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『ピサの斜塔』が傾いているのはなぜ?【特殊な建築技術ではなかった】

中世ヨーロッパを代表する建物の1つ、イタリアの「ピサの斜塔」。

微妙に傾斜がついているこのタワーは、世界遺産に登録されている「ピサのドゥオモ広場」の一部を構成している建物です。

また、かのガリレオ・ガリレイが実験を行った伝説が残っており(真実は定かではないようです)、イタリアの観光スポットとしても非常に有名ですが、なぜこのタワーが傾いているのか気になった人は多いのではないでしょうか?

イタリアという国は食文化や芸術、建築という分野でもなにかと優れている印象があります。きっと我々アジア民族では到底思いつかない、卓越した美的センスと建築の技術で建てられたのではないか?そんなふうに考えている人もいるかもしれません。

しかし、実際はそうではないのです。
今回はピサの斜塔が傾いているその理由についてお届けしていきます。

そもそもピサの斜塔は何なのか?


画像引用:Opera della Primaziale Pisana: sito ufficiale Tower

今回のテーマになっているピサの斜塔ですが、名前や建物を知っていても、どのような目的で建てられたのかを知らない人は多いです。

冒頭でも触れている通り、ピサの斜塔は「ピサのドゥオモ広場」の一部に過ぎません。

そして、言ってしまえばピサの斜塔とは、イタリアのトスカーナ州ピサ市内にある、ドゥオモ(教会)の鐘楼です。

教会で行われる“ミサ”の始まりと終わりを知らせる鐘の役割を担っており、ただの斜塔というとわけではないのです。

芸術性の高いヨーロッパ特有の建築様式


画像引用:Opera della Primaziale Pisana: sito ufficiale Tower

教会の鐘楼といえど、やはり神聖な塔であることには変わりません。

ピサの斜塔にも建築物として格式高く、芸術性の高い装飾が随所に見られます。これらは11~12世紀ごろにヨーロッパの各国(フランス、イタリア、ドイツ、スペイン、イングランド)で広まった「ロマネスク建築」という建築技法が由来です。

ロマネスク建築は当時、教会堂建築で使われているポピュラーな建築様式で、宗教的な要素が強い技法でもあります。

このころのヨーロッパでは立派な教会堂を建てることで、神様を信仰する人々の感謝の気持ちを象徴し、各地で争うように建設されていました。そして、実際にその芸術性が評価され始めたのは1840年ごろからで、それ以前はロマネスクという言葉には蔑称に近い意味があったのです。

ピサの斜塔が傾いているのは建築技術ではなく地盤の調査不足

建築様式の歴史を紐解いていくと、ロマネスク建築の建物として代表的な「ピサのドゥオモ広場」も、神様への信仰心を表すのが目的なのだと納得できます。

当然、教会堂に必要不可欠な鐘楼も相応の建築物であるはずなのですが、ピサの斜塔というの名前の通り傾いています。着工時の1173年には垂直に建てられていたようですが、工期が進むにつれて徐々に傾いていったようです。

原因は地盤が弱い上に事前の調査不足だといわれています。

画像引用:Googl マップ

ピサの斜塔は、近くを流れているアルノ川から流れてきた軟らかい土壌を基礎地盤にしていました。

地図を見ても分かる通り、アルノ川はピサ市の中心を流れています。川の氾濫によって砂質のローム層や粘土層の堆積で出来上がった土壌が多かったのでしょう。

当時の時代背景から察するに、乱立していく教会に焦りを感じて大聖堂の建築工事を急いだのかは定かではありません。ですが、当の傾きは建築技術の由来によるものではなく、地盤調査不足のまま工事を着工したのが原因なのは確かなようです。

結果的に神様への信仰心は、傾いた鐘楼で表現されることになってしまいました。

建物の完成までに200年近くかかった

ピサの斜塔は第1~3工期まであり、工事の竣工までの単純計算で200年近い歳月がかかっています。

  • 第1工期:1173年~1178年(5年)
  • 第2工期:1272年~1278年(6年)
  • 第3工期:1360年~1372年(8年)

工事期間だけで計算すれば19年になりますが、前項の地盤調査不足が招いた不等沈下がどれだけ工事に影響を与えたのかは図り知れません。

また、工事竣工の1372年にもなると、建築様式のトレンドも一部ロマネスク建築の要素を引継いだ「ゴシック建築」が台頭してきており、世界的にペストが流行していた時期にもなります。

ピサの斜塔にはこのような混沌とした時代背景の中で竣工した歴史もあり、芸術性の高さだけではない魅力を感じ取れる面白さも備えています。

幾度の震災を受けても600年以上倒れず

塔の竣工からおよそ600年。

幾度となく地震(マグニチュード4以上)に見舞われたピサの斜塔ですが、今までで一度も倒れたことがありません。

実は基礎地盤の柔らかさと塔のスペックが奇跡的にかみ合ったことで、地震の動きと共振することを防ぎ、倒壊しなかったと判明しています。

また、ある研究チームが地盤と構造物の相互作用を数値化してみると、ピサの斜塔の数値は世界的な記録値になるようです。

まとめ

竣工から600年以上が経過し、幾度の震災を受けながらもロマネスク建築の美しい外観を保ち続けるピサの斜塔は、まさに奇跡の塔といわれても過言ではありません。

現在ではイタリア観光の名物スポットとして、世界中の人達から愛される存在になりました。

ピサの斜塔は「ピサのドゥオモ広場」にある大聖堂の付随する建物で、大聖堂・洗礼堂・鐘楼・墓所回廊の4つの1つにあたります。

建物の歴史やエピソードなど、調べれば調べるほどに深い魅力が詰まった建物なのでイタリア旅行へ出かけた際にはぜひ、一度訪れていただきたい場所です。

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