RC造の基本知識 構造特性から施工フローをご紹介

RC造は、防⾳性、耐⽕性、耐久性、断熱性に優れており、オフィスやマンション、学校、病院などで幅広い⽤途に使われています。

この記事では、RC造の構造上の特性から作業フローまで幅広くご紹介します。

RCの概要

建築の構造は、⼤きく5種類に分類されます。

鉄筋コンクリート造(RC造)、壁式鉄筋コンクリート構造、(WRC造)、鉄⾻造(S造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、木造(W造)の5つです。

このうちRC造(鉄筋コンクリート造)は、建築分野であれば老人ホーム等の低層集合住宅やマンション、病院などの公共施設に多く使われています。

建築の構造を細別するとコンクリートブロック造(CB造)、壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造(WPRC造)、プレキャスト鉄筋コンクリート造(PRC造)もありますが、これらは特殊な工法であり、使用されることはあまり多くありません。

まずはRC造の構造上の特性を見ていきましょう。

RC造はラーメン構造である

RC造は全て「ラーメン構造」であり、部材同士は剛接合で接合されています。

RC造では、鉄筋を適切に定着させることで柱や梁、スラブなどの構造部材を1つの構造体として成立させます。

ラーメン構造は耐震性に優れ、かつ高温多湿の環境に適しているため、地震や台風が多く梅雨の時期がある日本では、多く使われる構造です。

ラーメン構造でない構造には補強が入る

ラーメン構造でない場合は、ブレースや火打ち梁といった補助部材が必要になります。


出典:土木工事設計要領 第1編 共通編(H29.10)

上図を例にあげましょう。

土木分野の例だと、ボルト接合の山留め部材には火打ち梁が使用されたりします。

WRC造について

RC造は、一般的には柱、梁、スラブで構造物が構成されています。

一方、WRC造には柱は存在しません。

WRC造の特徴について見ていきましょう。

WRC造には柱はないが、壁に補強筋が入る

WRC造には柱がなく、開口上の壁と同厚の梁と壁で構成されています。

柱がない分、空間が広くとれますが、支える柱がないためそのままだと耐久性に問題がでます。

そのため、壁のコーナー部に径の太い鉄筋が端部補強材として配置されることがあります。

WRC造は、部屋数が多く広くスペースを取る必要がある老人ホーム等の5階以下の低層集合住宅に多く使用される工法です。

WRC造の現場例

写真のようにアルミ製はしごで作業床を作り、単管パイプで梁の天端を設定しています。

写真のように幅が100mm程度の壁の鉄筋を加工する必要があるので、鉄筋の加工に多くの手間がかかります。

壁のコーナー部の端部補強筋を設置するのも大変な作業ですので、作業工数も多く必要になります。

RC造の鉄筋工事

RC造の構造の基本知識が理解できましたので、施工内容を見ていきましょう。

RC造の場合は鉄筋工事、型枠工事、コンクリート打設、左官工事と多くの工種を巻き込んだ工事によって成立しています。

施工フローは以下のように進みます。

RC造の骨組みとなる鉄筋工事の概要を見ていきましょう。

施工図作成

鉄筋工事業者は構造図のキープランをゼネコンから取得した後に、施工図を作成します。

工事の作業効率を上げるためには、優れた施工図が不可欠です。

施工図作成のポイントは、経験の少ない若年層や外国人実習生の作業効率性を上げることです。

近年の建設業界では、人材不足が深刻であり、外国人実習生が多く従事しています。

実習生の多くは日本語に慣れていないので、彼らにも分かりやすい施工図を作成することが作業効率の上昇につながります。

鉄筋加工

ゼネコン関係者であっても、実際の鉄筋加工作業を見たことがある方は少ないのではないでしょうか?

鉄筋の加工精度はミリ単位で管理されます。

一般的な許容誤差は±5mmです。

施工図の作成が終了した後に、上図のような作業指示書を発行して、加工を行っていきます。

この作業指示書のことを絵符(えふ)といいます。

鉄筋加工のポイントは寸法と角度です。

RC造では適切な定着長さとかぶり厚さをとらなければ施工不良の構造物になってしまいます。

鉄筋加工作業は機械化が進み、作業経験のない若手作業員や女性の方でも簡単に複雑な形状の加工ができるようになっているので、加工のコストは減少傾向にあります。

鉄筋組立

加工した鉄筋を工事現場に運搬した後は、施工図通りに鉄筋の組立を行います。

実際の工事現場では、10名以上の作業員がチームとして鉄筋の組立作業を行います。

鉄筋の組立作業の責任者は「職長」と呼ばれ、職長には複数人の作業員をまとめ上げる優れたリーダーシップが必要になります。

ゼネコン側の管理ポイントは、効率よい作業計画書を作成することです。

鉄筋組立作業の当日に必要な測量・墨出作業がしっかりできていなければ鉄筋工事に影響が出てしまいます。

また、鉄筋工事の箇所に必要のない重機や材料が置かれていたり、鉄筋の材料置き場が無かったり、鉄筋を楊重するクレーンがなかったりすると効率よく作業することができないので、施工管理側は注意が必要です。

配筋検査

構造物の検査の目的は、施工した構造物が当初設計されていた要求性能を満足し、発注者に引き渡し可能なものであることを証明することです。

配筋検査のポイントは以下の通りです。

適切な検査を行うためには、あらかじめ検査計画を定め、測定項目や測定方法、試験方法、判定基準等について、合理的な根拠を設定することが重要になります。

RC造のコストについて

RC造の具体的なコストについて見ていきます。

多くの人工を要する

RC造の場合は鉄筋量が多く複雑であるため、1人工1t程度組立作業できるS造基礎の施工に対して、RC造の工事では1人工0.5tしか組立できない場合もあります。

使用する原材料費が多い場合や複雑な構造の場合は、その分原材料費や人件費が多くなるので費用が大きくなります。

緊張工事が必要な場合もある

一般的なRC造の建物は柱のスパン(間隔)が10m以下が多いですが、大型の構造物の場合はプレストレストコンクリートが導入される場合があります。

長尺の構造物の場合、単純なラーメン構造では荷重や地震力に構造が耐えられないことがあります。

その場合は上記のようにRC造の梁の中に鋼線を入れて水平方向に力を加えます。

大型の構造物であっても工夫をすればRC造で建築することが可能になりますが、その分高コストになります。

鉄筋価格は高騰中

中国が国策として二酸化炭素排出削減策を進めている影響で、原材料となる鉄スクラップの価格が高騰しています。

異形棒鋼の価格は2021年年初から2倍程度に高騰。

また、近年では建設業界従事者の⼈⼿不⾜が深刻で、人件費も上昇傾向です。

鉄筋の材料価格動向には注視する必要があります。材料価格の参考値は以下のサイトから調べることができます。

東京製鐵株式会社

まとめ

RC造に関して基本知識を身に着けておくと、専門工事業者との打ち合わせがスムーズにいく場合が多いです。

鉄筋工事の知識を深めて、現場管理や施工管理の資格取得に生かしましょう。

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