横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
鉄筋工事業者は多種類の部材を組み合わせて施工します。
熟練者になると図面と部材を頭の中でイメージし、施工の順序や効率の良い配筋方法を考えることができます。
熟練の技能者のように現場経験が豊富な設計者は、鉄筋部材の納まりのポイントを理解しているので施工前の段階で施工業者に指示し、施工を効率よく進めることができます。
しかし、若手技能者や鉄筋工事に精通していない設計者は鉄筋部材の納まりを明確にイメージできません。
彼らは実際に施工されたものを検査した後に再施工を指示するので、揉め事に発展することも建設業界では日常茶飯事ではないでしょうか。
この記事では、地中梁のコーナー部配筋の納まりについて施工側と設計側のよくある認識のギャップについて見ていきましょう。
目次
地中梁の施工について
まず地中梁の鉄筋工事について確認しましょう。
地中梁の主筋(追い出し筋、中間材、追い終い筋)について理解できているでしょうか?
鉄筋工事の専門業者は構造図に記載がないことは施工しない
鉄筋工事業者は構造図や特記仕様書に沿って鉄筋工事の施工を行います。
これらの図面に記載されていないことは基本的には施工しないというのが一般的です。
図面通りに施工して不備があるのであれば、それは設計側に不備があるという言い分ですね。
地中梁主筋のアンカーは直角に配筋することが基本
地中梁の主筋は90°に折り曲げ定着させることが基本です。
梁の90°折り曲げ定着する鉄筋の定着長さは、JASS5によればL2、La(投影定着長さ)と規定されています。
地中梁のコーナー部配筋の納まりについて
設計者のイメージと実際の施工でギャップが生じてしまう具体例について見ていきましょう。
写真は実際の地中梁のコーナー部の配筋の様子ですが、確かに図面に記載されているような綺麗な配筋ではありませんね。
梁せいに対して梁主筋のアンカーが長すぎる時がある
上記に示したように、梁の主筋は90°に折り曲げ定着させる必要があります。
梁の主筋にD25やD29のように太い鉄筋が使用され、且つ梁せいが小さい場合、梁主筋のアンカーの長さが長すぎてコーナー部に収まらない場合があります。
このような場合は、写真のように梁主筋の上筋と下筋を斜めに配筋する必要が出てきてしまいます。
梁主筋を斜めにしないと主筋が納まらない時に無筋に見える箇所がでてきてしまう
梁主筋を斜めにして配筋する場合、確かに無筋の部分が発生しているように見えますね。
このような無筋に見える部分に対し、あらかじめ構造図や特記仕様書に記載して置いたり、施工前の段階で指示したりと対策を打てばなにも問題ありません。
しかしながら、施工が終わった段階で無筋に見える部分に対して、無償で補強筋を追加してほしいとか、無償でやり直してほしいとか指示があると施工業者はカンカンに怒ります。
構造図や特記仕様書に記載が無ければ鉄筋工事業者が追加で施工する必要は無いからです。
施工上問題が発生しそうな部分に対して、あらかじめ構造図や特記仕様書に記載して置いたり、施工前の段階で鉄筋工事業者に指示していれば問題は無い
施工が終わった段階で無償で再施工の指示をされても対応できない
無筋に見える部分に補強筋を入れる設計者はほとんどいませんが、協議の上仕方なく補強筋を入れる場合もあります。
まとめ
この記事では、地中梁のコーナー部配筋の納まりについて施工側と設計側の認識のギャップについて解説しました。
施工上問題が発生しそうな部分に対しては、あらかじめ構造図や特記仕様書に記載して置いたり、施工前の段階で鉄筋工事業者に相談することが大切だと考えます。
建設プロジェクトチーム全体で効率の良い施工を目指していきましょう。