横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
経験年数が1年未満の若手技能者がつまづきやすいポイントの1つに「定着」「重ね継手長さ」の概念があります。
スラブ配筋をする際は、「定着」と「重ね継手長さ」を理解していなければ正確な配筋はできません。
この記事では、2段スラブ配筋における定着について詳しく解説していきます。
目次
スラブについて
てつまぐではスラブに関する記事を何個か記載しています。
スラブ配筋を理解するにあたって、スラブの正しい定義と、「一体式構造」という言葉をまずは理解する必要があります。
初見で「定着」と「重ね継手長さ」を理解して配筋するのは困難
僕は一級鉄筋技能士の資格を持っていますが、配筋作業は本当に難しい作業だと感じます。
熟練技能者は図面を見ただけでイメージでき、効率の良い配筋方法を指示することができます。
複数人の作業状況を把握し、的確な指示をして大人数をコントロールすることは素晴らしい能力です。
しかしながら、この能力は若手技能者がすぐに身に着けられる能力ではありません。
現場で実際に作業してみるとわかりますが、綺麗に且つ正確に且つ効率的に配筋するのはとても難しいことです。
1年未満の若手技能者は何もわからないまま現場で配筋作業経験を積むのが一般的ですが、おそらく最初につまづくポイントは「定着」と「重ね継手長さ」だと思います。
1年未満の若手技能者は、適切な定着長さや重ね継手長さを確保しないまま結束し、熟練者に間違いを指摘され、再度配筋することを繰り返しながら経験を積んでいきます。
一般的には一人前に配筋できるまで約3年程度の時間が必要ですが、熟練者不足が深刻な鉄筋業界では、この技能ギャップを短期間で解消する取り組みが重要になっていると考えます。
2段スラブの梁内折り曲げ定着
この記事では、土間スラブではなく、スラブ用型枠(スタイロフォーム)が設置されており、且つスパン毎に区切られたスラブの例を見ていきます。
スラブ下筋はL3、スラブ上筋はL2
参考:配筋要領
スラブは一体式構造になる必要があるので、梁や隣接するスラブと適切な定着長さを確保する必要があります。
2段スラブの場合、下筋に必要な定着長さはL3、上筋に必要な定着長さはL2です。
これらの知識を事前に持っていないと、配筋する際に適切な材料運搬ができなかったり、定着長さを間違えたりしてしまいます。
2段両面スラブの定着
隣接するスラブが存在する場合の定着長さを確認しましょう。
どの位置から適切な定着長さを確保しなければならないのか理解しよう
参考:配筋要領
隣接するスラブと定着させる場合も、下筋はL3、上筋はL2の定着を確保します。
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D13の場合 L3:150mm以上 L2:13*35=455mm以上 |
L3で150mmぴったりに拾い出しをする方もいれば、L3を200mmで計算して拾い出す方もいます。
L3を150mmぴったりで拾い出しをすれば余計な鉄筋を使用せずに配筋することができるので経済的ですが、定着長さを間違えて配筋してしまうと定着長さが足りずに再配筋する必要が出るかもしれません。
一方、L3を200mmで計算しておけば、若手技能者が少し配筋を間違えたとしても適切な定着長さが不足することを防ぐことができますが、その分鉄筋重量は大きくなってしまいます。
定着長さを何mmにしているのか事前に打ち合わせをすることも大事な配筋手順の1つです。
スラブ下筋はL3、スラブ上筋はL2の定着長さが必要
定着長さを何mmにしているのか事前に打ち合わせを行い、若手技能者でも理解できるように説明する
まとめ
この記事では、2段スラブ配筋における定着について解説しました。
定着長さや重ね継手長さは適切な配筋の基本概念ですが、若手技能者にとってはつまづきやすいポイントの1つです。
定着長さを何mmにしているのか事前に打ち合わせを行い、若手技能者でも理解できるように説明することが効率的な配筋に繋がります。