横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
先代もしくは現社長と私のような二代目では意見が分かれることが多々ありますが、これが顕著に表れるのは設備投資に関してだと思います。
私自身、オーバーホールと設備投資について非常に悩んで考えたのでこの記事で紹介しようと思います。
目次
オーバーホールとは?
まずはオーバーホールについて見ていきましょう。
一般的に、オーバーホールとは機械を部品単位まで分解・清掃・再組み立てを行い新品時の性能状態に戻す作業のことです。
オーバーホールには2つの場合があります。
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1.修繕費として経費計上する場合 2.設備投資として減価償却費に計上する場合 |
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
修繕費として経費計上する場合
1つ目は修繕費として経費計上する場合です。
修繕費とは、一般的に建物や機械や車両などの有形固定資産を修理するための費用のことです。
オーバーホール費用を単純に経費として計上するので、設備投資(付加価値の向上)にはなりません。
設備投資として減価償却費に計上する場合
2つ目は減価償却費に計上する場合です。
減価償却とは、長期間にわたって使用される固定資産の取得に要した支出を、その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続きのことです。
会社の付加価値の向上とは「減価償却費+営業利益」のことなので、1.修繕費として経費計上する場合とは違い「生産性の向上につながる取り組み」だと言えるでしょう。
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付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費 生産性の向上=付加価値額の向上or革新的ビジネスの創出 |
参考:経産省:中小サービス事業者の 生産性向上のためのガイドライン
オーバーホールのポイント
では、オーバーホールをすべきなのはどのような場合なのか見ていきましょう。
その機械を使いこなせる熟練の作業員が継続して勤務し、機械の稼働率を確保できるかどうか
オーバーホールが有効的なのは、実際にその機械を使いこなすことができる熟練の作業員が存在している場合に限ります。
例えば、勤続20年以上の熟練の作業員が存在していて、その作業員がその機械を操作することで日々の生産性が高いレベルで維持されている場合です。
このような場合ではその機械のオーバーホールは非常に効果的だと言えるでしょう。
経験曲線:経験年数に比例して生産コストは低下する
参考:久保公認会計士事務所
ボストン・コンサルティング・グループが提唱した経験曲線によれば経験年数に比例して生産コストは下がります。
熟練の作業員が使用し続ける機械を維持した方が高性能の機械を導入した場合よりもコストが低くなる場合があります。
むやみやたらに高性能の機械を導入すれば良いというわけではない点が非常に難しいところです。
会社の売上高が好調で、その機械が高稼働であれば節税対策として有効な手段となる
会社の売上高が堅調に推移し、熟練の作業員が継続してその機械を使用してくれるのであれば、低い生産コストを維持することができます。
この場合はオーバーホールにかかる費用を修繕費として経費計上させることができるので、結果として節税対策にもなります。
オーバーホールが有効となる条件
a)その機械を使いこなせる熟練作業員が継続して勤務できる
b)会社の売上高が堅調に推移している
c)その機械の稼働率を高く維持することができる
設備投資のポイント
オーバーホールではなく、設備投資をすべきなのはどのような場合なのか見ていきましょう。
熟練の作業員がいなくなってしまう場合はオーバーホールの意味はない
オーバーホールが有効なのは熟練の作業員が継続して勤務できる場合に限ります。
熟練の作業員が継続して勤務できない場合は、その機械を扱える人材がいなくなってしまうため生産コストは高くなる傾向にあります。
このような場合は、技能ギャップを解消できるような設備投資をした方が良い傾向にあります。
導入する最先端の機械の稼働率が高くなるとは限らない。使用を拒否されることもある
機械が新しくなったとしても、その機械の稼働率が0%だと全く意味がありません。
作業員が新しい機械を使いこなせるまでには経験値が必要です。
例えば、10年間同じ機械を使用し続けていた熟練の作業員に対して、最先端の機械を今までと同じように扱うように指示しても生産性は思うように上がりません。
びっくりするかもしれませんが、「新しい機械がもったいなくて触れない」と新しい機械を使用することを拒否する場合もあります。
機械の導入を決定した経営層からすれば理解不能ですが、実際に機械を扱う作業者にとってはとてもストレスがかかる事なのです。
最先端の機械を導入することが悪影響を及ぼすこともあるということも考慮に入れておきましょう。
設備投資が有効となる条件
a)その機械を導入することで技能ギャップを解消することができる
b)その機械の稼働率を高く維持できる綿密な計画がある
c)熟練作業員の生産性に悪影響を及ぼさない
以上のように、オーバーホールと設備投資のどっちが適切なのかは会社によってことなり、経営判断を間違うと生産性が逆に低下することもあるので慎重に判断することが必要です。
設備投資のリスクを下げる方法について
では設備投資のリスクはどのように小さくすれば良いのでしょうか?
リスクを小さくする手段は大きく2つあると考えます。
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1.補助金を利用する 2.費用対効果が大きいAIなどを利用する |
補助金を利用する(ものづくり補助金)
リスクを小さくする王道の方法は補助金を利用することです。
ものづくり補助金の場合、設備投資金額の2/3を補助金で賄うことができるのでリスクを実質1/3にすることができます。
取得価格が1000万円前後の機械の場合、オーバーホールにかかる費用はおよそ300万円前後かかります。
補助金を利用することでオーバーホールのコストと同程度で新規の設備投資をすることができるのでリスクを最小限に抑えることができることになります。
費用対効果が大きいAIなどを利用する
2つめの方法はAIを利用することです。
設備投資をする主な目的は生産性を向上させることですが、これは単に単位時間当たりの完成品数量を増やすことだけではありません。
仕損品やミスを減らすことで生産性を向上させることも十分可能です。
AIを使用すれば、熟練の作業者が使いこなせる機械を使用しつつ、ミスや精度を向上させて業務フローを再構築することができます。
一般的な設備投資だと1000万程度の費用が必要なのに対して、AIであれば数十万円の費用で生産性を数%向上させることができます。
われわれ中小企業はAI導入を実感できる場が存在しないため、(技術に触れる、同業他社の事例を学ぶ場がない)自分事としてとらえることができません。
「現在のAI技術では目的達成が困難そう」「費用対効果が分からない」AIの機能や費用対効果に関する詳細な実例を知りたいというのが中小企業のニーズだと思います。
AIを用いた設備投資の方法も検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
この記事ではオーバーホールと設備投資について詳しく解説しました。
chatGPTなどAIは私たちの生活にどんどん浸透してきています。
一般的な設備投資だけではなくAIを利用した設備投資も検討してみてはいかがでしょうか?