地中梁主筋の納まり X方向の主筋とY方向の主筋の上下関係について

鉄筋は重量物なので、上下関係を間違って配筋してしまうと直しができません。

特に地中梁主筋のX方向とY方向(先方向と後方向)の上下関係には注意しなければなりません。

この記事では、地中梁主筋の上下関係が鉄筋工事の施工効率性にどのように影響を与えるのか解説します。

地中梁について


まずは地中梁について確認しましょう。

大梁と小梁

地中梁は大きく2つの種類に分けられます。

柱の間にある大梁と、梁の間にある小梁です。

大梁は図面上は「G(Garter)」、小梁は「B(Beam)」で表記されます。

地中梁の場合、地中は「F(foundation)」なので、地中大梁は「FG」と表記され、地中小梁は「FB」で表記されます。

梁の主筋について

梁には全部で8種類の鉄筋があります。

この8種類のうち、梁の主筋とは上主筋と下主筋を指します。

柱受けや基礎エースで上主筋の高さを決める

上主筋の設計高さは基礎エースや柱受けでmm単位で管理します。

X方向の主筋とY方向の主筋の上下関係について

建物は図面上ではX方向とY方向の座標で管理されています。

地中梁の主筋に関しては、X方向とY方向のどちらの方向を先に施工するかで梁の主筋の上下関係が決定します。

通常の場合

通常の場合、X方向の梁の主筋とY方向の梁の主筋の上下関係は以下のようになります。

このようにX方向の主筋とY方向の主筋が交互になるので、梁の種類が同じであればスターラップの寸法はX方向もY方向も同じになります。

内内外々の場合はSTPの寸法を変えなければならない

では、上図の場合はどうでしょうか?

この図では主筋の上下関係は通常の場合とは異なり、上下関係は以下のようになっています。

この場合注意しなければならないのは、X方向の梁とY方向の梁が同じ種類であっても、スターラップの寸法を変える必要が出てくることです。

この場合のスターラップの寸法はたとえ同じ種類の梁であっても2種類になり、外側に位置するスターラップは内側に位置するスターラップよりも高さが主筋2本分大きくなります。

熟練者は「内内外々の梁」「はさみこみの梁」といったような表現をします。

通常の場合を推奨 STPの寸法が変わらなければ加工コストも組立コストも低い

鉄筋工事業者からすれば、組み立てる部材の種類が少ないほうが施工がしやすくなります。

部材の種類が少なければ図面を確認する時間も少なくなり、部材も運びやすくなるのでミスも少なくなるからです。

当然、種類が少なければ一度に大量の同じ種類の部材を加工できるので、加工コストも低くなります。

なぜ2つの上下関係パターンが存在するのか?

ではなぜ通常の場合と、内内外々の場合の2つのパターンが存在するのでしょうか?

許容応力度設計法においては内内外々で設計する必要性は全く無い

鉄筋コンクリートの設計では許容応力度設計法が適用されています。

鉄筋の曲げ引張強度を計算する式によれば、梁の主筋の上下関係が動くことで「d:コンクリート部材の有効高(mm)」が変動します。

理論上は、「d:コンクリート部材の有効高(mm)」が大きくなればその分安全マージンをその分確保した設計しなるはずなので確かに設計する側としては納得のいく設計なのかもしれません。

ただ、実際に施工する鉄筋工事業者からすれば「d:コンクリート部材の有効高(mm)」よりも鉄筋の径を太くして(「As:鉄筋の断面積(mm^2)」を大きくする)設計してもらった方がはるかに容易に施工できます。

設計監理者の好みの可能性が高い。あらかじめ通常のパターンに統一するように相談すべき

「d:コンクリート部材の有効高(mm)」を大きくして設計の安全マージンを確保するのか、それとも「As:鉄筋の断面積(mm^2)」を大きくするのかは、設計監理者の好みによる可能性が高いと思います。

ゼネコンの施工管理担当者は専門工事業者の施工性やコストが低い設計を協議・選択すべきですから、当然梁の上下関係においては通常の場合を選択したほうが良いでしょう。

そのほうがスムーズに鉄筋工事を遂行できるはずです。

まとめ

この記事では、地中梁におけるX方向の主筋とY方向の主筋の上下関係について解説しました。

「内内外々の梁」の梁の場合、スターラップの種類が2種類になり鉄筋工事業者からすれば非常に面倒な施工になります。

外側に位置するスターラップは内側に位置するスターラップよりも高さが主筋2本分大きくなり、種類が増える分施工性や加工コストが大きくなるためです。

土木工事では施工性が高く、単純で統一感がある設計が推奨されていますが、建築工事では設計監理者による裁量が大きいのが現状です。

梁の上下関係の設計においてはできるだけ「通常の場合」になるように協議し、施工性の高い設計を目指すのが理想だと思います。