柱の鉄筋の基本 W造、RC造、S造の柱について 

柱は構造体の重要構造部材です。

この記事では、鉄筋工事における柱の基本知識とS造基礎の柱に使用される鉄筋の拾い出し方法、実務に必要な柱に関する知識について解説します。

鉄筋工事業者特有の知識もありますので、確認してみてください。

柱とは?

そもそも柱とはどのような部材でしょうか?

柱は梁やスラブの荷重を基礎地盤に伝える構造部材であり、構造物の種類によって柱の種類も様々です。

W造、RC造、S造、それぞれについての柱の特徴を見ていきます。

W造の柱

一般的な柱のイメージは木造の柱かと思います。

自然材料の木材を使用するW造の場合は、木取り(木の切断方法)によって柱の材料にふさわしい材料を選定します。

柱には芯持材を使用する

木材に芯を残しつつ木取りした材料を芯持材(しんもちざい)といいます。

芯持材は、鉛直荷重にとても強く、柱としての材料にとても優れています。

芯持材は、適切に背割り(せわり)をすることで余計なひび割れを防止しつつ使用することが多いです。

一方、芯去材は鉛直荷重に弱いので、柱の部材として使用することはありませんが、見た目が非常に美しいので目に見える部位に使用されることが多々あります。

S造の柱

S造の建屋部分の柱は鉄骨ですが、S造の構造物でも基礎構造はRC造になります。

建屋部分の鉄骨の柱と基礎の接合方法は半剛接合になり、地震時に発生する断面力に抵抗するためにアンカーボルトが設置されます。

阪神淡路大震災の経験から設計基準が変わった

1995年の阪神淡路大震災発生時、上記の柱脚部の破壊によるS造構造物の被害が多発しました。

この原因は、鉄骨柱脚に設計時に想定した以上の断面力(曲げモーメント)が発生したためです。

構造物の耐震性を向上させるために、柱脚部の接合詳細を見直す建築基準法の改正が行われました。

平成7年 阪神・淡路大震災 建築震災調査委員会中間報告

RC造の柱

RC造の構造物は耐火性に優れており、建築分野であれば老人ホーム等の低層集合住宅やマンション、病院などの公共施設に多く使われています。

木造の柱と違って、RC造の場合は構造部材に鉄筋が使用され、柱と梁、スラブは適切な定着を取ることで1つの構造体として成立します。

https://www.tetsumag.com/2020/02/07/24/

柱の役割について

RC造やS造の柱の役割や構造について詳しく見ていきましょう。

曲げモーメントと軸力に抵抗する主筋、せん断力に抵抗する帯筋(フープ筋)で構成される

柱は建築物の荷重を支え、地震などの水平力(地震時は建物の総荷重が水平方向の応力となる)に抵抗する構造体です。

RC造の柱は、柱に生じる曲げモーメントと軸方向に抵抗する主筋(しゅきん)と主筋を囲うようにせん断力に抵抗する帯筋(おびきん、フープ)で構成されます。

建築基準法が定める柱の定義

建築基準法によれば、柱の定義は次のようになります。

特に1~3は重要項目なので押さえておきましょう。

【応用】柱の鉄筋の拾い出し

柱の基本的な内容が分かったところで、柱の鉄筋の拾い出しについて見ていきます。

柱の主筋

柱の主筋はベース筋の上部に設置するので、安定させるためにベース筋のピッチを参考にアンカー(あし)の長さを決定します。

例えば、ベース筋のピッチが100mmであれば150mmとします。

ベース筋のピッチが200mmで、主筋のアンカーの長さが150mmだと主筋が垂直に安定しないので注意しましょう。

構造図を確認して柱の主筋のはたらき長さを決定します。

四隅フックの有無

S造基礎の場合は柱の組立の前作業としてアンカーボルトのセット作業があります。

柱の四隅にはフック付きの主筋を設置することが一般的ですが、現場によってはアンカーセットが干渉するため、四隅フックが省略される場合もあります。

継ぎ手の位置

継手位置は構造上の弱点となります。

継手位置は、断面力が大きく作用するような柱の基部や梁のスパン中央部に設けることは避けることや、同一断面に集めないこと等が原則です。

鉄筋の継ぎ手の種類は主に3種類あります。

鉄筋の継ぎ手の種類

1.重ね継手

2.ガス圧接継手

3.機械式継手

柱の継ぎ手は、一般的には2.ガス圧接継手になります。

柱の継ぎ手の位置は、基部から500mm且つ柱せいの1/4を離した部分に設けます。


建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事 より

はかま筋は柱に干渉する部分は分割する

はかま筋がある場合を見ていきましょう。

はかま筋とは、フーチングの上部に配置するもので、90度のフックとアンカーがついたものが一般的です。

一般的に、はかま筋は一本の鉄筋の両端にフックとアンカーをつけたものを使用します。

ただし、柱の鉄筋に干渉するはかま筋は、柱の主筋・帯筋が邪魔で設置できないため、一本の鉄筋では組立ができません。

柱に干渉する部分は、分割してはかま筋を作成することになります。

はかま筋の分割の本数を設定することで、柱に干渉するはかま筋を分割していきます。

柱の帯筋

帯筋の拾い出し方法は非常に単純で、柱せい/帯筋のピッチ+1本で本数を拾い出すことができます。

TOPHOOPは2本にする

柱筋の最上部は、ひび割れ防止対策として、帯筋を2本設置するのが一般的です。

杭頭補強筋がある場合は納まりの検討も必要

杭頭補強筋が存在する場合は、柱の部分により一層鉄筋が密集することになります。

杭頭補強筋は、鉄筋径が太く強度も高いものが使用されることが大半なので、納まりの検討を事前に行わないと鉄筋が干渉してしまって適切に配筋できない事も良く発生します。

杭頭補強筋がある場合は、ベース、柱との干渉の検討も事前に行いましょう。

実務で必要な柱の知識

鉄筋工事業者とスムーズに打合せを行うために、実務で必要な柱についての知識をまとめて確認しましょう。

わからない用語があれば今一度確認してみてください。

柱主筋の四隅フックは無い事が理想

柱の四隅には180°フックが付く場合があります。

鉄筋工事業者からすれば、四隅フックが無い方がスムーズに施工ができます。

スラブを施工する際は柱の根巻の施工が必要

基礎の柱の差し筋が根巻の主筋になります。

スラブを施工する際は、根巻の配筋が必要になります。

腰壁つなぎ時の柱回りは型枠業者との兼ね合いが重要

台直しやつなぎ作業は、型枠の建て込みがされていると非常に時間がかかる作業です。

型枠業者と鉄筋工事業者がスムーズに施工ができるようにスケジュールを組む必要があります。

杭頭補強筋の干渉について事前に検討を

杭頭補強筋は柱や梁の主筋、アンカーフレーム等と頻繁に干渉するため、事前検討が重要になります。

綺麗な施工のための段取り筋「柱受け」

梁と柱の連結部分には「柱受け」という段取り筋が設置されます。

段取り筋は図面には出てこない鉄筋ですが、鉄筋業者とのコミュニケーションのために段取り筋も理解しておきましょう。

まとめ

本記事では、W造、S造、RC造それぞれの構造物の柱の役割や特徴を解説したうえで、鉄筋工事における柱の基本知識、柱に使用される鉄筋材料の具体的な拾い出し方法について解説しました。

鉄筋工事業者特有のマニアックな段取り筋の知識もありますが、スムーズな施工のために理解しておくことをオススメします。