近年、福祉や介護、農業または建設業の現場で「パワーアシストスーツ」の導入が進んでいます。
パワーアシストスーツは機械の力を使って人間の動作をアシストするといった画期的なスーツです。
荷物の運搬や介護などの重労働を課せられる作業において、人々の負担を大幅に軽減することができるといった理由から注目を集めています。
本記事では、パワーアシストスーツとは一体何なのか、そのメリットやデメリット、他業種の現場への導入事例をご紹介します。
パワーアシストスーツとは
パワーアシストスーツとは、
身体に装着し、装着者又は作業対象に対して作用することで、身体動作の支援、身体機能の改善・治療等を行うもの
引用:特許庁
のことです。
簡単にいうと、機械の力で人間の動きをパワーアップしたりサポートしたりしてくれる素晴らしいスーツです。
このようなパワーアシストスーツは前々から研究されていましたが、近年になって急速に発展しました。
今では様々な工事現場や航空会社での荷物積み込み時で運用され、さらにはテレビCMの放映によって人々への認知度と理解が急速に深まっています。
人間工学(エルゴノミクス)的考え方に基づいた設計
パワーアシストスーツは人間工学(エルゴノミクス)に基づいて設計されています。
人間工学(エルゴノミクス)とは、
働きやすい職場や生活しやすい環境を実現し、安全で使いやすい道具や機械をつくることに役立つ実践的な科学技術
引用:日本人間工学会
です。
具体的に言うと、普通の設計だとパワーは出るけど動きにくいというようなことになりますが、人間工学に基づいて設計すると、装着しても動きやすくてパワーもでます。
今までは、機能はすごいけど動きにくくて使いにくい商品が多くありました。
ですが、人間工学という考え方が普及し始めており、動きやすい商品が開発されてきているので、パワーアシストスーツは今後より普及していくでしょう。
パワーアシストスーツ導入のメリット
パワーアシストスーツを導入するメリットは主に3つあります。
疲労軽減による労災防止・作業効率アップによる利益上昇・体力差をカバーによる人材不足対応の3つです。
疲労軽減による労災防止
パワーアシストスーツを導入することで重量物を軽々と持てるようになり、怪我の防止できます。
荷物を持ったり下ろしたりする動作は人間の腰や膝、手首などの間接に思った以上の負荷がかかるため、ぎっくり腰や手首を痛めるなどのけがに注意が必要です。
また、年齢を重ねていくと筋肉が衰えてしまい、今までは軽々と持てていたような重量物でも、持ち運びが困難になるケースが多々あります。
パワーアシストスーツを導入することで、関節や筋肉の負荷が減るため、けがを減らすことが可能です。
また、重量物の運搬などは、作業自体はシンプルですが非常に負荷が高く疲労が溜まります。
疲労が蓄積すると思考力が鈍り、大きな労災につながる危険性が倍増します。
そのため、機械の力で疲労を軽減することができてかつ事故を未然に防ぐことができる、まさに革命的なスーツです。
作業効率アップによる利益上昇
パワーアシストスーツを導入することで作業を効率的に行うことができ、短時間で終わらせることが可能です。
他業種の事例だと、20%作業時間が短縮した事例があります。
20%も作業時間を削減できれば、同じ時間働けば1.2倍ほどの利益を生むこともできるでしょう。
パワーアシストスーツを使うことで短時間で作業を終了でき、会社の利益上昇を狙うことが可能になります。
体力差カバーによる人材不足対応
パワーアシストスーツを導入することで身体的な差をなくすことができ、作業に対するハードルを低くすることができるメリットがあります。
同性でも体力や筋力には個人差があり、それらは男性と女性の間でも生じてしまいます。
パワーアシストスーツはそんな性別の違いすら乗り越えてしまう大きな可能性を秘めた機械です。
パワーアシストスーツを使用することで女性が男性と同じ作業ができるようになるため、人材不足の穴埋めに大きなプラスとなります。
パワーアシストスーツ導入のデメリット
メリットもあればもちろんデメリットもあります。
デメリットは2つあり、コストがかかる・狭いところが苦手の2つです。
コストが発生
パワーアシストスーツ一着にあたり、約15~50万円のイニシャルコストとそれらを維持・メンテナンスしていくためのランニングコストが発生します。
そのため、導入時には多少の費用が必要です。
狭いところでは作業性が低下
パワーアシストスーツは装着するのにそれなりの幅が必要なため、狭いところでは力を発揮できません。
広い場所で作業をする分にはなにも問題は生まれませんが、マンホールのなかなどの狭い空間で作業をする場合、作業性が低下することが問題として挙げられます。
そのため、導入時には使用する用途などを十分に検討する必要があります。
他業種の導入事例
パワーアシストスーツはすでに様々な現場で導入され始めています。
それでは、他業種の実際の導入事例をご紹介しましょう。
日本航空
航空会社では手荷物の積み込みなどの取り扱いが非常に多く、負荷が非常に大きいことが問題視されています。
そこで、日本航空はパワーアシストスーツを導入し、スーツの力で社員の行動をアシストすることで、なんと同じ時間に運べる荷物の数が約20%も増加したなどの成果が生まれています。
消防署
神奈川県の海老名市は、2019年の7月に消防隊員の身体的な負担を低減するためにパワーアシストスーツを導入しました。
消防員は、緊急の場合は迅速な出動をする必要があります。また、有事の際には現場で人員救助を行う必要があるなど、重労働から避けては通れません。
しかし、パワーアシストスーツは2,30秒程度で装着可能なので迅速な出動の妨げになることはありません。
さらに、パワーアシストスーツを導入することにより、力仕事に不安のある女性作業員であっても不安なく活動できるようになったなどの大きな成果が生まれています。
農業
農業の現場では、定植や収穫、管理、箱詰め、出荷など腰や関節に負担のかかる作業が山ほどあります。
そのため、パワーアシストスーツを導入して農業の現場に「最先端技術」を融合することで作業効率が上昇し、身体的負担が格段に低減しました。
まとめ
本記事では、
- パワーアシストスーツとは何か
- パワーアシストスーツ導入のメリット・デメリット
- 実際に導入されている事例
についてご紹介いたしました。
パワーアシストスーツは、現代社会で問題視されている技術者の高齢化や後継者不足を一挙に解決できるスペックを持った革命的な機械です。
「AIが仕事を奪う」「AIを利用して仕事を広げる」といった考えを持ち、これからは従来のノウハウと最先端の技術を融合していくことが求められます。
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