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名古屋城再建に立ちはだかるハートビル法の壁

名古屋市が計画をしている名古屋城の再建。

名古屋市長河村たかし氏は、「史実に忠実な名古屋城の再建」にこだわっているため、現在あるコンクリート製の復元城を壊し、木造の城を建てる予定を立てているのです。

しかし、そこに障がい者団体や有識者からの「ハートビル法」を盾に取った反対運動が起こっており、また、消防法に係わる問題まで持ち上がり、計画がとん挫している状況にあります。

本記事では、名古屋城の再建とハートビル法について解説していきます。

ハートビル法とは

画像引用元:国土交通省公式HP

バリアフリーを促進するため、1994年(平成6年)9月に「高齢者、身体障碍者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」が施行されました。

これが、所謂「ハートビル法」です。

例えば、階段の代わりにスロープを設けたり、エレベーターや案内板などに点字表記をしたりと、健康な健常者だけでなく、身体機能の低下した高齢者や体に障害のある人なども安心して利用できる建築物の建築を促進させるために作られた法律なのです。

そして、この法律は2006年に交通バリアフリー法と呼ばれる公共交通機関に対する法律と統合され、「ハートビル新法」として生まれ変わりました。

ハートビル法の対象となる建築物は、全部で28項目あり、その内18項目については2,000㎡以上の新築・増築・改築・用途変更で義務付けられています。

名古屋城の再建とハートビル法

さて、名古屋城の再建の前に障がい者団体が立ちふさがり、ハートビル法を盾にエレベーターなどの設置を要求しています。

では、名古屋城の再建とハートビル法について考えてみましょう。

名古屋城再建の大前提

先ずは、名古屋城の再建の前提条件を確認しておきましょう。

名古屋城の再建はあくまでも「史実に基づいた」木造での復元を目的としています。

ですが、木造による高層建築であり、多くの観光客が訪れる観光名所となる建築物の建築となると、当然、耐震性能や防火基準など、さまざまな制限がかけられ、到底「史実に基づいた完全復元」は困難といえます。

建築基準法第3条の適用

但し、建築基準法第3条の適用によって、建築基準法の適用から除外されます。

特に名古屋城の再建では、以下の様な前提条件を掲げています。

  • 名古屋城天守閣木造復元については、文化財保護法による「復元」とし、建築基準法第3条第1項4号の適用により建築基準法の適用を除外することで、木造による復元が可能となるが、構造や防火・避難に関する性能に行いて現代建築物と同等の安全性を確保することが前提条件となる。
  • バリアフリー法については、建築基準法第3条の適用を受けることで、特別特定建築物に該当せず、建築物移動円滑化基準への適合義務に関する規定は適用されない。しかし、地方公共団体及び施設管理者の責務である移動円滑化を促進す津ために必要な措置を講じる努力義務については適用される。

引用:名古屋城木造復元天守バリアフリー対策検討議会の資料より

では、ここで上げている建築基準法第3条第1項4号とはどのようなものなのでしょうか?

建築基準法第3条は「適用の除外」を定めた条文です。

この法律並びにこれに基づく命令および条例の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。

  1. 文化財保護法(昭和25年法律第214号)の規定によって国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定され、又は仮指定された建築物
  2. 旧重要美術品等の保存に関する法律(昭和8年法律第43号)の規定によって重要美術品等として認定された建築物
  3. 文化財保護法第182条第2項の条例その他の条例の定めるところにより現状変更の規制及び保存のための措置が講じられている建築物(次号において「保存建築物」という。)であって、特定行政庁が建築審査会の同意を得て指定したもの
  4. 第1号若しくは第2号に掲げる建築物又は保存建築物であったものの原型を再現する建築物で、特定行政庁が建築審査会の同意を得てその原型の再現がやむを得ないと認めたもの

第2次世界大戦で焼失した名古屋城は慶長17年(1612年)に完成したもので、明治維新後にも壊されることなくそのままの姿を保ち続けていました。そのため、昭和5年に城郭としては国宝第1号としに指定されています。

つまり、この国宝第1号を復元することを目的とし、文化財保護法と建築基準法第3条を前提条件として、木造による再建を計画しているのです。

障がい者団体の訴えとは?

障がい者団体としては、建築基準法第3条による「適用除外」に納得することが出来ず、車いすを使っている人でも天守に登れるようにするべきであると訴えているのです。

特に車いすの人でも乗ることが出来るエレベーターの設置では、構造的に困難であるということ、大阪城のように外部に就けるとなると景観が悪いということなどから、エレベーターの設置をしないという判断をしたことに対し、反論しているのです。

しかも、代替案として出されたチェアリフトでは重度の障碍者が使用できないため、障碍者の訪問を妨げていると訴えています。

中にはエレベーターの設置は当たり前のことと強気に出ている団体まであるほどです。

有識者の中にもエレベーターの設置に賛成している人が多く、現代の多様性を取り入れた社会の流れの中で、障害のある人を結果として排除する可能性のある名古屋市の計画は時代に逆行しる行為であると苦言を呈しているのです。

古い建物の再建にエレベーターは必要なのか?

ですが、市民の意見としては7割以上がエレベーターの設置に反対をしています。

反対する人の意見としては、以下の様なものがありました。

「文化財にキズをつけたり破損させ、歴史的価値を無くすことは絶対の辞めてほしい」

「『史実に忠実に復元する』という市の方針とは相反する設備を付加することに反対」

「江戸時代の天守は防御施設であり、バリアがあるのは当然のこと」

「資料が多く忠実に再現できる数少ない貴重な城であることを忘れてはなりません」

「日本の木造建築の美しさ、荘厳さ、素晴らしさが体感できる建物に、エレベーターは必要ない」

引用:名古屋城木造復元天守バリアフリー対策検討議会の資料より

勿論、エレベーター設置に賛成する意見もありますが、その多くは障碍者や高齢者だけでなく、健康弱者やベビーカーを押すママにも優しい建物であることへの期待でした。

エレベーターの設置については、様々な意見があるでしょう。すべての人を受け入れる施設を目的とするなら、大阪城のように景観を無視してエレベーターを外部に設置することは可能です。

ですが、エレベーターを付けることで当時のままの姿を「復元」するという計画が破綻してしまうのも事実です。

そうであるなら、これまでの通り鉄筋コンクリート造によるレプリカ城のままで良いのではないでしょうか?

お互いの歩み寄りが計画前進の鍵となる

画像引用元:pixabay

名古屋市側の計画と、障碍者団体の要望は平行線をたどるばかりで着地点が見えません。

名古屋市側は地方公共団体として市の施設を作るにあたり、全ての人が安心して使用できる施設を作る義務があり、障碍者団体の意見や有識者の意見を聞きつつ、エレベータの設置など、どのようにすればいいのかを再考する必要があるでしょう。

同時に、障碍者団体の方々も自分たちの要求ばかりを押し付けるのではなく、何のために何を再建しようとしているのかを理解し、譲歩出来ることと出来ないことを明確にしたうえで、歩み寄る姿勢が必要なのではないでしょうか?

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