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キャリアアップ助成金の選択的適用拡大導入時処遇改善コースとは、どのような助成金なのか?

有期雇用労働者等の多くは、現在社会保険の被保険者ではありません。その理由として、事業主が未加入・有期雇用労働者等が加入要件を満たしていない、といった2つの理由が考えられます。

ですが、既に社会保険制度に加入し、その制度について知っている方なら判る通り、社会保険に加入するメリットが多くあります。例えば、週の労働時間数を増やすことが出来ますし、優秀な人材を継続して雇用することも出来るようになります。

今回ご紹介する「キャリアアップ助成金」の「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」は、現在社会保険被保険者ではない有期雇用労働者等を、社会保険に加入させるために処遇を改善させた事業主に対し助成金を支給するという制度です。

この記事や、厚生労働省が配布しているパンフレットなどを読んで、是非、加入の検討をして頂けたらと思います。

選択的適用拡大導入時処遇改善コースの目的

まずは、この「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」の目的・概要についてご紹介します。

目的


画像引用:政府広報オンライン「暮らしに役立つ情報:パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象が広がっています。」

社会保険に加入するということは、労働者にとって多くのメリットが有ります。

上の図は、国民年金と厚生年金の支給額の違いを表したものです。これを見る限り、厚生年金を支払っている場合と支払っていない場合では明らかに厚生年金を支払っている方が、将来的にもらえるお金に違いがあることが分かります。

有期雇用労働者等の場合、その多くは低賃金で働くことが多く、さらに短期間で職場を転々としなければならないケースもあり、老齢になっても働き続けなければならないという厳しい状況にあります。

優秀な人材であっても何の保証もないため、例えば現在の様な感染症などが蔓延したとしても、自主的に仕事を休むことが出来ない状況にあるのです。

ですが、事業主側で彼ら有期雇用労働者等の待遇改善を実施し、社会保険に加入させることが出来れば、安心して働くことも出来ますし、将来設計も立てやすくなることでしょう。

この制度の目的は、将来不安を抱える有期雇用労働者等に、安心して働いてもらうために社会保険制度への理解と加入を促進することなのです。また、それにより企業全体の生産性向上も、目的としているのです。

概要

厚生労働省が配布しているパンフレットによると、

「労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を実施する事業主が、雇用する有期雇用労働者等に対して、社会保険の制度概要やメリット等を説明・相談などを行うとともに、保険加入に関する意向確認等を行うなど、有期雇用労働者等の意向を適切に把握し、労使合意に反映させるための取組を行い、当該措置により当該有期雇用労働者等を新たに社会保険の被保険者とした場合に助成します」

引用:厚生労働省 キャリアアップ助成金パンフレット

とあります。

簡単に説明すると、「現在社会保険に加入していない有期雇用労働者等に、社会保険に加入するメリットや社会保険制度についての説明をし、さらに有期雇用労働者等からの相談に応じた上で、有期雇用労働者等本人の希望を把握し、当該労働者を社会保険に加入させたら、助成金が貰える」ということです。

支給対象は?

では、支給の対象となるのはどのような場合なのでしょうか?

対象となる事業主は?

支給対象となる事業主の要件は、全部で9つあります。その内のいくつかをご紹介します。

当然ながら、この「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」の概要にある通り、労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を実施した事業主が対象となります。

また、この社会保険適用拡大措置を実施する前日までに、支給対象となり得る有期雇用労働者等に対して、社会保険制度の概要と加入するメリットを、社会労務士やファイナンシャルプランナーなど、外部専門家の方を講師とした説明会を実施する必要もあります。

その他にも細かい要件がありますので、厚生労働省が配布しているパンフレット支給要領などをしっかりと確認しましょう。

対象となる労働者は?

対象となる労働者は、以下5つの要件全てに該当する労働者です。

  1. 支給対象事業主に雇用される有期雇用労働者等であること
  2. 労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を実施した日の前日から起算して過去3ヶ月以上の期間継続して有期雇用労働者等として雇用されていた者であること
  3. 社会保険に加入させた日の前日から起算して過去3ヶ月間、社会保険の適用要件を満たしていなかった者であって、かつ、支給対象事業主の事業所において過去2年以内に社会保険に加入していなかった者であること
  4. 労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を実施した事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること
  5. 支給申請日において離職していない者であること
    • 本人の都合による離職、本人の責めに帰すべき理由による解雇は除く
    • 天災その他やむを得ない理由のために事業継続が困難となった場合の解雇も除く

社会保険加入には要件があり、対象とならない労働者は加入することができません。

労使合意に基づき社会保険の適用を拡大させるということは、社会保険加入要件を満たさない有期雇用労働者等に対し、要件を満たす様に労働時間や基本給などの労働条件を改定することで、適用される様にする必要があります。

何をすれば支給される?

「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」という助成金を支給されるためには、以下のことを実施しなければなりません。

  • 「労使合意に基づき」社会保険適用拡大措置の実施
  • 当該措置の実施日前日までに、対象となる有期雇用労働者等に対し、社会保険制度の概要とメリットについて説明会を実施
    • 社会労務士、ファイナンシャルプランナーなど、外部専門家を活用すること
    • 無報酬、顧問契約の専門家の場合は支給対象外とする
    • 個別の相談会を併せて実施
  • 対象となる有期雇用労働者等の意見を聴く
    • アンケート等でもOK

説明会やアンケートなどの細かい内容については、厚生労働省が配布しているパンフレットや支給要領で確認してください。

また、助成額を加算させる取り組みもあります。

対象となる有期雇用労働者等の基本給を、2%以上増額した場合、その増額割合に応じて助成額が加算されます。詳細は、以下「支給額」でご確認ください。

また、有期雇用労働者等の生産性の向上を図るための取組を実施した場合にも、助成額が加算されます。

  1. 評価・処遇制度の導入
    • 有期雇用労働者等に対する評価・処遇制度、昇進・昇格基準、および賃金制度
    • 当該制度が実施されるための合理的な条件を労働協約または就業規則に明示
    • 退職金制度について、事業所を退職する労働者に対し、在職年数等に応じて支給される退職金を積み立てるための制度
      • 積立金・掛金の全額を事業主が負担
  2. 研修制度
    • 有期雇用労働者等の職務の遂行に必要な知識、スキル、能力の付与を目的にカリキュラム内容、時間等を定めた教育訓練・研修制度
    • 生産ラインまたは就労の場における通常の生産活動と区別して業務の遂行の過程外で行われる教育訓練等
      • 通信講座、e-ラーニングでもOK
    • 1人につき20時間以上の教育訓練等
    • 教育訓練等の時間の内2 / 3以上が労働関係法令等により実施が義務付けられていないモノ
    • 教育訓練に係る、受講料・交通費などの諸経費は全額事業主が負担
    • 教育訓練等の期間中の賃金は、通常の労働時の賃金から減額されずに支払われること
      • 就労時間外に教育を実施する場合は、割増賃金を支払うこと

これら、生産性向上のための取組について、厚生労働省が配布しているパンフレットや支給要領で詳細を確認してください。

支給申請と支給額

ここからは、支給申請書類と支給額についてご紹介します。

支給申請期間


画像引用:厚生労働省 キャリアアップ助成金パンフレット 60p

上の図は、この「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」本体部分と生産性の向上を図るための取組に係る加算の場合の申請期間の例です。

支給申請期間は、措置該当日以降6ヶ月の賃金を支給した日の翌日から起算して2ヶ月以内です。

措置該当日以降に新たに社会保険の被保険者となった有期雇用労働者等の基本給を一定の割合以上増額して、助成額の加算適用を受ける場合は、対象労働者の基本給を増額後6ヶ月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2ヶ月以内が申請期間となります。


画像引用:厚生労働省 キャリアアップ助成金パンフレット 60p

助成額の加算適用を受ける場合は、その内容によって申請期間に違いがありますので、間違えない様にしましょう。

申請書類と添付書類

「キャリアアップ助成金」は、どのコースも事前に「キャリアアップ計画書」を作成し、管轄労働局長の認定を受ける必要があります。

【キャリアアップ計画書】

  • 様式第1号「キャリアアップ計画書」
  • 様式第2号「キャリアアップ計画書(変更届)」

変更届は、計画に変更がある場合に提出します。

【申請書類】

  • 第3号「キャリアアップ助成金支給申請書」
  • 様式第4号「事業所確認表」
  • 様式第3号 別添様式6-1「選択的適用拡大導入時処遇改善コース内訳(本体分及び生産性向上取組加算分)」
  • 様式第3号 別添様式6-2「選択的適用拡大導入時処遇改善コース内訳(基本給増額加算分)」
  • 様式第3号 別添様式6-3「導入した評価・処遇制度の概要票」
  • 様式第3号 別添様式6-4「導入した研修制度の概要票」
  • 様式第3号 別添様式6-5「評価・処遇制度及び研修制度対象労働者名簿」

申請書類は、必要に応じて提出してください。

別添様式6-1までの3種類は提出必須です。その他の書類については対象となるものを添付書類と一緒に提出します。

【本体部分に係る添付書類】

  1. 交通要領様式第1号「支給要件確認申立書」
  2. 支払方法・受取人住所届
  3. 管轄労働局長の認定を受けた「キャリアアップ計画書」の写し
  4. 社会保険加入のメリットを周知するために配布した説明資料
  5. 社会保険制度の概要・加入メリット等に関する説明会の開催等に係る資料
  6. 外部専門家の活用に係る資料
  7. 社会保険加入に関するアンケート調査等に係る資料
  8. 任意特定適用事業所該当通知書
  9. 対象労働者の労働基準法108条に定める賃金台帳または船員法第58条の2に定める報酬支払簿
  10. 対象労働者の出勤状況・出退勤時刻を確認するための書類
  11. 基本給および定額で支給されている諸手当を新たに社会保険の被保険者となる前と比べて減額していないことおよび、制度導入後6ヶ月において社会保険の被保険者であることについての対象労働者本人の確認書
  12. 対象労働者の雇用契約書等
  13. 労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を実施した旨を事業所内すべての有期雇用労働者等に対して周知したことが分かる資料
  14. 中小企業事業主である場合、中小企業事業主であることを確認できる書類

詳細については、厚生労働省が配布しているパンフレット支給要領でご確認ください。

【生産性要件に係る支給申請の場合の添付書類】

その他、助成額の加算要件となる対象有期雇用労働者等の基本給を増額した場合、または、有期雇用労働者等の生産性の向上を図るための取組を行った場合は、別途添付書類が必要となります。

詳細は、厚生労働省が配布しているパンフレットや支給要領を確認しましょう。

また、これら添付書類のほかに、労働局が認める書類の提出を求められることもあります。

支給額

支給額は以下の通りです。

  • 中小企業等:190,000円(生産性要件:240,000円)
  • 大企業:142,500円(生産性要件:180,000円)

支給は、1事業所当たり1回のみです。

社会保険に加入させた日以降に、新たに社会保険の被保険者となった有期雇用労働者等の基本給を増額した場合、その増額割合に応じて、以下の通り助成額が加算されます。

増額割合 中小企業等 大企業
加算額 生産性要件を満たした場合の加算額 加算額 生産性要件を満たした場合の加算額
2%以上3%未満 19,000円 24,000円 14,250円 18,000円
3%以上5%未満 29,000円 36,000円 22,000円 27,000円
5%以上7%未満 47,000円 60,000円 36,000円 45,000円
7%以上10%未満 66,000円 83,000円 50,000円 63,000円
10%以上14%未満 94,000円 119,000円 71,000円 89,000円
14%以上 132,000円 166,000円 99,000円 125,000円

この金額は、1人当たりの加算額です。10人分の基本給を増額したら、この金額×10人が加算額となります。また、支給申請の上限人数は45人です。

この他にも加算される要件があります。

社会保険に加入させた日以降に、有期雇用労働者等に対して研修制度や評価の仕組みを導入するなど、生産性を向上させるための取組を実施した場合、以下の金額が加算されます。

  • 中小企業等:100,000円
  • 大企業:75,000円

この加算額は1事業所当たり1回のみ受給できます。

まとめ

「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」は、他の「キャリアアップ助成金」のコースとは違い、有期雇用労働者等のモチベーションを上げることが目的ではなく、その処遇を改善することで事業所内の生産性向上を図ることが目的であり、社会保険制度への加入者を増やすことが目的でもあります。

社会保険被保険者の数が増加するということは、その制度を支える人数が増加するということでもあり、結果としてこの社会保険制度の崩壊を防ぐことに繋がるのです。

厚生年金を支払っても、将来貰えるかどうかわからないという声が聞こえてきますし、年金だけで生活は出来ないと言われています。

ですが、制度を支え保険料を支払う人が増えれば、その分制度を維持することが出来て、将来的にも年金を受給できる可能性が高くなるのです。

もし、まだ社会保険に加入していない有期雇用労働者等がいるのであれば、この制度を活用して加入させては如何でしょうか。

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