横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
長尺の鉄筋を使用した柱や梁の配筋の場合、鉄筋同士を接合させるためにガス圧接溶接やエンクローズ溶接が用いられます。
接合部分が健全であるかどうかを検査するには2つの方法があります。
それが「全数検査」と「抜き取り試験」です。
この記事では、柱や梁の配筋に必須のガス圧接溶接とテストピースについて詳しく解説していきます。
目次
梁配筋時の圧接による縮み代について
まずは梁の配筋方法とガス圧接についてみていきます。
ガス圧接すると1D(鉄筋径分)梁が縮む
ガス圧接箇所の配筋の注意点は、ガス圧接すると鉄筋径分縮んでしまうことです。
そのため、圧接後の寸法が設計図と一致するように、圧接箇所ごとに鉄筋径程度の縮み代を見込んで加工、配筋することになります。
この縮み代を見込まないと定着寸法の不足を招くことになり、折り曲げ定着がある場合には直行部材の鉄筋の配筋の乱れを招くことになります。
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1.圧接の縮み代を見込んでいない場合の拾い出し (9150-305+1000)+9150+ (9150-305+1000)=28840mmm #1000はD25*40d 中間材9000mmを2本使うとすれば、 28840mm-9000*2=10840mm 6000mm(追い出し筋)と4840mm(追い終い筋)で圧接の位置OK? 2.圧接の縮み代を見込んでいる場合の拾い出し (9150-305+1000)+9150+ (9150-305+1000)+25+25+25=28915mmm #1000はD25*40d 中間材9000mmを2本使うとすれば、 28915mm-9000*2=10915mm 6000mm(追い出し筋)と4915mm(追い終い筋)で圧接の位置OK? 両者で圧接箇所分(3カ所で約75mm)の差が生じる! |
エンクローズ溶接は梁が縮まない方法だが、高コスト
ガス圧接の場合、鉄筋を圧着させるために鉄筋が1d(鉄筋径)分引っ張られますが、エンクローズ溶接の場合は鉄筋が引っ張られることはありません。
一般的にエンクローズ溶接はガス圧接よりもコストが高くなります。
ガス圧接の検査について
続いてガス圧接の検査方法についてみていきましょう。
ガス圧接の検査方法には「全数検査」と「抜き取り検査」がある
ガス圧接の検査には「全数検査」と「抜き取り検査」があります。
全数検査は、圧接完了直後の外観検査です。
抜き取り検査は全数検査の結果が合格とされた圧接部を対象として行う検査です。
抜き取り検査には非破壊検査である超音波探傷試験と破壊検査である引張試験があります。
ガス圧接検査の2つ
1.全数検査
→外観検査
2.抜き取り検査
→a)非破壊検査=超音波探傷試験
→b)破壊検査=引張試験
非破壊検査である超音波探傷試験は、鉄筋を抜き取る事なく圧接部に超音波を利用して欠陥がないかを判定する試験方法です。
どちらで試験をするかは、監理者の判断になりますので確認をしましょう。
テストピースとは圧接部の鉄筋を引張試験用に抜き取った部分のこと
実際に現場で圧接した鉄筋を引張試験にかけて、適切に圧接されているかを確かめます。
抜き取った圧接部の鉄筋の事を「テストピース」と呼びます。
引張試験用に切断した部分は、500mm~700mm程度の別の鉄筋を用意し、再度ガス圧接をして復旧させます。
まとめ
この記事では、柱や梁の配筋に必須のガス圧接溶接とテストピースについて解説しました。
テストピースというとコンクリートの圧縮強度を確認するための供試体を指す言葉でもあります。
鉄筋工事におけるテストピースは、圧接部の鉄筋を引張試験用に抜き取った部分のことと理解しておきましょう。