横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
日本の中小企業は慢性的な人手不足であり、特に建設業は「人材確保」が喫緊の課題となっています。
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中で、原油価格や電気・ガス料金を含むあらゆるモノの値段が高騰しており、建設資材原価も20%以上高騰しています。
厳しい情勢の中で設備投資をすることはリスクが伴いますが、生産性を向上させるには設備投資は必須です。
この記事では設備投資リスクを低減させる補助金の獲得方法を具体的に紹介していきます。
目次
補助金を活用しよう
直接経費が20%前後高騰しているにもかかわらず、元請けからの指値は非常に厳しい状況が続いています。
見積金額から10万円単位で差引されるのが当たり前の状況を、なんとか企業努力で凌いでいく事が必須になっています。
しかしながら、それは簡単なことではありません。
MAX結束機を利活用すれば40%以上の生産性向上が見込める
我々中小企業は、直接経費の高騰分以上に生産性を向上させなければ経営が行き詰ってしまいます。
生産性を向上させるには設備投資が一番簡単な方法です。
特に鉄筋工事会社のように人材不足が深刻で、粗利が少ない会社ではなんとか現場の施工生産性を上げる取り組みが必須になります。
鉄筋の結束作業や、基礎エースの打ち込み作業、鉄筋の切断作業などの単純作業に注目し、その作業を楽にするような設備を積極的に導入しましょう。
悪徳な成功報酬型手数料ビジネスには絶対に手を出してはいけない
高い採択率を謳った中小企業向けのコンサルサービスがたくさんありますが、これに騙されてはいけません。
実は補助金の申請はとても簡単で、ほとんどの補助金は30%以上の高い採択率で恩恵を受けることができます。
コンサルに任せると成功報酬の20%程度の高額の手数料を取られてしまいます。
100万円の補助金経費を申請した場合、この手数料20%(20万円)で新しいMAX結束機を1台購入してもおつりがくる金額です。
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悪徳コンサルの例 採択されるまで報酬はいただきません! 報酬総額(税別)は以下のとおり 採択金額の A.3,000万円以下の部分の20% B.3,000万円超、7,000万円以下の部分の15% C.7,000万円超の部分の10% |
実は非常に面倒で困難なのは申請書類ではなくその後の「交付申請作業」であり、補助金事務局とやり取りをして実際に補助金を受給する書類を作成する作業に非常に時間がかかります。
コンサルに手を出してしまうと「交付申請作業」は別途料金になってしまい、結局補助金交付金額のほとんどが無くなってしまったというパターンが多いようなので注意しましょう。
一流のコンサル資料は経産省HPで誰でも閲覧可能
「コンサルに頼めば分かりやすい資料を作成してくれるからその資料は社内でも使えるから役に立つ」と思うかもしれません。
しかし、中小企業を相手にしている民間のコンサルタントのほとんどは三流のコンサルタントであり、資料作成のレベルも素人と変わりません。
そのような民間のコンサルタントよりも商工会議所に在籍している中小企業診断士の方の方が優秀で、とても親身に対応してくれる場合もあります。
一流のコンサルタントの資料は経済産業省のHPで参考できるので、こちらの資料を参考に自分で資料を作成しましょう。
具体的な記入例
具体的な記入例を見ていきましょう。
実際にMAX鉄筋結束機を申請して採択された例です。
MAX鉄筋結束機ではなく他の機械にも代用できるので参考にしてください。
企業概要
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弊社は、1989年の創業以来鉄筋加工と鉄筋工事一式を請け負うBtoB型の建設会社である。 弊社が製造している製品は、建設関連が100%を占めており、そのほとんどが、群馬県や埼玉県の地元総合建設業者からの受注である。 既存の取引先からは高い評価を受けており、品質、コスト、顧客対応力を強みとして事業を行っている。 「地元地域の発展に貢献し、勇気ある挑戦と付加価値の創造で、顧客の信頼を獲得する」を企業理念として掲げ、対象の構造物を老人ホーム等のRC構造物に集中し、適切な設備投資をすることでコストリーダーシップを発揮している。 近年は、少子高齢化に伴い、老人ホームや低層住宅(以下、RC構造物)に特有の鉄筋工事の受注が増加しており、主要顧客もこの需要に対しての対応が進んでいる。 弊社は、RC構造物の加工コストを下げるために、専用の鉄筋加工機械を導入し、施工ノウハウを積み重ねることで顧客の低コスト対応ニーズに応えてきた。 直近期の売上高は○○百万である。前年比+○○%となり、少しずつ売上高は回復の傾向にある。しかしながら、緊急事態宣言によるサプライチェーンの分断は、建設材料原価の高騰の原因となっており、特に、鋼材関係の異形棒鋼の原価は2020年から2022年にかけて41%も上昇し、利益を逼迫している。 売上高増加率<限界利益増加率<経常利益増加率が弊社の目標である。 売上高増加率を上回る利益率を上げなければ会社は膨張するだけで、成長することはないと考えられる。 弊社では、理想の成長バランスを人件費増加率<売上高増加率<限界利益率<経常利益増加率と定義している。 しかしながら、新型コロナウィルス感染症の影響により、その成長バランスは崩れつつある。 |
顧客ニーズと市場の動向
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弊社が事業の軸としている建設業界の市場規模は約60兆円で安定しているが、新型コロナウィルス感染症の拡大は、企業の設備投資心理に影響を与えており、先行きは不透明になっている。 建設業は特に慢性的な人手不足であるが、震災復興や万博需要で求人倍率は上昇傾向にあるなど「人材確保」が喫緊の課題となっている。 主要ゼネコン 12 社の業績は2019年以降徐々に軟化している。 完成工事粗利率は、2018 年3月期の 13%強をピークに緩やかに低下しており、2022年3月期は 10% 程度となる見込みである。 また、緊急事態宣言によるサプライチェーンの分断は、建設材料原価の高騰の原因となっている。 特に、鋼材関係の異形棒鋼の原価は2020年5月の66,000(円/t)から2022年5月の119,000(円/t)へと80%以上高騰し、建設業事業者の利益を逼迫している。 本事業のきっかけは、主要顧客(総合建設会社)からの要望があげられる。 新型コロナウィルス感染症がEC需要(B to C)を急速に押し上げている為、大型の物流倉庫の鉄筋工事の受注が増加している。 物販系のEC市場(B to C)は近年右肩上がりに増加しており、コロナ禍でさらに拍車がかかった。 2021年の市場規模は20兆6,950億円と前年比7.35%も増大している為、物流倉庫の発注量が増加してきており、主要顧客もこの需要に対しての対応が進んでいる。 |
自社や自社の提供する商品・サービスの強み
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弊社は、「RC構造物に特化した鉄筋工事におけるコストリーダーシップの発揮」をテーマにRC構造物の鉄筋工事の請負業を行っている。 2020年度の売上高は、地元の総合建設会社からの鉄筋工事請負が約10割である。 下記のノウハウや機能を自社で蓄積し、強みとしている。 |
SWOT分析
自社の現状を把握し、課題を発見する方法としてSWOT分析を使いこなしましょう。
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課題 1.如何にして弱みを強みに転換するか? 2.如何にして機会を利用して強みにできるか? 3.脅威を如何にして機会に転換できるか? |
生産性向上の取組内容
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RC構造物における鉄筋の結束作業は重労働であり、特に床における鉄筋の作業となると1日で何百カ所も結束する必要がある。 (手動鉄筋結束カ所の計算根拠) 8(時間/日・人工)*0.15*60*60/4(秒/1回あたりの結束時間)*作業効率0.3≒324(カ所・日・人工) 作業効率0.3は、若手従業員からのヒアリングにより算出した。 高齢の作業員だと腰の負担が大きく作業効率が約0.1となり、若手作業員と比較して30%作業効率が低下することが分かっている。 本事業では、新たにMAX鉄筋結束機RB-440T-B2CA/1440Aを2台購入し、若手技能者2名のスラブの施工効率の30%向上を図る。 本事業で購入する機械装置により、スラブの鉄筋施工作業における生産性の向上が期待できる。 作業効率(鉄筋の組み立て作業の歩掛り)は、0.3t/日の増加を目標にする。作業効率を向上させることで、新規受注分の作業量を補う。 新規取引先からの受注は年間約75t増加することが期待される。 (計算根拠) 現場作業効率 0.3(t/日)*25(日、月間出勤日数)*4(名)*12(ヶ月)*25,000(\鉄筋取り付け単価) =9,000,000(¥) 鉄筋数量にして年間約75t分の新規受注が可能 |
まとめ
この記事では小規模事業者持続化補助金を用いた少額の設備投資の具体例を紹介しました。
ものづくり補助金では少しレベルが上がり、自社での革新的な開発が必要になり、この開発にはデータ収集からのAI開発が王道パターンです。
補助金申請は思っている以上に簡単に獲得できるので、ぜひ参考にしてください。