的により厚いかぶり厚さが推奨されます。
より厚いかぶり厚さは、鉄筋の腐食を防止し、鉄筋コンクリート構造物の耐久性を維持する役割を果たします。
土間コンクリートや基礎配筋をする際は、かぶり厚さは60mmや70mmと大きくなることを覚えておきましょう。
土間コンクリートや基礎配筋をする際は、かぶり厚さは60mmや70mmと大きくなる
現場のリーダーとかぶり厚さを確認する
コンクリートブロック
ベースやスラブのかぶり厚さを確保するにはコンクリートブロックを使用します。
コンクリートブロックには、456と567の2種類があることを覚えておきましょう。
プラスチックスペーサー
柱や梁、壁のかぶり厚さを確保するにはプラスチックスペーサーを利用します。
まとめ
この記事では若手鉄筋技能士が理解すべきコンクリートのかぶり厚さについて解説しました。
上記の内容を最低限の基礎知識として、現場で経験を重ねていきましょう。