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【西松建設事件】ゼネコンのあり方を見直すことにもなった事件を解説

原因のイメージ画像

ゼネコンと聞くとどんな印象を抱くでしょうか。現場で高品質な構築物を造るために東奔西走している職員の方々の努力とは裏腹に、『癒着』や『談合』といったいった、ネガティブなイメージを思い浮かべる方も多いようです。

確かに、そのようなことを想起させるゼネコンの汚職が世間を賑わしたことがありました。

これから、今から10年ほど前に起きた西松建設事件を取り上げて、建設業界の一面を考慮しましょう。

西松建設の概要

西松建設はどんなゼネコンでしょうか。

明治7年に創業し、ダム・トンネル等大型公共土木工事を得意とするゼネコンです。スーパーゼネコンに次ぐ準大手ゼネコンの座に位置し、同じく準大手として建築工事を主要分野とする戸田建設との業務提携を結んでいます。

近年は、不動産開発やビル管理などの非建設部門にも注力しています。借入金は少なく、一方で自己資本比率は40%を超え健全な財務体質を誇っています。

西松建設事件とは

平成15年から平成17年にかけて、小沢一郎民主党代表(当時)に2つの政治団体から献金があり、政治資金収支報告書に記載されました。

しかし東京地検特捜部の調べにより、実際には西松建設から小沢一郎民主党代表(当時)側への企業献金がありましたが、それら2つのダミーの政治団体からの献金として政治資金収支報告書に虚偽の記載を行ったとされました。

そのため、政治資金規正法違反の疑いで、小沢一郎氏の公設第1秘書大久保隆規被告が逮捕されました。立件された献金額は計3500万円ですが、西松建設側は10年近く前から政治献金やパーティー券購入などに計5億円近くも支出していました。そのため、西松建設前社長の国沢幹雄被告も同罪で起訴されました。

西松建設事件の詳細

背景

民間工事と公共工事を合わせた建設投資の総額は、バブル崩壊時の平成4年度の約84兆円をピークに、平成8年度までは約80兆円前後で推移しました。しかし平成9年度には約75兆円に減少しその後減少傾向が顕著となり、平成19年度には50兆円近くまで下落しました。このように、当時の建設業を取り巻く経営環境は急速に悪化してしまいました。

このような環境下での主要ゼネコン各社の売上変動率で比較すると、勝ち組はスーパーゼネコン5社と、前田建設工業、長谷工コーポレーションと奥村組だけでした。

では、西松建設の属するカテゴリーの準大手ゼネコン各社は、この期間どんな状態だったのでしょうか。

まず、準大手の一角を占めていた佐藤工業は経営破綻し、飛島建設は準大手から中堅ゼネコンに陥落、熊谷建設、フジタ、ハザマ、東急建設、三井建設の各社は大幅に売上を落として債務免除等の金融支援を受けざるを得ない状況でした。

一方で金融支援を回避できた準大手の残り4社にとっても、状況は楽なものではありませんでした。前述の通り相対的に売上げを保てた前田建設工業以外は、売上げが著しく下降しました。渦中の西松建設も、この期間は40%以上も売上が下落してしまいました。

事件の進展

このように受注が落ち込み続け、先行きの見通しが立たない中で、西松建設としても売上げを確保するために違法な政治献金を続ける必要があったのかもしれません。

また、平成の初め頃から公共土木工事の受注調整に、建設族議員として小沢氏サイドの影響力が増大していったようです。特に小沢氏の地元である東北地方や岩手県内において、小沢氏が「利権大国」ともいうべき公共事業を牛耳る体制を築いていたとの指摘もあります。

そのような中で、西松建設は東北地方での受注基盤が弱かったこともあり、平成7年頃に小沢氏側と毎年約2500万円の献金についての約束をかわし、その後、東北地方での西松建設の受注高は増加しました。それが、小沢氏側への献金の効果とする見方が強いようです。

献金は当初は西松建設から直接流れていましたが、後に上述したダミーの政治団体経由で献金が行われるようになりました。そしてついに東京地検特捜部の捜査が入り、小沢氏側も西松建設側も逮捕者をだす結果となってしまいました。

事件後の西松建設と建設業界

ここまで見てきた通り、バブル崩壊以降建設業界は大きな試練に直面してきました。それで生き残るために、西松建設事件のような違法献金も後を絶たなかったのかもしれません。

西松建設の改革

西松建設ではコンプライアンス経営を標榜し、社外取締役に招へいした大物弁護士を中心に遵法意識を徹底させました。また公共工事の受注が2年間停止されるなど、社会的制裁も受けました。社長以下取締役はすべて交代するなど経営体制が刷新され、金融機関の信用も維持され会社は存続しました。

ゼネコンの体質改善

さらに西松建設を含むゼネコン各社は、受注の大幅減少にも耐えられる筋肉質な財務体質や組織になるべく、企業努力を行いました。その過程を耐えることができなかったゼネコンの経営破綻が幾つもありました。また他社との経営統合を通じて生き残りを図ったケースは、例を挙げればきりがありません。このようにゼネコン各社は淘汰や合従連衡により、不況にも耐えられる体質を培った企業が生き残ってきました。

建設投資の増大による受注拡大

東日本大震災も大きな節目になりました。つまり震災による復興特需で建設投資が増え、それによってゼネコン各社も受注を伸ばし息を吹き返しました。そして震災と度重なる甚大化した自然災害がもたらす被害によって『国土強靭化計画』が声高に叫ばれるようになり、必然的に各地で公共土木事業が増え、それはアベノミクスによって強力に後押しされました。

また首都圏を中心に大規模再開発が計画され、それに呼応してインフラ工事、特に高速道路や鉄道の整備も動き出しました。そして東京オリンピック関連の施設及びインフラ工事による需要が拡大して、ゼネコン各社は売上を大きく伸長させました。

最後に〜ゼネコンの今後の課題〜

このように体質改善と建設投資の拡大により、多くのゼネコンがバブル景気時以上の利益を享受しています。それでは建設業界の未来は安泰でしょうか。

残念ながら多くの不安要素があります。まず、建設投資は長いスパンで考えた場合減少傾向にあるという点です。近年は、オリンピックや震災復興により一時的に増えましたが、長期的にみると、人口減少に伴い建設投資も下降基調であることに変わりがありません。

また建設業界は慢性的な人手不足に悩まされています。熟練工が高齢化し若者が建設業界を敬遠しています。高品質な構築物を適正な期間で完工することが厳しくなる要因となり、採算悪化を招きます。

さらに利益自体は増加していますが、利益率の悪い体質は変わっていません。ですから労働生産性が悪いので、受注が減るとほとんど利益が残らなくなります。

このような要素は、建設業を取り囲む環境が悪化すると経営が厳しくなり、再び違法献金などのコンプライアンス違反を犯す行為の温床になります。建設業界は空前の好況を謳歌していましたが、考慮した不安要素に加え、Covid-19の影響もあり先行きが不透明になってきています。

それで、西松建設事件のような違法献金などの行為に戻ることがないように、コンプライアンス遵守を重視し続ける必要があるでしょう。

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