横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
仕事中や通勤時など思わぬ事故や怪我に見舞われることがあります。こういった災難に対して補償してくれるのが保険です。
建設業に従事する方に関係する保険には種類があり、それぞれ保証内容や保険料などが違います。
また、労災保険の加入についても建設業は特例などがありますので、万が一の時に備えて労働保険のことを知っておきましょう。
この記事では建設業に関わる労働保険の仕組みや保険料、補償内容などをお伝えしていきます。
目次
建設業の労働保険とは
建設業の労働保険には建設国保(建設工事業国民健康保険組合)というものがあります。建設国保は建設業を従事する人たちが集まり、組合に加入する人たちが出す保険料と国の補助金により運営されています。
建設国保に加入することにより万が一のケガや病気になった時のための治療費、出産手当などの補償を受けることができます。建設国保の加入資格は、建設工事業に従事している方で、従業員が5名未満の個人事業所の事業主や一人親方、加入する組合員の家族などになります。
建設国保と国民保険の違い
一般的に知られる国民健康保険は「市町村国保」に分類される国民健康保険です。「市町村国保」は国民健康保険組合や職域保険に加入していない個人を対象として市町村が運営する保険になります。
建設国保は「職域国保」に分類され、地域の同業同種の個人事業者で組織する国民健康保険組合が運営する保険です。
「市町村国保」と「職域国保」の大きな違いは地域によって加入するか、業種や職種によって加入するかになります。また「市町村国保」と「職域国保」はどちらも国民健康保険法に基づいて運営されています。
建設国民健康保険と国民健康保険の保険料の違い
「建設国保」と「職域国保」と種類があるとどちらの保険に加入すればいいか迷うかと思われます。建設業に従事する一人親方なら業種で加入できる「建設国保」が良いと思うかもしれませんが、必ずしも適切とは言い切れません。
「市町村国保」と「建設国保」では保険料の違いがあり、以下の違いで年間の保険料も変わってきます。
- 市町村国保:世帯合計年間所得に連動するため、所得の違いで保険料が変動する
- 建設国保:所得に関係なく、業態や年齢、家族数によって保険料が決まる
「建設国保」は保険料が所得と連動していませんので、一定の所得がある場合は「市町村国保」よりも保険料が安くなります。
建設国民健康保険と国民健康保険の保証内容の違い
「市町村国保」と「建設国保」の保険料の違いを上述しましたが、保証内容も各保険で異なってきます。以下に保証内容を表に記載しましたのでご覧ください。
建設国保 | 市町村国保 | |
加入対象者 | 建設業に従事する事業主、一人親方、組合員の家族など | 自営業、専業主婦など |
医療費の自己負担割合 | 義務教育就学前:2割
義務教育就学時〜70歳未満:3割 ※1:70歳以上:2割 |
義務教育就学前:2割
義務教育就学時〜70歳未満:3割 70歳以上:2割 |
高額療養費 | 医療機関などに支払う1ヶ月の自己負担金額が一定額を超えた場合、申請により、その超えた額が払い戻される | 医療機関などに支払う1ヶ月の自己負担金額が一定額を超えた場合、申請により、その超えた額が払い戻される |
出産育児一時金 | 一児につき42万円 | 一児につき42万円 |
傷病手当金 | 1日につき4,500円 | なし |
出産手当金 | 1日につき4,500円 | なし |
葬祭費 | 組合員:10万円
家族被保険者:7万円 |
3〜7万円
(各自治体により異なる) |
※1:現役並み所得者の場合は3割
※1:75歳からは後期高齢者医療制度の診療となり、建設国保の被保険者資格は喪失する
建設業での労災保険の仕組み
仕事中の怪我や通勤時の事故、仕事が原因の病気など思わぬ被害にあってしまった時に適用できるのが労災保険です。
労災保険に加入することで治療費や入院費、休業補償などの給付を受けることができます。
労災保険は元請け又は下請負人に使用される労働者に適用されます。
そのため一人親方や事業主は労働者として扱われないため保険加入の対象に含まれていません。
しかし、建設業の一人親方や事業主は労働者に近い業務や災害発生状況にあるため、国は特別に労災保険の加入を認めています。
それでは一人親方や事業主が加入できる労災について下記でお伝えしていきます。
一人親方と事業主が労災を受けられる特別加入制度
一人親方や事業主が労災の補償を受けるためには個別で労働保険事務組合に特別加入する必要があります。
この制度は「労災保険特別加入制度」といい、厚生労働省から認可を受けて組合がつくった労働保険事務組合により労災保険の事務を代行してくれます。
昨今では一人親方の労災保険加入の有無が仕事の受注に大きく影響しています。
万が一の事故を考慮し自分の体は自分で守ることが重要になりますので、一人親方や事業主の方は労災保険の特別加入を検討しましょう。
建設国保に加入するメリット・デメリット
建設国保に加入するメリットは所得の違いで保険料が変動しないことです。ある程度の所得がある方は市町村国保だと所得により変動しますので、保険料が高くなってしまう可能性があります。
建設国保は所得による保険料の変動がないため高所得なほど加入するメリットがあり、保険料は事業者負担がないので経費削減にも繋がります。
建設国保のデメリットは所得や地域の違いで保険料が変動することはありませんが、加入する世帯人数分の保険料が掛かります。
また、被保険者の全額負担となりますので従業員への負担が大きくなります。
建設国保の仕組みとメリットを知って加入を検討しよう
ここまで建設業で働く方に関係する労働保険についてお伝えしてきました。建設業に従事している方は建設国保と市町村国保の国民健康保険があります。
どちらの保険に加入するかは、各保険のメリットを考慮して選ぶ必要があります。
どの保険を選ぶかで年間に掛かる保険料も変わってきますので自分の所得や家族数、従業員など精査して適切な保険を選びましょう。
関連記事