建設業や製造業などモノづくり業界の多くは、月の残業時間が100時間を超えるといった長時間の労働が問題視されています。
しかも、大手企業の下請けである中小企業の多くは、人手不足でありながら納期という締め切りに追われ、結果として残業が増えてしまうという問題を抱えているのです。
そんな長時間労働を見直すために、2020年4月1日から中小企業に対して時間外労働の上限規制が導入されます。
そこで、長時間労働見直しのために取り組む中小企業事業主に対し、助成金が設けられました。
ここでは「時間外労働等改善助成金」という、長時間労働の見直しに対する助成金についてご紹介します。
時間外労働等改善助成金は5つのコース
「時間外労働等改善助成金」には次の5つのコースがあります。
- 時間外労働上限設定コース
- 勤務時間インターバル導入コース
- 職場意識改善特例コース
- 団体推進コース
- テレワークコース
ここでは、それぞれのコースについて、ご説明します。
助成金の目的は?
「時間外労働等改善助成金」の目的は、中小企業などの長時間労働の改善促進です。
先ほども書いた通り、多くの中小企業・小規模事業者が人手不足・設備不良・設備不備・人材不足などによって、時間外労働を短縮できずにいます。
しかし、2020年4月にはこの労働時間に対する規制が始まるということもあり、これら規制に対応するために労働時間短縮に取り組む必要に迫られています。
そのため、労働時間短縮のために様々な取り組みを行う中小企業・小規模事業主を助成するために、この助成金が設けられました。
時間外労働上限設定コース
時間外労働はその多くが残業と思われがちですが、休日出勤の時間も含んだ所定労働時間以外の時間です。この時間外労働の時間数を減らすことが、中小企業事業主の課題の1つとなります。
概要
「時間外労働上限設定コース」は、長時間労働の見直しのために労働時間短縮に取り組む中小企業を応援するための助成金です。
支給対象となる事業主は?
支給対象となる事業主は、以下のいずれにも該当する中小企業事業主です。
- 労働者災害補償保険の適用事業主であること
- 平成29年度又は平成30年度において「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(限度基準告示)」に規定する限度時間を超える内容の時間外・休日労働に関する協定を締結している事業場を有する中小企業事業主で、当該労働時間外労働及び休日労働を複数月行った労働者がいること
この要件の内、2番は所謂「36協定」のことです。
つまり、中小企業事業主でも労働者側(労働組合など)と協定を結んでいない場合には、この助成金を受け取ることが出来ません。
因みに、中小企業事業主とは、以下の表に当てはまる企業のことです。
業種 | 資本又は出資額 | 常時雇用する労働者数 |
---|---|---|
小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 55,000万円以下 | 5100人以下 |
卸売業 | 51億円以下 | 5100人以下 |
その他の業種 | 53億円以下 | 5300人以下 |
どんなことをすると支給対象になる?
助成金を受給するには、時間外労働の短縮のために様々な取り組みをする必要があります。では、どのような取り組みを行えば、助成を受けることが出来るのでしょうか?
助成を受けるには、以下の取り組みの中から1つ以上実施する必要があります。
- 労働管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家によるコンサルティング
- 社会保険労務士
- 中小企業診断士
- 経営コンサルタント 等
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取り組み
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- 労務管理用機器の導入・更新
- デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
- テレワーク用通信機器の導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新
- 小売業のPOS装置
- 自動車修理業の自動車リフト
- 運送業の洗車機 等
これら取組の内、機器の導入・更新の中にパソコン、タブレット、スマホは含まれません。一方で、研修には業務研修も含まれます。
支給対象となるには、これら取組について事業実施計画を立案し、事業所を管轄する都道府県労働局に「交付申請」を行うことが必要です。
この事業実施計画を行う際には、実施体制の整備のために以下のことを実施してください。
- 労働時間等設定改善委員会の設置等、労使の話し合いの機会の整備
- 労働時間等に関する個々の苦情、意見、要望を受け付けるための担当者の選任
- 労働者に対する事業実施計画の周知
成果目標の設定は必要?
労働時間カットのための取り組みも、何も目標もなく実施しては意味がありません。取り組む以上はある程度の目標を設定し、達成を目指す必要があります。
この助成金制度でも、「成果目標」の設定を指示しています。
【成果目標】
- 時間外労働時間数で月45時間以下かつ、年間360時間以下に設定
- 時間外労働時間数で月45時間超60時間以下かつ、かつ年間720時間以下に設定
- 時間外労働時間数で月60時間超え、時間外労働時間数及び法定休日における労働時間数の合計で月80時間以下かつ、時間外労働時間数で年間720時間以下に設定
これら目標設定は、事業主が労働基準監督署に届け出てください。
また、これらの目標とともに、週休2日制の導入に向けて、4週当たり5日~8日以上の範囲内で休日を増やすことを成果目標として設定することも出来ます。
いつまで取り組めばいいの?
事業は年度ごとに行います。そのため「交付決定」を受けた日の属する年度の4月1日~3月末日が事業年度となります。
支給額は?
助成金の支給は、「成果目標」の達成状況に応じて、支給対象となる取組の実施に掛かった経費の一部です。
ただし、取組内容によって上限がありますので、事前確認が必要です。
【取組内容別経費の上限】
- 労働管理担当者に対する研修・・・合計10万円
- 労働者に対する研修、周知・啓発・・・合計10万円
- 外部専門家によるコンサルティング・・・合計10万円
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 就業規則、その他規程、時間外・休日労働に関する協定以外の労使協定の作成・変更に係る経費・・・合計10万円
- 時間外・休日労働に関する協定の作成・変更に係る経費・・・合計1万円
- 就業規則及びその他規程、労使協定の届出に係る経費・・・合計1万円
- 人材確保に向けた取り組み・・・合計10万円
【支給額】
以下の内で低い方の額が、支給額となります。
- 1企業当たりの上限200万円
- 上限設定の上限額及び休日加算額の合計額(下の表を参照)
- 対象経費の合計額 × 補助率3 / 4
対象経費の合計額に乗じる補助率は、以下の場合4 / 5になります。
- 常時使用する労働者数が30名以下
- かつ、支給対象の取り組みで6番~10番を実施する場合
- その所要額が30万円を超える場合
これら3つの要件を満たした場合のみ、補助率が変わります。
【上限設定の上限額】
事業実施前の時間外労働時間数等 | |||
---|---|---|---|
事業実施後に設定する時間外労働時間数等 | 時間外労働時間数等が月80時間を超えるなどの時間外労働時間数を設定し、その実績を有する事業所 | 時間外労働時間数で月60時間を超えるなどの時間外労働時間数を設定し、その実績を有する事業所 | 時間外労働時間数で月45時間を超えるなどの時間外労働時間数を設定し、その実績を有する事業所 |
成果目標 1 | 150万円 | 100万円 | 50万円 |
成果目標 2 | 100万円 | 50万円 | - |
成果目標 3 | 50万円 | - | - |
【休日加算】
事業実施前 | ||||
---|---|---|---|---|
事業実施後 | 4週当たり4日 | 4週当たり5日 | 4週当たり6日 | 4週当たり7日 |
4週当たり8日 | 100万円 | 75万円 | 50万円 | 25万円 |
4週当たり7日 | 75万円 | 50万円 | 25万円 | - |
4週当たり6日 | 50万円 | 25万円 | - | - |
4週当たり5日 | 25万円 | - | - | - |
例えば「上限設定の上限額」で150万円、「休日加算額」で100万円支給対象だったとすると、合計で250万円となり「1企業当たりの上限」を超えてしまいます。
この場合、「上限設定の上限額 + 休日加算額」は支給されません。
勤務間インターバル導入コース
「勤務間インターバル」とは、勤務終了後から次の勤務開始までに一定時間以上の「休息時間」を設けることです。
「勤務間インターバル」を設けることにより、勤務時間以外の時間である「生活時間」や「睡眠時間」をしっかり確保できるため、過重労働の防止に繋がります。
概要
平成31年4月から働き方改革を進める中で、この「勤務間インターバル」制度の導入が企業の努力義務となりました。
そのため、勤務間インターバル導入コースでは「勤務間インターバル」導入のために様々な取り組みを実施する中小企業や小規模事業者に対し、助成金の支援をします。
支給となる事業主は?
基本的には、先にご紹介した「時間外労働上限設定コース」と同じです。
- 労働差災害補償保険の適用事業主であること
- 以下のいずれかに該当する事業場を有する事業主であること
- 勤務間インターバルを導入していない事業場
- 既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
- 既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場
どんなことをすると支給対象になる?
取組内容は、10項目すべて「時間外労働上限設定コース」と同じです。10項目の中から1項目以上の取り組みを行いましょう。
成果目標の設定は必要?
「勤務間インターバルコース」を導入する事業主は、その事業計画において指定した事業場のすべてで休息時間数を以下2つのどちらかに設定しなければなりません。
- 9時間以上11時間未満
- 11時間以上
具体的な取り組みとしては、以下の通りとなります。
- 新規導入:勤務間インターバルを導入していない事業場の場合
- 事業場に所属する労働者の半数超を対象として、休息時間が9時間以上の勤務間インターバルに関する規定を就業規則などに定めること
- 適用範囲の拡大:既に9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場の場合
- 既に勤務間インターバルを導入していても、その対象となる労働者数が、その事業場に所属する労働者数の半数以下の場合は、勤務間インターバルの対象範囲を拡大して、当該事業場に所属する労働者の半数超が対象となるように、就業規則等に規定すること
- 時間延長:既に勤務間インターバルを導入しているが、その時間数が9時間未満の場合
- 9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場に所属する労働者の半数超の労働者を対象として、休息時間数を9時間以上とすることを就業規則に規定すること
ご自分の事業所に該当する取り組みを、実施してください。
いつまで取り組めばいいの?
2019年度の事業では、交付決定の日から2020年1月31日(金)を事業実施期間としていました。
2020年度の事業実施期間は2020年3月25日現在、まだ交付されていません。ですが、同様に2021年1月末日までが事業実施期間となるでしょう。
支給額は?
助成金は、「勤務間インターバル」導入のための取り組みを実施したことで生じた経費に対し、その成果目標の達成状況に応じて、支給されます。
基本的には、対象となる経費の合計額に補助率3 / 4を乗じた額が助成額となります。
ただし、以下の表にある金額を上限額として、それを超えて助成金が支給されることはありません。
休息時間数 | 「新規導入」に該当する取組がある場合 | 「新規導入」に該当する取組がなく、「適用範囲の拡大」又は「時間延長」に該当する取組がある場合 |
---|---|---|
9時間以上11時間未満 | 80万円 | 40万円 |
11時間以上 | 100万円 |
この表にある「休息時間数」は、事業実施計画で指定した事業場に導入する勤務時間インターバルの休息時間の中で、一番短い時間を指します。
職場意識改善特例コース
職場意識改善特例コースとは、2020年の新型コロナウイルス(COVID-19)感染症対策として、新たに導入された制度の1つです。
概要
新型コロナウイルス感染症対策として、高校以下の学校、幼稚園などで休校・休園が続き、その保護者の多くが仕事を休まざるを得ない状況です。
また、感染疑いがあるとして自宅待機を要請されることもあり、事実上の休業を強いられています。
休業を余儀なくされる従業員のために、「休める環境」を整備する必要があり、特別休暇制度の整備が求められます。
この「職場意識改善特例コース」は特別休暇制度を新たに整備し、その特別休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援するものです。
支給となる事業主は?
支給対象は、新型コロナウイルス感染症対策として、特別休暇の規定を新たに整備する中小企業事業主です。
ただし、労働者災害補償保険の適用事業主である必要があります。
どんなことをすると支給対象になる?
取組内容としては、これまでにご紹介してきた2つのコースと同じ10項目です。
さらに、特別休暇の整備を行うことも助成金支給の条件となります。そのためには、事業実施期間中に必要な手続きを経てから就業規則を施工する必要があります。
いつまで取り組めばいいの?
この事業の実施期間は、令和2年2月17日(月)~令和2年3月25日(水)です。
ただし、令和2年2月17日~令和2年5月31日の間の取り組みについては、令和2年4月以降に申請を開始する「働き方改革推進支援助成金」で助成されます。
支給額は?
選択した取組の実施に掛かった経費に対して助成されます。
その額は、以下の内低い方となります。
- 対象経費の合計額に、補助率3 / 4を乗じた額
- 1企業当たりの上限額、50万円
団体推進コース
このコースは、中小企業事業主が所属する事業主の団体などが対象となる助成金です。
概要
「時間外労働等改善助成金」の中で唯一、事業主団体が対象となる助成金です。
中小企業事業主の団体や連合団体などが、その構成員の内、労働者を雇用する事業主の労働者の労働条件の改善のために、時間外労働の削減や賃上げに向けた取り組みを実施した場合に、助成金を支給するというものです。
支給となる事業主は?
支給対象となるのは、中小企業事業主ではなく、その事業主などが構成員となる以下のいずれかに該当する事業主団体です。
- 事業主団体
- 法律で規定する団体等
- 上記以外の事業主団体(要件あり)
- 共同事業主(要件あり)
どんなことをすると支給対象になる?
事業主団体の取組は、これまでにご紹介してきた中小企業事業主向けのコースとは違う内容です。
- 市場調査の事業
- 新ビジネスモデル開発、実験の事業
- 材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用以外)の事業
- 下請取引適正化への理解促進等、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整の事業
- 販路拡大等の実現を図るための展示会開催委及び出展の事業
- 好事例の収集、普及啓発の事業
- セミナーの開催等の事業
- 巡回指導、相談窓口設置等の事業
- 構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新の事業
- 人材確保に向けた取組の事業
以上、10項目の内1つ以上を実施します。
成果目標の設定は必要?
これら10の取組は、以下の「成果目標」の達成を目指して実施します。
【成果目標】
事業主団体が、事業実施計画で定める時間外労働の削減又は賃金引き上げに向けた改善事業の取組を行い、その団体の構成員である中小企業事業主の1 / 2以上に対し、その取組または取組結果を活用する。
いつまで取り組めばいいの?
事業の実施期間は、2019年度は、交付決定の日から2020年2月22日(土)でした。
2020年度はまだ期間など交付されていませんので、昨年度の期間を参考にしてください。
支給額は?
これまでのコースと同じように、取組実施に要した経費に対して助成します。その額は以下のいずれかの内低い方となります。
- 対象経費の合計額
- 総事業費から収入額を控除した額
- 上限額500万円
2番の「収入額」の例をあげると、取組の1つとして新製品などの試作品を作り販売したことで得た収入のことです。
テレワークコース
テレワークコースは、従来のコースのほかに今回新たに「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」が創設されました。
概要
「テレワークコース」には2種類ありますので、それぞれについてご紹介します。
【従来のコース】
時間外労働の制限やその他の労働時間などの改善、さらに仕事と私生活との調和の推進を目的として、在宅やサテライトオフィスなどで就業する「テレワーク」の推進に取り組む事業主に対して、助成金を支払うものです。
【新型コロナウイルス感染症対策のためのコース】
こちらのコースは、新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークなどを新規導入する中小事業主のために、特例的に設けた時限的なコースです。
支給となる事業主は?
【従来のコース】
助成金支給対象となるのは、基本的にはこれまでにご紹介してきた「コース」の対象事業主と同じです。ただし、以下の2点のみ違います。
- テレワークを新規で導入する事業主であること、またはテレワークを継続して活用する事業主であること
- 時間外労働の制限やその他の労働時間などの設定改善を目的として、テレワークの実施に積極的に取り組む意欲があり、かつ、成果が期待できる事業主であること
【新型コロナウイルス感染症対策のためのコース】
こちらは、新型コロナウイルス感染症対策として新規にテレワークを導入する中小企業事業主で、「労働者災害補償保険の適用中小企業事業主であること」という要件のみです。
どちらのコースも、試行的にテレワークを導入することも対象となります。
どんなことをすると支給対象になる?
【従来のコース】
以下の取組の内から、1つ以上の実施が必要です。
- テレワーク用通信機器の導入・運用
- 保守サポートの導入
- クラウドサービスの導入
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 労務管理担当者や労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家によるコンサルティング
ただし、パソコン、タブレット、スマホの導入は支給対象外です。
【新型コロナウイルス感染症対策のためのコース】
「従来コース」の取組の内、1番、4番、5番、6番が対象となります。
成果目標の設定は必要?
支給対象の取組は、成果目標の達成を目指して実施しする必要があります。
【従来のコース】
- 評価期間に、1回以上対象労働者全員にテレワークを実施させる
- 評価期間において、テレワークを実施した日数の習慣平均を1日以上とする
- 年次有給休暇の取得促進について、労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数を前年と比較して4日以上増加させる
- 所定労働の削減について、労働者の月間平均所定外労働時間数を、前年と比較して5時間以上削減させる
なお、「評価期間」は事業実施期間の中で1ヶ月~6ヶ月の間で、事業主みずから設定します。この評価期間内に「成果目標」を達成出来たかどうかを判断します。
【新型コロナウイルス感染症対策のためのコース】
「従来のコース」の様な、「成果目標」は特に設定されていません。ただし、事業期間内に以下の要件を満たす必要があります。
- 助成対象の取組を実施すること
- テレワークを実施した労働者が1人以上いること
いつまで取り組めばいいの?
【従来のコース】
2019年度の事業期間は既に終了しています。
ただ、先ほども書きましたが1ヶ月~6ヶ月の「評価期間」を事業主がみずから設定します。つまり、その設定した「評価期間」の間、取組を実施します。
【新型コロナウイルス感染症対策のためのコース】
こちらは、新型コロナウイルス感染症対策のために設定されたコースですので、期間も限定的です。令和2年2月17日~令和2年5月17日が実施期間です。
通常、これら「時間外労働等改善助成金」では、事前に事業計画を提出して交付決定を受けてから各取り組みを開始します。
しかし、急を要する「新型コロナウイルス感染症対策」では交付を待っている時間がありませんので、事業計画の提出を事後提出もOKです。
支給額は?
支給対象となる取組の実施に掛かった経費に対して助成金が支給されます。
「従来のコース」では、目標の達成状況に応じて、その額(補助率)が決まっています。
これに対し、「新型コロナウイルス感染症対策のためのコース」では、達成状況に関係なく一律です。
【従来のコース】
支給の対象となる経費は以下の通りです。
- 謝金
- 旅費
- 借損料
- 会議費
- 雑役務費
- 印刷製本費
- 備品費
- 機械装置等購入費
- 委託費
これらの経費は、「評価期間」に係る経費のみが対象となります。
助成額は、これら経費の合計に対し補助率を掛けた額です。補助率は、達成・未達成で違います。
- 達成した場合:3 / 4
- 未達成の場合:1 / 2
また、2種類の上限額が設けてあり、上限額を超える場合にはこの2種類の上限額の内低い方の額が支給額です。
達成した場合 | 未達成の場合 | |
---|---|---|
1人当たりの上限額 | 20万円 | 10万円 |
1企業当たりの上限額 | 150万円 | 100万円 |
1人当たりの上限額の場合には、その上限額 × 対象労働者数が支給額となります。
申請と助成金支給申請はどうすれば良いの?
選択するコースによって、申請方法に違いがあります。
【時間外労働上限設定コースと勤務間インターバル導入コースと団体推進コース】
画像引用:厚生労働省
支給申請書の提出は、具体的な日付の提出期限も設けられています。この提出期限を守って、書類を提出しましょう。
【職場意識改善特例コース】
画像引用:厚生労働省
【従来のテレワークコース】
画像引用:厚生労働省
「テレワークコース」では、「テレワーク相談センター」に交付申請書類と支給申請書類を提出します。これ以外のコースでは、提出先は都道府県労働局です。提出先に違いがあるので注意が必要です。
【新型コロナウイルス感染症対策の対策のためのテレワークコース】
画像引用:厚生労働省
「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」では、①の交付申請は事業実施後でも書類の提出を受け付けています。
まとめ
以上が「時間外労働等改善助成金」の説明となります。
平成30年に「働き方改革法」が成立し、労働時間を見直すことや時間外労働時間の短縮やテレワークの導入など、職場環境の改善が求められるようになりました。
これらの改善のために取組を行う中小企業事業主に対し、経費の一部を助成するのがこの助成金です。
ぜひ、この助成金を活用して職場環境の改善に勤めましょう。
関連記事
コメントを残す