旧帝国ホテル(ライト館)の建築デザイン【フランク・ロイド・ライト設計】

日本が第二の故郷と言われたフランク・ロイド・ライト設計の旧帝国ホテル(ライト館)。

現在は建物の一部が移築され当時の姿を見ることはできませんが、近代建築の巨匠と呼ばれたフランク・ロイド・ライト設計の旧帝国ホテル(ライト館)は、彫刻された大谷石とテラコッタタイルの装飾により魅力的な建築デザインの建物を日本に残しました。

今回はフランク・ロイド・ライトが設計した旧帝国ホテル(ライト館)をご紹介していきます。

フランク・ロイド・ライト設計の旧帝国ホテル(ライト館)

画像引用:帝国ホテル

旧帝国ホテル(ライト館)が完成するまでにはいろいろな困難がありましたが、意匠性に富んでいるというだけでなく人が利用する建物として、耐震性と耐火性を考慮して建てられています。

ここでは建築家フランク・ロイド・ライトと旧帝国ホテル(ライト館)の基本的な建物構造についてお伝えしていきます。

旧帝国ホテル(ライト館)

旧帝国ホテル(ライト館)は、近代建築の巨匠と呼ばれるフランク・ロイド・ライトにより設計・建設されました。

1923年(大正12年)に竣工、落成式は9月1日と、その日は関東大震災が東京を襲い周辺の建物は倒壊や火災に見舞われましたが、旧帝国ホテルは僅かな損傷はありながらも、ほとんど無傷であったことに人々から注目されました。

旧帝国ホテルは、鉄筋コンクリートと煉瓦コンクリート造の二つの構造を持ち、地上3階(中央棟5階)、地下1階、客室数270、鷲が翼を広げたような勇姿のある外観が特徴的です。

10のブロックをエキスパンションジョイント(建物を分割して1ブロックずつ継ぎ合わせるように建設される手法)で繋ぐ構造となっているため、柔軟性があり、一部建物が倒壊しても他に影響が出ない仕組みをとっていました。

また世界で初めて全館スチーム暖房を採用しています。

旧帝国ホテルの建設は、フランク・ロイド・ライトの完璧主義から大幅に予算がオーバーし、工期も遅れ経営陣と衝突が多かったようです。

旧帝国ホテルの完成まで携われずフランク・ロイド・ライトは日本を離れることになってしまいますが、弟子である遠藤新が引き継ぎ1923年に完成しました。

建築家:フランク・ロイド・ライト

フランク・ロイド・ライトは近代建築三代巨匠と呼ばれたアメリカの建築家です。

フランク・ロイド・ライトの建築は「自然と建築の融合」をテーマにされており、土地と建物との一体化、周辺環境との融和を目指していました。

代表的な建築は「カウフマン邸(落水荘)」「グッゲンハイム美術館」などの世界遺産に登録された建築物や「ジョンソンワックス社」が有名、日本では旧帝国ホテルの他に「自由学園朝日館」「旧山邑家住宅(きゅうやまむらけじゅうたく)」があります。

フランク・ロイド・ライトの建築は自然をお手本とした外観と内観、モダニズムの流れをくみ、幾何学的な装飾と流れるような空間構成の特徴があります。

旧帝国ホテル(ライト館)の建築デザインと魅力

画像引用:帝国ホテル中央玄関

では、フランク・ロイド・ライトが設計した旧帝国ホテル(ライト館)の建築デザインと魅力身ついてご紹介していきます。

平等院鳳凰堂を設計モチーフとした左右対称の外観

平等院鳳凰堂をモチーフに設計されたと言われており、左右対象となっている建物の外観は堂々とした印象を受けます。

エントランス前に設けられた池も含め、建物全体の意匠性に優れており、西洋建築には珍しい深い軒が設けられています。

この軒にも美しい幾何学的な装飾が施されていて、設計者フランク・ロイド・ライトの妥協ないデザインを見ることができます。

大谷石とテラコッタタイルの重厚な外観

旧帝国ホテルの意匠性を作っているとも言えるのが、豊富に使用されている大谷石とテラコッタタイルです。

大谷石は加工がしやすく燃えにくい特性を持つ耐火性に優れた素材です。

旧帝国ホテルは日本的な大谷石を使用しているためか、西洋建築とも日本建築とも言えない佇まいを感じさせます。

また、柱や壁などには旧帝国ホテルのために作られたテラコッタタイルが張られていて、大谷石とテラコッタタイルの合わさった意匠性が建物の存在感を醸し出しています。

内観にも彫刻された大谷石とテラコッタタイルの装飾がされていて、メインホールの大空間に入る光は、彫刻された大谷石に陰影を与え、独特な雰囲気を感じさせます。

フランク・ロイド・ライトは日本の石工職人たちが作った大谷石の作品を見て妥協のないものづくりの姿勢を見て感銘を受けたという逸話もあるようです。

空間の魔術師と言われるライトの空間演出

空間の魔術師と呼ばれたフランク・ロイド・ライトは、日本古来により使われている建築技法を用いて空間を演出しています。

旧帝国ホテルのエントランスは低い天井となっており、小上がりの階段を上るとその先は高い天井の大空間が広がる作りとなっています。

これは低くなっている天井による閉鎖的な感覚から、大空間へと導くことで人の気持ちを解放させる効果を与えています。

フランク・ロイド・ライトの建築には、ステップフロアがよく採用されていて、各空間の床の高さや天井の高さが異なる空間が設けられています。

このレベル(高さ)の違う空間は、階段を上るごとに空間が広がっていき、視界が開けていく印象を受けます。

部分的に移築された旧帝国ホテル

旧帝国ホテルは、年数による老朽化と地盤沈下から多くの反対を受けながらも1968年に解体されました。

現在は愛知県犬山市にある博物館明治村に、旧帝国ホテルのエントランス部分が移築され見学することができます。

近代建築を代表する建築家の建物が一部しか残っていないのは残念ですが、フランク・ロイド・ライトが残した旧帝国ホテルの空間演出、大谷石とテラコッタタイルの装飾性を今でも体感することができます。

まとめ

旧帝国ホテルの他に日本に残るフランク・ロイド・ライトの建築は「旧山邑家住宅(きゅうやまむらけじゅうたく)」「自由学園朝日館」があり、一般公開がされています。

建築の歴史で必ず通ると言ってもいい有名建築家が設計した建物を日本で体感できるというのは、実はとても貴重なことです。

フランク・ロイド・ライトが設計した建物に興味があるという方は、ぜひ現物を見に行って、フランク・ロイド・ライトの意匠性と空間演出を体験していただきたいと思います。

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