横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科卒
一級鉄筋技能士
鋼材は、土木分野建築分野問わず様々な構造物に使用されています。
土木構造物はコンクリート造のものが多いですが、建築構造物では大型の流通倉庫などの施設のほとんどが鉄骨を用いたS造が採用されています。
この記事では、構造物の建築には欠かせない鋼材の基礎的な知識とその特性を表す応力ひずみ曲線を説明していきます。
目次
鋼材について
鋼材は現代の産業で使用される構造物や設備、機器など、様々な用途に使用されています。
まずは鋼材の特徴について見ていきましょう。
鋼材の長所
・鋼材は、コンクリートのように、水、セメント、砂利、砂を混合してできる作る材料と比べ、品質と強度が安定している。
・強度が出るまでの養生期間が不要で、施工後ただちに供用が可能。
・単位面積当たりの強度が大きいので部材断面を小さくすることができる。(軽量な構造物が可能)
・破断するまでに大きく伸長するため、構造物に過大な外力が作用しても、構造物全体の急激な崩壊を免れる。
鋼材の短所
・腐食を起こす。(維持費が高い)
・火災などの熱に対し部材の変質が起こりやすい。
鋼材の強度
鋼材には、鋼板、鋼管、鋼矢板、形鋼、鉄筋、ワイヤーケーブルなどがあります。
それらの形状、力学特性、化学成分などは JIS で規定されています。
鋼材の記号で SS400、SM490 等の表示があります。
この記号は鋼材の JIS 規格による呼び名であり、英字は鋼材の種類を表すものです。
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#英字が種類、数字が引張強さ SS 400 SS=一般構造用圧延鋼材 400=引張強さ400kN/mm^2 SS:一般構造用圧延鋼材 SM:溶接構造用圧延鋼材 STK :鋼管 SY:鋼矢板 SKK:鋼管ぐい SKY:鋼管矢板 SD:異形鉄筋 |
鋼材の記号のうち、数字の部分は引張強さを表す。(SS400、SM490 など)
鋼材の引張強さ=応力ひずみ曲線で応力が最大の点
※鋼矢板と鉄筋に限っては、降伏点を表すことに注意(鉄筋:SD295、SD345 など)
応力-ひずみ曲線
鋼材の特徴が理解できたところで応力ひずみ曲線について見ていきましょう。
鋼材の表記で数字は引張強さを表しており、鋼材の引張強さとは応力ひずみ曲線で応力が最大の点を示すと説明しました。
この点について詳細に見ていきましょう。
鋼材の引張強さ=応力ひずみ曲線で応力が最大の点
鋼材の特徴を縦軸を応力、横軸をひずみとしてグラフ化したものが応力-ひずみ曲線です。
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#応力σとは、荷重 P を公称断面積 A で除したものです。 σ=P/A(N/mm^2) #ひずみとは、元々の長さ(L)から収縮した長さ(L+ΔL)を元々の長さで除したもののことです。 ε=ΔL/L |
鋼材の引張強さ:応力-ひずみ曲線で応力が最大となる点
許容引張応力度:降伏点の60%の点、厳密には安全率で除した値で設定される
許容引張応力度設計法は40%の余裕をみた設計法
構造材料に作用する最大の応力が許容応力度です。
許容応力度は降伏点の60%に設定されています。
つまり、許容応力度設計法では、鋼材の弾性領域かつ40%の余裕をみて設計をしていることになります。
構造体に作用した応力が許容応力度以下であれば「安全」と判定します。
降伏点強度<破断強度
鉄筋の技能士試験の国家試験では「鉄筋の降伏点強度は破断強度より大きいか?」というよくわからない問題が頻繁に出題されます。
どの資料を見ても応力ひずみ曲線において、鉄筋の降伏点強度は破断強度より大きいかどうかなんて記載していませんよね。
試験の解答としては、降伏点強度<破断強度となることを頭の隅に置いておきましょう。
まとめ
鋼材の基礎的な知識と鋼材の特性を示す応力ひずみ曲線について説明しました。
許容応力度など、難しい言葉が出てきましたが、「40%余裕をみた応力」と考えれば理解しやすいのではないでしょうか。