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両立支援等助成金の女性活躍加速化コースとは、どのような助成金なのか?

上のグラフをご覧ください。これは、100人以下の中小企業における正社員などの新規採用者の女性比率です。

新規採用における女性比率が50%以上という企業は、全体で約3割程度しかなく、小規模な中小企業ではまだまだ女性の採用が進んでいないことが分かります。

少子化の影響で労働人口が減少している昨今、女性の労働力は企業にとって欠かせないものとなってきています。

女性が仕事を続けるためには、出産・育児などによる離職を防止することだけでなく、女性の能力を正しく評価し、キャリアアップの促進することも重要な課題と言えるでしょう。

この「女性活躍加速化コース」は、そんな課題を解決すべく、女性労働者のキャリアアップを図る取組や積極的に採用するための取組などを実施し、女性労働力数の増加と管理職への積極的な登用を実施した企業を後押しするための助成金制度です。

建設業界における女性労働者の実情

一言で「女性労働者数の増加」、「女性管理職数の増加」と言っても、産業によっては中々実現が難しい課題と言えます。

建設業をはじめとした工業系産業においては、そもそも学生数から見ても女性の方が圧倒的に少ないのですから、資格や専門知識を必要とする専門職への採用数が少なかったとしても仕方がありませんよね。

0% 0%超 10%未満 10%以上25%未満 25%以上50%未満 50%以上75%未満 75%以上 無回答
無期契約労働者 回答数 3 19 11 5 0 0 0
割合 7.9% 50.0% 28.8% 13.3% 0.0% 0.0% 0.0%
有期契約労働者 回答数 3 2 4 6 1 1 0
割合 17.8% 11.5% 23.6% 35.6% 5.8% 5.8% 0.0%

参考:厚生労働省委託調査「平成30年度仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書 企業アンケート調査結果」15p図表Ⅲ-13、17p図表Ⅲ-17

上の表は、建設業における、無期契約労働者に占める女性比率と有期契約労働者に占める女性比率を表したものです。企業規模は100人以下の小規模中小企業です。

この表を見る限り、社内労働者の女性比率が50%未満の企業の方が圧倒的に多いことが分かります。当然、従業員数における女性比率の低さを考えれば、女性管理職が男性管理職に比べ圧倒的に少なかったとしても仕方がありませんね。

しかし、現代の労働者人口の減少を考えると、女性を上手く活用しなければ人手不足が続き、企業運営がままならなくなってしまいます。

今回ご紹介する「両立支援等助成金」の1つ「女性活躍加速化コース」は、女性社員の活躍を後押しする中小企業に対して、助成金を支払う制度です。この助成金を活用して、建設業界で活躍する女性労働者の数を増やしてみてはいかがでしょうか?

女性活躍加速化コースの目的と目標

厚生労働省が発行しているリーフレットによると、

「厚生労働省では、女性社員の活躍推進に取り組む中小企業を応援しています。」

引用:厚生労働省 リーフレット

とあります。

産業によっては、女性社員数が男性社員を上回り、管理職への登用も進んでいます。ですが、全体で見るとまだまだ女性が活躍できる場が少なく、管理職への登用もなかなか進んでいないのが実情です。

そんな女性が活躍できる場を提供できていない企業のために準備されているのが、この「女性活躍加速化コース」です。

では、この助成金制度の目的とはどのようなものなのでしょうか?また、助成金の支給申請となる「目標」にはどのようなものがあるのでしょうか?

ここでは、「女性活躍加速化コース」の目的と目標についてご紹介します。

趣旨

「女性活躍加速化コース」の支給要領によれば、

「女性労働者の能力の発揮及び雇用の安定に資するため、自社の女性の活躍の状況を把握し、男性と比べて女性の活躍に関し改善すべき事情がある場合に、当該事情の解消に向けた目標を掲げ、女性が活躍しやすい職場環境の整備等に取り組み、その結果。当該目標を達成した中小企業事業主に対して、助成金を支給する。」

引用:厚生労働省 女性活躍化コース支給要領

とあります。

さらに、厚生労働省のリーフレットによれば、

「中小企業事業主が女性社員の活躍に関する状況把握・課題分析を行ったうえで、『女性の職業生活における活躍の推進に関する法律』(女性活躍推進法)に基づき、課題解決に相応しい取組目標及び数値目標を盛り込んだ一般事業主行動計画(行動計画)を策定・公表し、取組目標を実施したことにより、数値目標を達成した場合に助成金を支給しています。」

引用:厚生労働省 リーフレット

とあります。

つまり、以下にご紹介する取組目標と数値目標を盛り込んだ「一般事業主行動計画」を作成し、その計画に基づいて女性労働者数の増加や女性管理職の比率増加など、数値目標を立てて計画を実行することで、女性が活躍できる場を広げることがこの助成金の目的なのです。

ここで策定される数値目標や取組目標は、一朝一夕で達成できるものでもありませんので、「一般事業主行動計画」は2年~5年を目安に策定しましょう。

なお、この助成金制度で支給対象となる取組目標は以下の4種類です。

女性の積極採用に関する目標

「女性の積極採用に関する目標」は、現在の労働者の男女比を見た時に圧倒的に女性の数が少ない企業において、女性労働者を増やす取り組みを実施するために策定する目標です。

数値目標

支給対象となる目標は以下の通りです。

  1. ある採用区分(中途採用を含む)で、採用における女性の競争倍率(応募者数 / 採用者数)を〇倍まで引き上げる
  2. ある採用区分(中途採用を含む)で、取組前に比較して女性の採用人数を〇人以上増加させる
  3. 全採用者に占める女性の割合を〇%以上引き上げる

現在の社内の女性労働者数や男女比率をみて、設定しましょう。

取組目標

支給対象となる取組目標は以下の通りです。

  1. 女性のいない又は少ない職種に、より多くの女子学生の応募が得られるような取組
    1. 大学の工業系学部・専門学校等と連携した女子学生向けセミナーの実施
    2. 女子学生向けパンフレットの作成と配布
  2. 女性のいない又は少ない職種に、中途採用できるような取組
    1. 女性向けセミナーの実施
    2. 女性を対象とする職場見学会の実施
  3. 新たに女性を配置しようとする現場へのハード面での環境整備
    1. 更衣室、トイレ、シャワー室、休憩室・仮眠室等の改修等 等

これら取組目標は一部です。

詳細は、厚生労働省発行のリーフレットに掲載されています。

女性の配置・育成・教育訓練に関する目標

例えば、工事現場事務所で施工管理として働けるように、資格取得のためのセミナーを実施したり、工事現場事務所の整備を行ったりと、現在女性労働者の少ない部署に女性を配置したり、管理職に登用したりするための取組について、目標設定をして行動計画の策定を行います。

数値目標

数値目標としては、以下の様なものが支給対象となります。

  1. 女性のいない又は少ない雇用管理区分(職種・資格等)で、女性の比率を〇%まで引き上げる
  2. 管理職に占める女性比率を〇%以上とする 等

これらの数値目標は一部です。その他の目標についてはリーフレットでご確認ください。

取組目標

取組目標は、数値目標を達成するために行います。

支給対象となる取組目標は、以下の通りです。

  1. 女性のいない又は少ない職種・資格等への配置転換・コース転換を可能とするための取組
    1. 女性が受講する通信教育等の費用負担
    2. 労働条件の見直しなど、就業規則の改正
  2. 管理職登用準備研修の受講者選定基準の明確化や、受講者推薦担当者への説明の実施 等

その他にも取組目標がありますので、リーフレットをご確認ください。

女性の積極登用・評価・昇進に関する目標

「女性の積極登用・評価・昇進に関する目標」は、女性管理職を増やすための取組目標です。

建設業界の場合、未だ女性に対する差別的考えを持つ現場作業員もいる中で、女性社員を管理職に登用するには、課題も多いことでしょう。

ですが、事務系部門や設計部門など女性を管理職として登用できる部署もありますので、社内の課題などを十分に踏まえた上で、目標設定をしましょう。

数値目標

支給対象となる数値目標は以下の通りです。

  1. 管理職に占める女性の比率を〇%以上とする
  2. 課長級/次長級/部長級の女性管理職を現員の〇人から△人に増加させる 等

その他の目標については、リーフレットでご確認ください。

取組目標

支給対象となる取組目標は以下の通りです。

  1. 管理職を目指す女性社員を対象とした、キャリア形成や動機付けのためのセミナーの実施
  2. 管理職・資格を必要とする専門職(社内資格を含む)をめざす女性社員を対象としたキャリアカウンセリングの実施 等

この他にも、いくつかの取組目標がありますので、リーフレットでご確認ください。

多様なキャリアコースに関する目標

「多様なキャリアコースに関する目標」は、総合職への転換を希望する一般職の女性社員のための取組です。

自社内の必要性に応じて計画を策定しましょう。

数値目標

支給対象となる数値目標は以下の通りです。

  1. 一般職の女性労働者の内、総合職へのコース転換者を●年度の〇%から□%以上増加させる
  2. 一般職の女性労働者の内、総合職へのコース転換者を□人以上増加させる

取組目標

支給対象となる取組目標は以下の通りです。

  1. 一般職から総合職へのコース転換制度や試験制度の構築と実施
  2. 総合職へのコース転換をめざす一般職社員、準総合職社員を対象とした研修制度の導入、実施

これら取組については、リーフレットでご確認ください。

支給対象となる事業主

先ほどご紹介した取組目標や数値目標を達成できたとしても、以下にご紹介する支給要件を満たしていない事業主は、支給対象となりません。

ここでは、助成金の支給要件と不支給要件についてご紹介します。

支給対象となる事業主

支給対象となるのは、以下の要件をすべて満たす中小企業事業主です。全部で10項目あります。

  1. 行動計画を策定し、中小企業事業主の人事労務管理の機能を有する部署が属する事業所の所在地を管轄する都道府県労働局長へ女性活躍推進法第8条第7項に基づき届出を行ったこと
  2. 職業生活と家庭生活の両立に資する雇用環境の整備に関する取組を行ったこと
  3. 長時間労働の是正など働き方の改革に関する取組を行ったこと
  4. 女性活躍推進法第8条第8項に基づく公表について、女性の活躍推進企業データベースの掲載により行ったこと
  5. 女性活躍推進法第16条第2項に基づき、女性の活躍に関する情報を女性の活躍推進企業データベースへの掲載により公表していること
  6. 行動計画に基づいて、計画期間内に支給対象となる取組目標の中から1つ以上の取組を実施したこと
  7. 行動計画に定めた目標について、その達成のための取組目標を達成した日の翌日から3年を経過する日までに数値目標を達成し、さらに支給申請日までその状態が継続されていること
  8. 当該数値目標を達成した旨について、女性の活躍に関する情報を女性の活躍推進企業データベースの備考欄への掲載により公表していること
  9. 機会均等推進責任者及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第29条の職業家庭両立推進者を選任していること
  10. 共通要領の「0203常時雇用する労働者」の規定にかかわらず、常時雇用する労働者は、雇用契約の形態を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指すものであって、以下のどちらかに該当するものとすること
    • (ア)期間の定めなく雇用されている者
    • (イ)一定の期間を定めて雇用されている者又は日々雇用される者であってその雇用期間が反復更新されて事実上(ア)と同等と認められる者

これら要件の詳細は、支給要領で確認できます。

支給されない要件は?

上記支給要件を満たしても、以下の不支給要件に1つでも該当する場合は、助成金の支給はありません。支給要件だけでなく、この不支給要件もしっかりと確認しておきましょう。

  1. 支給申請日及び支給決定日を計画期間に含む届出書について、本社等の管轄労働局長に届け出が行われていない場合
  2. 給申請時点及び支給決定までの間に、男女雇用機会均等法に違反し、同法第29条に基づく管轄労働局長の助言、指導又は勧告を受けたが、是正していない場合
  3. 支給申請時点及び支給決定までの間に、育児・介護休業法第10条、第16条の10、第18条の2、第20条の2、第23条の2に違反し、同法第56条に基づく管轄労働局長の助言、指導又は勧告を受けたが、是正していない場合
  4. 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、育児・介護休業法、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律及び女性活躍推進法の重大な違反があることにより、当該事業主等に助成金を支給することが適切でないと認められる場合

これら要件の詳細は、支給要領で確認できます。

支給申請と支給額

画像引用:厚生労働省

上の図は、令和2年4月1日に「女性活躍加速化コース」のための行動計画を策定してから、申請手続きを行うまでの受給手続の例です。

この図にあるように、申請手続きを行うためには、以下の手順と期間で行わなければなりません。

  1. 一般事業主行動計画」を策定し、本社管轄の労働局長の承認を得る
  2. 一般事業主行動計画」に従って、行動計画を実施・・・3年~5年
  3. 幾つかある取組目標の内、1つ以上を達成する
  4. 取組目標達成から3年以内に、数値目標を達成する
  5. 数値目標を達成した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請

「一般事業主行動計画」と助成金の支給申請はともに、本社管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出してください。

支給申請

助成金の支給申請には、様式の決まった書類の提出が必要です。以下の書類を厚生労働省のHPからダウンロードして準備しましょう。

【共通様式】

  1. 共通要領様式第1号「支給要件確認申立書」
  2. 支払方法・受取人住所届
  3. 共通要領様式第2号「生産性要件算定シート」
    1. 支給申請で生産性要件を満たした場合に支払われる額を申請する場合に提出
  4. 共通要領様式第3号「与信情報承諾書」
    1. 生産性要件で申請する場合必要

「生産性要件算定シート」は、生産性向上について証明できる場合、この算定シートとそれを証明できる書類を添付することで、以下にご紹介する助成金の「生産性要件」の額が支給されます。

【申請書類】

  1. 様式第1号「両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)支給申請書」
  2. 別様式の1:支給申請の理由となる数値目標が「管理職に占める女性労働者の割合引き上げ」の場合のみ提出
  3. 別様式の2:支給申請の理由となる数値目標が「女性が少ない職場における女性の人数または比率の引き上げ」の場合のみ提出

提出書類の詳細については、それぞれの申請書類をダウンロードできる厚生労働省のHPや、支給要領でご確認ください。

また、生産性要件については、共通要領や厚生労働省のHP「労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます」というページでご確認ください。

申請に必要な添付書類

支給申請には、添付書類も必要です。

  1. 行動計画の写し
  2. 行動計画策定時の雇用管理区分ごとに見た職務又は役職における男女の労働者数が分かる書類
  3. 申請事由となった数値目標及び取組目標に関連する自社の女性労働者の活躍に課題があることが分かる書類
  4. 行動計画の労働者への周知をしていることが分かる書類
  5. 雇用契約書、労働条件通知書に加え、短時間正社員が目標達成に係る対象者の場合には、短時間正社員の制度について規定した就業規則など
  6. 取組目標を達成したこと及びその期日を明らかにする書類
  7. 数値目標を達成したこととその期日を明らかにする書類
  8. 管理職に占める女性労働者の割合の引き上げを数値目標とする場合は、対象労働者に係る賃金台帳
  9. 生産性要件を満たした場合の額の適用を受けようとする中小企業事業主は、「共通要領」に定める書類
  10. その他管轄労働局長が必要と認める書類

目標達成を証明するための書類については、厚生労働省発行のリーフレットで確認できます。

支給額

「女性活躍加速化コース」の助成金支給申請は、1事業主1回のみです。

支給額は、以下の通りです。

  • 支給額:475,000円
  • 生産性要件:600,000円

まとめ

建設業界ではまだまだ女性が活躍できる場が多くありません。もちろん、その仕事内容や現場で働く男性労働者の方々との人間関係を考えると、女性を現場で活躍させるのは残念ながら、容易なことではありません。

ですが、建築・土木関連の学部は、他の工学系学部に比べ、比較的女子学生が多い学部でもあります。その専門を勉強している女性たちを活用できる部門の整備や、ハード面を含めた社内の整備などを行うことで、多くの女性に活躍してもらうことも出来ます。

少子化による労働人口が減少している今、多くの女性に活躍してもらえるよう、意識改革から始めてみてはいかがでしょうか?

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