外国人技能実習生をどう育てるか? 鉄筋工事の基本ポイント

人材不足が喫緊の課題になっている中小企業は、外国人実習生を適切に受け入れていく必要があります。

外国人だからといって日本人とは違った処遇を与えたり、教育を怠ってしまうと生産性は向上しません。

この記事では、鉄筋工事における外国人実習生の指導ポイントを実体験をもとにご紹介します。

会社の制度として等級制度を定める

事前準備として会社に人事制度をしっかり設計する必要があります。

人事制度がなければ、会社で働くモチベーションが薄く、優秀な成績を収めた方に対して適切なインセンティブを支給することができないからです。

・成果に対して意欲的に働く方を正当に評価すること
・リーダーとして成長していける環境を提供すること

この2点を意識した人事制度をまずはしっかり準備する必要があります。

そして、一番低い等級に期待することは主に次の2点です。

「指示された業務を正しく理解して遂行する」

一番低い等級に期待する仕事内容は3点だと考えます。

一見簡単そうに見えますが、初めて日本に来た外国人実習生にとってはこれが非常に大切です。

最初から図面の見方を覚えさせて、自分で自立的に行動できるようにすればよいかと思いがちですが、一番低い等級が自律的に行動すると間違いなくミスが発生します。

また、予測できない行動をとるため安全面でも不安になり、リーダーは全体の進捗を把握することができません。

一番低い等級が自律的に行動することは必ずしも全体工程に良いインパクトを生むわけではないのです。

ミスが多発すれば、修復作業に本来の倍以上の時間を要することになり、余計に管理が大変になってしまいます。

一番低い等級に期待することは自律的な行動ではなく、あくまで作業内容を理解したうえで、現場のマネジメントを担うリーダーの指示に従うことになります。

「社会人としての基本を身に着けて行動する」

よく言われる「ホウレンソウ」が世界共通なのかわかりませんが、要は主体的にコミュニケーションをとり、適度に信頼関係を築く努力をすることが大切です。

特に注意すべき内容としては以下の通りです。

安物の電化製品を使用して発生した火災や女性関係に悩んで失踪してしまう外国人実習生が多いようなので3番と5番には特に注意が必要です。

現場でよく使う日本語

外国人実習生とともに仕事をする中で、一番苦労するのは日本語でのコミュニケーションだと思います。

とにかく日本語が通じないので、仕事が進みません。

日本に来たばかりの実習生には数字の数え方、建築専門用語、社内の独特の言い回しなどを丁寧に指導する必要があります。

数字

建設業では会話の中に数字がたくさん出てきます。

数字を正確に聞き取ることができなければ、必要な材料を必要な分だけ運搬することもできません。

特に鉄筋工事では複雑な形、高さに加工された鉄筋が数十、数百種類発生します。

「D13のはたらきが360のピットの鉄筋を10本運搬してくれ」

このように指示されたときに、数字を正確に読みとり、頭の中で具体的な作業イメージができるかどうかが大切になってきます。

また、鉄筋工事では3500mmの定尺の鉄筋材料を「さんごー」、5500mmの定尺の鉄筋材料を「ごーごー」というように省略して言いまわすのが一般的です。

鉄筋工事独特の言い回しも共有する必要があるでしょう。

建設専門用語

工事で使用する資材や機械の名称も共有しましょう。

鉄筋工事であれば、結束作業をする際に必要な「結束線」「結束機、MAX、玉」「スケール」「ドーナツ」「スペーサー」「ライパー」など頻繁に使用するものの名称を覚えていないと仕事に支障が出てしまいます。

ベース

ここからは具体的な鉄筋工事の内容になります。

前述の通り、一番低い等級に期待することは構造図を自律的に読解し、自分で判断して材料の運搬を行うことではありません。

ベースには種類があり、基本的な組み立て方やかぶりの確保方法、墨、スペーサー(サイコロ)などの多くの使用材料があります。

実習生は、まずはこの理解をしたうえで現場のリーダーの指示に正確に従うことが重要です。

ベースは多種類ある

多種類のベースがあり、必要な箇所に必要な分だけ運搬する必要があることを伝えます。

mm単位で管理することを伝える

cm単位ではなくmm単位でかぶりを管理することも伝えます。


柱に関しては、主筋とフープ筋の2種類があることを説明します。

材料の置き方や加工の仕方にも工夫があることを理解してもらいましょう。

梁に関しては、大梁と小梁の違い、梁を構成する鉄筋の種類、施工する際の追い出し筋や追い終い筋、ウマや基礎エース、定着の概念を理解してもらいます。

大梁と小梁

大梁の意味が理解できていればスラブの施工の際にも大梁の補強筋の意味が理解できます。

梁の8つの鉄筋の名称

上主筋、上宙吊筋、下宙吊筋、下主筋、あばら筋(スターラップ)、腹筋、中子、巾止筋の8つの説明をします。

梁の主筋の3種類の部材の説明を行う

梁の主筋は3つに細分でき、追い出し筋、中間材(あんこ)、追い終い筋の3種類があることを説明します。

ウマ、基礎エース

ウマや基礎エースを使用する際の注意点を説明します。

圧接

梁の主筋は、長尺の部材は圧接することを説明します。

定着の必要性を伝える

直線定着、フック付き定着の説明をします。

スラブ

スラブでは重ね接手の重要性を説明します。

5500mmの材料の使用、重ね継手の必要性を伝える

5500mmの材料を使って、どのように重ね接手長さを確保するのか説明します。

ワイヤーメッシュの際には大梁補強筋があることを説明する

ワイヤーメッシュを使用する主にデッキスラブの場合は、大梁の上部に補強筋を設置することを説明します。

まとめ

上記の資料を外国人実習生用の母国語で翻訳し、一冊のバインダーにまとめて配布します。

人事制度がしっかりしていれば、勉強するモチベーションにもつながるはずです。

定着や重ね継手長さなどは日本語を理解できない外国人実習生には少しハードルが高いかもしれませんが、これを理解しなければ正確な施工ができません。

正確な施工ができなければ自身のキャリアアップやインセンティブの増加にもつながらないので、これらの重要概念の理解は必須になるでしょう。

日本語ができなくても、現場の経験を積みながら努力する必要性を教えることが大切だと考えます。