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社労士の試験にも出題される「高田建設従業員事件」とは

社労士(しゃろうし)という士業を聞いたことがあるでしょうか。

正式名称は社会保険労務士(しゃかいほけんろうむし)と言い、社会保険労務士法の専門家です。

社労士は国家資格者であり、『労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること』を目的とした業務に対応しています。

そんな国家資格の試験では、さまざまな労災保険に関する判例なども出題されています。

特に「高田建設従業員事件(たかだけんせつじゅうぎょういんじけん)」は、建設業界の事例にあたり、社労士の試験でも大きなポイントになる判例なのです。

本稿では高田建設従業員事件を紹介します。

「高田建設従業員事件」の概要

高田建設従業員事件は、業務中の普通貨物自動車に第三者の自動車が衝突した事故であり、損害賠償の請求裁判所ともめた事例です。

 労働者がいわゆる第三者行為災害により被害を受け、第三者がその損害につき賠償責任を負う場合において、賠償額の算定に当たり労働者の過失を斟酌すべきときは、右損害の額から過失割合による減額をし、その残額から労働者災害補償保険法に基づく保険給付の価額を控除するのが相当である。

引用:裁判例結果詳細 | 裁判所

事件の詳細について

高田建設の従業員は業務の一貫として、普通貨物自動車を運転していましたが、第三者が運転する乗用車と衝突。

その従業員は負傷してしまいました。

そこで第三者とその乗用車の会社に対して、さまざまな負担(通院費・療養費・入院付添費・入院雑費・入通院慰謝料・休業補償・弁護士費用など)から来る損害賠償を求めることにしたのです。

この裁判の判決は平成元年の4月11日に行われました。

また、負傷した従業員は自賠責保険から療養費、労災保険から休業補償が給付されており、第三者の会社からおよそ150万円が支払われています。

この裁判における第1審では、損害賠償の金額から労災保険給付分を控除し、従業員側の過失分(7割)を減額した損害賠償金を認めました。

しかし、従業員側は納得がいかなかったようで控訴することに。

そこで原審である大阪高等裁判所は、過失分を7割から6割に減額しました。

ですが、休業補償に自賠責保険と、乗用車の会社から支払われた150万円によって、高田建設の従業員が負担した全額が填補されていたため、損害賠償の請求を棄却したのです。

その後、従業員側は上告したというのが当事件の詳細になります。

高田建設の従業員側の上告は棄却

最高裁判所は休業補償支給分を先に控除(減額)し、残りの残額を過失相殺(※被害者側にも過失があった場合、その過失に応じて損害賠償額を減額すること)を妥当としました。

さらに、高田建設の従業員側の主張をそのまま通した場合、二重填補になります。

最高裁判所は損害賠償と労災保険給付を相互補完の関係としているため、これを認めなかったのです。

労働災害における損失を損害賠償として求める目的が、より多くのお金を貰おうというものに変化していたのかは定かではありません。

社労士はこのようなケースに対して、“法律”という観点からアプローチしていく必要があるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

社労士の試験では出題されやすい判例として有名な事件ですが、初めて聞いた人の方が多いかもしれません。

それは多重下請け構造という建設業界の特徴として、裁判事例の数も膨大だということが原因でもあるでしょう。

特にゼネコンとしては、建設現場の工程を止める訳にもいかないので、第三者との事故にはとてもデリケートなものです。

また、裁判沙汰に発展すれば、如何に協力会社が被害を被っても、企業のイメージに傷がつき兼ねません。

本来であれば、建設会社側の従業員が起こした事例でもあるので、節度を持ったマナーや社会的な信用にあたる問題として、共有されても良い事件だと考えられます。

そして、高田建設従業員事件は社労士としてのキャリアに進むために、社労士の試験の中でも特に重要な判例とも言われています。

この事件に限った話ではありませんが、昨今の建設業界における人員不足の観点から、円滑な工事計画の進行と業界そのもののイメージダウンを避けるためにも、各協力会社とゼネコンが一体となって、より第三者災害の防止に努めていく必要があるのではないでしょうか。

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