横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
スラブの配筋は一様なピッチのシングル配筋やダブル配筋が一般的ですが、曲げモーメントが大きく生じているところに多く配筋し、曲げモーメントが小さいところには少ない配筋をする方法もあります。
これをトップ式スラブといいます。
この記事では、トップ式スラブについて説明していきます。
目次
スラブについて
まずは一般的なスラブについて押さえておきましょう。
一様な配筋方法が一般的
実際にスラブ配筋をしてみるとわかりますが、スラブ配筋は大量の鉄筋を小運搬する必要があり、同ピッチで鉄筋を並べて結束します。
同じ長さの材料で同じ間隔で設計されている単純な設計であればあるほど作業効率性が良いので、作業効率性を考慮して設計をするのであればスラブ配筋はできるだけ一様に設計されています。
その為、スラブ配筋ではシングル配筋でもダブル配筋でも@150などの一様なピッチの配筋が一般的です。
曲げモーメントの大きさに合わせてスラブの中央部と端部の配筋量を変える方法もある
構造計算上では部材に生じる曲げモーメントの大きさに合わせて配筋量を変えることが理論的で経済的な設計であり、これらを遵守している設計事務所も存在します。
確かに、論理的にはそれが正しい設計方法なのですが、人材不足が深刻な専門工事業者の実情を踏まえると「良い設計」とは言えないのではないでしょうか。
建設業界では人材不足が深刻化しています。
特に専門工事業者の「職人」の高齢化が深刻であり、10年後には50万~100万人の人材不足が発生すると国土交通省が試算しています。
人材不足を解消するには一人当たりの生産性を向上させるか、もしくは外国人人材に頼るしか方法がありません。
配筋は非常に複雑な作業であり、経験年数が少ない外国人実習生であっても作業できるようなできるだけ単純な設計が理想的で良い設計になってきています。
トップ式スラブについて
「トップ式スラブ」という言葉を聞いたことがある方はほとんどいないのではないでしょうか?
トップ式スラブの特徴は、前述したように曲げモーメントの大きさに合わせて中央部と端部で配筋を変える配筋方法です。
トップ=宙吊りのこと
ここでいう「トップ」とは梁配筋のトップと同じ意味です。
梁の配筋のトップとは宙吊り筋のことを指し、曲げモーメントが大きい箇所にトップ筋(宙吊り筋)が配置されます。
スラブの配筋で曲げモーメントが大きい箇所に配筋量を多くする方法は、トップ筋を配置する意味でトップ式スラブと言われています。
上筋:中は粗く/端は細く 下筋:中は細く/端は粗く
トップ式スラブでは曲げモーメントの大きさに対応した経済設計が採用されています。
図のように短辺方向をLとして、L/4を基準にして配筋方法が変わっています。
トップ式スラブでは、上筋の中央部の配筋量は少なく、端部の配筋量は多くなります。逆に、下筋の中央部の配筋量は多く、端部の配筋量は少なくなります。
短辺方向をLとすることに注意しよう
まとめ
ここまでトップ式スラブを説明してきましたが、トップ式スラブは配筋方法が複雑なため滅多に採用されません。
こんなに複雑な配筋は、僕たちのような若手には無理ですよね。
ただ、構造計算上曲げモーメントの大きさに対応して配筋量を変えることは経済的な設計であるので、トップ式スラブのような配筋方法もあることを頭の隅に置いておきましょう。