建設業の労働人口は年々減少傾向にあり、今後高齢者の大量離職により、さらに労働者の人口不足が深刻化されます。
このような状況を建設業界はすでに把握しており、国でもこれからの人材確保を実現できるように対策が講じられています。
この記事では建設業の労働人口不足と人材確保の取り組みについてお伝えします。
建設業の労働人口不足の現状
日本では少子高齢化に伴い労働者の減少が問題とされています。業界の中で建設業の労働人口の減少は深刻にあり、年々少なくなっているのが実情です。
建設業の労働人口の減少は1997年(平成9年)685万人をピークに2016年(平成28年)492万人とピーク時から28.18%減少していることが調査でわかっています。
建設就業者の労働者推移は下記にように減少しています。
- 建設業就業者:685万人(H9)→498万人(H22)→492万人(H28)
- 技術者:41万人(H9)→31万人(H22)→31万人(H28)
- 技能労働者:455万人(H9)→331万人(H22)→326万人(H28)
建設業の高齢化と若年層の減少
建設業の労働者不足の問題は建設就業者の高齢化も問題となっており、建設業就業者は約34%が55歳以上であり、若手の29歳以下は約11%と全体の一割ほどしかいません。
建設業就業者の高齢化は2025年以降に高齢者の大量離職が見通されており、次世代への技術継承と若年入職者の確保・育成が課題となっています。
建設業専門工事業職種の年齢構成の平均は下記になります。
職種 | 平均年齢 |
総数(職業小分類) | 45.8 |
建設・土木作業従事者 | 47.0 |
型枠大工 | 46.3 |
とび職 | 38.8 |
鉄筋作業従事者 | 43.9 |
大工 | 50.4 |
左官 | 53.6 |
配管従事者 | 45.8 |
電気工事従事者 | 45.2 |
10年後の建設業技能労働者数の予測
建設業技能労働者数の高齢化により労働者の人口数が減る中、2025年度に必要な技能労働者数は333万人〜379万人と試算されています。
しかし、コーホート分析では2025年度の技能労働者数は約286万人と2015年度比で44万人減少すると試算されており、必要な技能労働者数の差分が47〜93万人生じることになります。
この差分を埋めるためには、若年層(34歳以下)などの入職・定着が過去の高水準時のレベルまで達すること、中堅層〜高齢層の直近の高水準が継続すること、生産性が向上することを仮定にしています。
これらのことが達しない場合は必要とする技能労働者数の確保が難しいとも言えるでしょう。
建設業への就職が多い工業高校の減少
国土交通省は少子高齢化による労働人口の減少の問題について、生産性の向上と人材確保・育成・活用をしていくためにアンケート調査を行い、その結果が報告されています。
建設業への就職が多いと見られている工業高校の学校数、生徒数は減少していると報告があり、平成4年度の生徒数は約46万人、平成28年度には約25.5万人と減少しました。
建設業へ就職した高校新卒者の割合は51.3%が工業高校卒業者であり、工業高校に対する求人数は増え、建設業へ就職する生徒も平成22年度以降増加傾向にあります。
しかし、他の業種に就職する生徒も多いのも実情であり、生徒数も減っているということから今後はなぜ建設業に就職しなかったのかも検討する必要があります。
工業高校生徒の建設業に対するイメージ
「国土交通省 国土交通分野の将来見通しと人材戦略に関する調査研究」では工業高校の生徒の建設業に対する意識のアンケートを行っています。
肯定的な回答としては、「社会の役に立つ仕事」「大型建築物のスケールの大きい仕事ができる」「目に見える成果がある」「やりがいがある」などがあります。
反対に悪いイメージには「3K(きつい、きたない、きけん)」「事故が多い」「給料が安い」「休みが少ない」「女性が少ない」「若い世代が少ない」などの回答がありました。
これは建築業界でも対策が必要と言われている問題でもあります。
参考資料:国土交通省 国土交通分野の将来見通しと人材戦略に関する調査研究
建設業の若年層の労働人口が増えない原因
建設業の若年層の労働人口が増えない原因には「仕事がきつい」「建設業のイメージ」「給料が安い」「休日が少ない」「残業が多い」「給料よりも休みが欲しい」「ストレス耐性の低下」などがあります。
厚生労働省の資料によると建設業離職者が仕事を辞めた一番の理由は「雇用が不安定」「遠方の作業場が多い」「休みがとりづらい」「労働に対して賃金が低い」「作業に危険が伴う」などが挙げられています。
建築会社アンケートによる人材不足の要因の調査結果
人材不足の要因について「休みが少ない」「建設業のイメージが悪い」「仕事がきつい」「屋外の仕事が多く汚れる」などの回答があります。
人材不足の要因について「休みが少ない」は会社側も理由がわかっている状態であるのに対応していないまたはできていない会社が多いというのが実情です。
このことにより人材不足は常態化し悪循環を招いていると考えられています。
建築会社アンケートによる不足している職種の調査結果
建築会社アンケートによる不足している職種で多かった回答は下記のようになっています。
- 土木技術社:52.3%
- 建築技術者:30.5%
- 建設機械運転:16.4%
- 型枠(土木)9.1%
- とび:5.5%
引用:国土交通省 国土交通分野の将来見通しと人材戦略に関する調査研究
建築会社アンケートによる建設技能者の主な離職理由
建設技能者の主な離職理由については下記の回答があります。
- 建設業の仕事に向いていない
- 勤労意欲が低い
- 給料に対する不満
- 休日・休暇に対する不満
- 職場の人間関係
- 体力的に仕事についていけない
- 家庭の事情
- 技術的に仕事についていけない
離職する要因は建設業が思っていたよりもきつく就職前とのギャップが大きかったことが考えられます。
引用:国土交通省 国土交通分野の将来見通しと人材戦略に関する調査研究
建設業の労働人口を促進する取り組み
建設会社はこれからの労働人口の減少の対策を講じて人材確保の取り組みがなされています。ここでは建設業の労働人口を促進する取り組みについてお伝えしていきます。
建設技能者を育成する取り組み
企業は若年層の人材を確保・育成するために連携して取り組みを行なっており、下記のようなことが実施されています。
- 入社時・入社後の十分な教育訓練
- 仕事内容をPRするパンフレットやDVDの作成・配布
- テレビやラジオCM
- 求人サイトの解説
- 固定月給制や週休2日制の導入
- 各種手当て・社会保険完備
- 将来の給料や資格取得のキャリアパスの見える化
- 職場環境の整備
建設業の女性の入職を促進する取り組み
比較的男性労働者が多い建設業界は、国土交通省による建設業5団体とともに女性が活躍できる建設業行動計画を策定しました。
これには「5年以内に女性技術者・技能者を増やすこと」を目標に挙げて取り組みがスタートしています。
「入職促進」「就労継続」「更なる活躍とスキルアップ」「情報発信」など具体的な戦略と取り組みを行い、建設業界全体の職場環境の改善と意識変化を促していく方針です。
環境改善を進める建設業働き方改革加速化プログラム
全業界の働き方改革が叫ばれている中、建設業界の労働環境は未だ改善されていないのが現状であり、国では改善に向けて「国土交通省 建設業働き方改革加速化プログラム」が実施されています。
主な取り組みは下記の3つを重視して取り組まれています。
- 長時間労働の是正
- 給与・社会保険
- 生産性向上
長時間労働には週休2日制導入を後押しし、工期なども適正な設定を発注者に求めています。また、社会保険未加入の建設企業は建設業の許可・更新を認めない仕組みを構築する取り組みもされています。
労働人口の不足を改善するために建設業の環境整備が必須
ここまで労働人口の不足と人材確保の取り組みについてお伝えしました。建設業界の労働人口の減少は建設業のネガティブなイメージを払拭させて若年層を確保することが大切です。
そのためにも現在進められている働き方改革を実施し、建設業の環境を整えていくことが人材を増やしていく対策になります。
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