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キャリアアップ助成金の諸手当制度共通化コースとは、どのような助成金なのか?

「キャリアアップ助成金」という制度は、有期雇用労働者等の雇用形態を転換したり、賃金規定を改定したりと、その待遇を改善した事業主に助成金を支払うというものです。

「キャリアアップ助成金」には、7つのコースがあり、その取組内容に違いがあります。

今回ご紹介する「諸手当制度共通化コース」は、基本給などのほかに支払われる「家族手当」や「住宅手当」、「残業手当」など、正規雇用労働者であれば受け取っているはずの様々な手当を、有期雇用労働者等に支給した場合に、助成金が支給される制度です。

それでは、詳しくご説明しましょう。

諸手当制度共通化コースの目的

まずは、「諸手当制度共通化コース」の目的と概要についてご紹介します。

目的

「諸手当制度共通化コース」は、有期雇用労働者等に対し、正規雇用労働者と共通の諸手当を制度化し、適用することで有期雇用労働者等のモチベーションを向上させ、結果として事業所内の生産性を向上させることが目的です。

例えば、有期雇用労働者等と正規雇用労働者の仕事の内容が同じで、その能力にも特に違いがないとしましょう。

正規雇用労働者であればその能力や仕事の成績言応じてボーナスが支払われます。企業によってその支払い基準や額に違いがありますが、年間3ヶ月分の基本給以上のボーナスが支払われます。

ですが、有期雇用労働者等はボーナスをもらうことはありません。支給されたとしても、一律1万円など、正規雇用労働者に比べると圧倒的に少ない額でしかないのです。

とすると、彼ら有期雇用労働者等の仕事に対するモチベーションはどうなるでしょうか?

頑張ったところで評価されることはないと知れば、当然やる気をなくします。その結果、事業所内の生産性効率は確実に下がり、事業主にとってもマイナスでしかないのです。

有期雇用労働者等のモチベーションを向上させ、結果として事業所内の生産性を向上させることができるように「諸手当制度共通化コース」ができました。

概要

厚生労働省が配布しているパンフレットには、

「労働協約または就業規則の定めるところにより、その雇用する有期雇用労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の諸手当に関する制度を新たに設け、適用した場合に助成します」

引用:厚生労働省 キャリアアップ助成金パンフレットp49

とあります。

つまり、雇用形態によってその待遇を分けるのではなく、正規雇用労働者も有期雇用労働者等も同じように扱いなさいということです。

支給対象は?

では、この助成金の支給対象は、どのような事業主なのでしょうか?また、何をすれば支給されるのでしょうか?

対象となる事業主は?

対象となる事業主は、以下の9つの要件すべてに該当する事業主です。

1. 労働協約または就業規則の定めるところにより、その雇用する有期雇用労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新たに設けた事業主であること
 (ア) 手当の種類については、以下「何をすれば支給される?」を参照

2. 1番の諸手当制度に基づき、対象労働者1人当たりに、6ヶ月分の賃金を支給した事業主であること
 (ア) 詳細は、以下「何をすれば支給される?」を参照

3. 正規雇用労働者に係る諸手当制度を、新たに設ける有期雇用労働者等の諸手当制度と同時またはそれ以前に導入している事業主であること

4. 有期雇用労働者等の諸手当の支給について、正規雇用労働者と同額または同一の算定方法としている事業主であること

5. 当該諸手当制度をすべての有期雇用労働者等と正規雇用労働者に適用させた事業主であること

6. 当該諸手当制度を初回の諸手当支給後6ヶ月以上運用している事業主であること

7. 当該諸手当制度の適用を受けるすべての有期雇用労働者等と正規雇用労働者について、共通化前と比べて基本給および定額で支給されている諸手当を減額していない事業主であること

8. 支給申請日において当該諸手当制度を継続して運用している事業主であること

9. 生産性要件を満たした場合の支給額の適用を受ける場合にあっては、当該生産性要件を満たした事業主であること

9番の要件は、生産性要件を希望する事業主のみが該当します。

これら要件について簡単にまとめると、「有期雇用労働者等に対し正規雇用労働者と同じように諸手当制度を導入して適用させた事業主」となります。

諸手当制度を導入する際に、基本給を減額した場合には適用除外となってしまいます。気を付けましょう。

対象となる労働者は?

対象となる労働者は、以下の4つの要件全てに該当する労働者です。

1. 労働協約または就業規則の定めるところにより、諸手当制度を共通化した日の前日から起算して3ヶ月以上前の日から共通化後6ヶ月以上の期間継続して、支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等で絵あること
 (ア) 勤務をした日数が11日未満の月は除く

2. 諸手当制度を共通化し、初回の諸手当を支給した日以降の6ヶ月間、当該対象適用事業所において、雇用保険被保険者であること

3. 諸手当制度を新たに作成し適用を行った事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること

4. 支給申請日において離職していない者であること
 (ア) 本人の都合による離職または、本人の責めに帰すべき理由による解雇は除く
 (イ) 天災その他やむを得ない理由のために事業継続が困難となった場合の解雇も除く

何をすれば支給される?

簡単に言えば、有期雇用労働者等に対し正規雇用労働者と同等レベルの諸手当制度を導入したら、助成金を支給されます。

では、どんな諸手当をどの程度導入すれば良いのかを説明します。

【諸手当】

1. 賞与(ボーナス)
 (ア) 一般的に労働者の勤務成績に応じて定期的または臨時に支給される手当

2. 役職手当
 (ア) 管理職等、管理・監督ないしこれに準ずる職制上の責任のある労働者に対し、役割や責任の重さに応じて支給される手当

3. 特殊作業手当・特殊勤務手当
 (ア) 著しく危険、不快、不健康または困難な勤務その他の著しく特殊な勤務に従事する労働者に対し、その勤務の特殊性に応じて支給される手当
 (イ) 人事院規則9-3(特殊勤務手当)に規定する特殊勤務手当に相当するもの等

4. 精勤手当・皆勤手当
 (ア) 労働者の出勤奨励を目的として、事業主が決めた出勤成績を満たしている場合に支給される手当

5. 食事手当
 (ア) 勤務時間内における食費支出を補助することを目的として支給される手当

6. 単身赴任手当
 (ア) 勤務する事業所の異動、住居の移転、父母の疾病その他やむを得ない事情により、同居していた扶養親族と別居することとなった労働者に対し、異動前の住居または事業所と移動後の住居または事業所との間の距離に応じて支給される手当

7. 地域手当
 (ア) 複数の地域に事業所を有する場合に、特定地域に所在する事業所に勤務する労働者に対し、勤務地の物価や生活様式の地域差等に応じて支給される手当

8. 家族手当
 (ア) 扶養親族のある労働者に対し、扶養親族の続柄や人数に応じて支給される手当
 (イ) 扶養している子供の数や教育に要する費用に応じて支給される子女教育手当も含む

9. 住宅手当
 (ア) 自ら居住するための住宅(貸間を含む)または単身赴任する者で扶養親族が居住するための住宅を借り受けまたは所有している労働者に対し、支払っている家賃等に応じて支給される手当

10. 時間外労働手当
 (ア) 労働者に対して、労働基準法第37条第1項に基づき法定労働時間を超えた労働時間に対する割増賃金として支給される手当

11. 深夜・休日労働手当
 (ア) 労働者に対し、労働基準法第37条第1項に基づき休日の労働に対する割増賃金として支給される手当
 (イ) 労働者に対し、労働基準法第37条第4項に基づき午後10時から午前5時までの労働に対する割増賃金として支給される手当

これら、11種類の諸手当を制度化して導入した場合に、支給対象となります。全てを導入する必要はなく、1つでも支給対象となります。

また、手当の名称はここに記したものでなくても構いません。手当の趣旨・目的から判断してここに挙げる11種類に該当していれば、支給対象となります。

ただし、必ず現金による支給であり、クーポン券や商品などで支給した場合には、対象外となります。

【支給額・支給割合等】

1. 上記1番「ボーナス」は、6ヶ月分相当として50,000円以上
2. 上記2番~9番は、1ヶ月分相当として1つの手当につき3,000円以上
3. 上記10番または11番は、割増率を法定割合の下限に5%以上加算

諸手当を支給しても、支給額が少ない場合は対象となりません。基準となる金額・割合がありますので、これらをしっかりと意識して、制度化しましょう。

支給申請と支給額

最後に、支給申請と支給額についてご紹介します。

支給申請期間


画像引用:厚生労働省 キャリアアップ助成金パンフレット 52p

支給申請期間は、対象労働者に初回の諸手当の支給後6ヶ月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2ヶ月以内です。

申請書類と添付書類

「キャリアアップ助成金」では、どのコースも必ず最初に「キャリアアップ計画書」を作成し、管轄労働局長の認定を受けなければなりません。その後、コース内容に沿った取組を実施します。

【キャリアアップ計画書】

1. 様式第1号「キャリアアップ計画書」
2. 様式第2号「キャリアアップ計画書(変更届)」

2番の変更届は作成した「キャリアアップ計画書」に変更が出た場合にのみ、提出します。

【申請書類】

1. 様式第3号「キャリアアップ助成金支給申請書」
2. 様式第3号 別添様式5「諸手当制度共通化コース内訳」
3. 様式第3号 別添様式5「諸手当制度共通化コース内訳 継紙」

3番の「諸手当制度共通化コース内訳 継紙」は、2番の用紙だけでは足りない場合のみ提出します。

【添付書類】

1. 共通要領様式第1号「支給要件確認申立書」
2. 支払方法・受取人住所届
3. 管轄労働局長の認定を受けた「キャリアアップ計画書」の写し

4. 諸手当制度が規定されている労働協約または就業規則及び諸手当制度が規定される前の労働協約または就業規則
 (ア) 常時10人未満の労働者を使用する事業主が諸手当制度を規定する前の労働協約または就業規則を作成していなかった場合には、その旨を記載した申立書

5. 対象労働者全員および当該諸手当制度の適用を受ける正規雇用労働者1人の共通化前および共通化後の雇用契約書等
 (ア) 必要に応じて労働者本人の署名等が分かる雇用契約書等

6. 対象労働者全員および当該諸手当制度の適用を受ける正規雇用労働者1人の賃金台帳または船員法第58条の2に定める報酬支払簿
 (ア) 諸手当制度共通化前の3ヶ月分、諸手当を支給した初月分および諸手当の支給後6ヶ月分
  ア.1 諸手当制度の共通化をした日の前日から3ヶ月前の日までの賃金分に係る分
  ア.2 新たに共通化した諸手当を始めて支給した月に係る分
  ア.3 諸手当の共通化後から6ヶ月経過する日までの賃金に係る分

7. 対象労働者全員および当該諸手当制度の適用を受ける正規雇用労働者1人の出勤簿等
 (ア) 精皆勤手当、時間外労働手当および深夜・休日労働手当に係る申請に限る
 (イ) 諸手当制度共通化前の3ヶ月分、諸手当を支給した初月分および諸手当の共通化後の6ヶ月分
  イ.1 新たに共通化した諸手当を初めて支給した月に係る分

8. 適用後6ヶ月が支給されていることについての当該諸手当制度の適用を受けるすべての有期雇用労働者等本人の確認書
 (ア) 勤務をした日数が11日未満の月は除く
 (イ) 時間外手当等を含む

9. 中小企業事業主である場合、中小企業事業主であることを確認できる書類
 (ア) 企業の資本の額または出資の総額により中小企業事業主に該当する場合
  ア.1 登記事項証明書、資本の額または出資の総額を記載した書類等
 (イ) 企業全体の常時雇用する労働者の数により中小企業事業主に該当する場合
  イ.1 様式第4号「事業所確認表」

10. 生産性要件に係る支給申請の場合の添付書類
 (ア) 共通要領様式第2号「生産性要件算定シート」
 (イ) 算定の根拠となる証拠書類
  イ.1 損益計算書、総勘定元帳、確定申告書Bの青色申告決算書、収支内訳書 等

その他、労働局が必要と認める書類の提出を求められることもあります。

支給額


画像引用:厚生労働省 キャリアアップ助成金パンフレット 52p

支給額は、以下の通りです。

中小企業等:380,000円(生産性要件:480,000円)
大企業:285,000円(生産性要件:360,000円

この支給額は、1事業所当たりの金額です。支給回数は、1回のみとなります。

また、諸手当の支給について共通化した対象労働者が2人以上いる場合、2人目から加算額が支給されます。

上の図で説明すると、Bさんは1人目として通常の支給額が支給されます。CさんとDさんが、Bさんと同じ「精勤手当(共通化した1つ目の手当)」を貰っていますので、CさんとDさん2人分が加算支給されます。

さらに、共通化した諸手当が2種類以上ある場合には、2種目から加算されます。

上の図で説明すると、Bさんに支給されている手当が3種類あり、「精勤手当」が共通化した1つ目の手当として通常支給の対象となります。残りの「住宅手当」と「家族手当」が、加算対象となります。

ちなみに、Fさんは共通化した1つ目の手当「精勤手当」を適用されていませんので、加算対象外となります。

【加算額:対象労働者2人目以降】

中小企業等:15,000円(生産性要件:18,000円)
大企業:12,000円(生産性要件:14,000円)

この加算額は1人当たりで、上限は20人までです。

【加算額:諸手当の数2種目以降】

中小企業等:160,000円(生産性要件:192,000円)
大企業:120,000円(生産性要件:144,000円)

この加算額は、諸手当1種辺りです。上限は10種です。

まとめ

「キャリアアップ助成金」は、有期雇用労働者等の待遇改善により事業所内の生産性を向上させることが最大の目的とする制度です。

その中の今回ご紹介した「諸手当制度共通化コース」は、有期雇用労働者等に対し正規雇用労働者と共通の諸手当を制度化し、適用した事業主に対し助成金を支給する制度です。

ぜひ、この助成金制度を活用して有期雇用労働者等のモチベーションをアップすることで、事業所の生産性を向上させましょう。

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