施工業者が売上アップを目指す場合、様々なビジネス戦略を立てられます。ビジネス戦略の1つとして「垂直展開」は事業の価値を高められる方法が挙げられます。
そんな垂直展開を鉄筋工事業者も導入できるのでしょうか?この記事では、鉄筋工事の垂直展開は可能かどうか、実施する際にはどんなことに気を付ければ良いのか、ポイントをまとめてご紹介します。
垂直展開とは?
まずは垂直展開の意味について解説しましょう。垂直展開とは、現在保有している知識・技術など、様々な資産をさらに充実させていくことを指します。
企業が保有する資産を深掘りしていき、さらに資産の量や質を高めていくことで売上アップを目指す方法です。
水平展開と垂直展開の違い
垂直展開は基本的に現状のサービスを強化していく方法になりますが、その方法と対になるのが「水平展開」です。深掘りしていく垂直展開に対し、水平展開は横に広がっていきます。
水平展開の具体的な例を言うと、例えば世界的に有名なAmazon社は元々オンライン書店として創設されましたが、現在は様々な商品の取り扱いはもちろん、動画配信サービスやクラウドサービスなど、あらゆる事業を展開しています。
水平展開はこのように、自分が保有している資産の使える場所を増やす方法です。
専門性に特化しクオリティを高めるのが垂直展開、使える場所を増やして幅広く業務を展開していくのが水平展開と認識しましょう。
垂直展開は効率的に収益アップを目指せる
効率的な収益アップを目指すなら水平展開の方が向いているようにも思えるでしょう。確かに、水平展開は現在保有する資産を強化しなくても、活用できる場所を探せばいいので効率的に思えるかもしれません。
しかし、水平展開により新しく事業を展開できる場所が見つかっても本当に開拓できるかどうかは分かりませんし、失敗するリスクも高いです。
サービスを深掘りしていく垂直展開は水平展開より時間が掛かってしまうものの、失敗するリスクが低く、成功すればそのジャンルで確固たる地位も見出せるでしょう。失敗するリスクを考えると、垂直展開の方が効率的な収益アップを目指せます。
鉄筋工事で垂直展開は可能?
結論から言えば、鉄筋工事でも垂直展開を行うことは可能です。垂直展開は様々な業種でも取り入れることができる方法になります。
では、具体的に鉄筋工事業者が垂直展開を行う場合、どのようにサービスを掘り下げていけば良いのでしょうか?
ワンストップモデル
鉄筋工事は主に鉄筋の加工帳・施工図の作成から鉄筋加工、配筋、嵌合、結束、検査の流れで進んでいきます。これらの業務は一つひとつが建物の土台となるために必要な作業です。
加工帳・施工図の作成から検査まで、全て同じ業者が手掛けることでスムーズな対応が可能となります。確認や意思の決定・伝達にかかるタイムロスも減らせるでしょう。
さらに、鉄筋工事を網羅していることでスタッフの技術が向上したり、実績を積み重ねたりすることができます。
例えば、鉄筋を施工する際に圧接業者を別に手配する必要がありますが、鉄筋業者が圧接もできると元請としては鉄筋業者に任せておけばOKなので楽ですよね?
このように鉄筋に関わること全てをワンストップで済ませるというのも、垂直展開の1つの方法です。
地域に特化したサービス
いくらワンストップモデルを取り入れたとしても、多くの鉄筋工事業者は既に取り組んでいるため差別化を図るのは難しいです。
他の業者と差別化を図るために重要なのは、「地域に特化したサービス」を展開していくことと言えます。地域の顧客に対して誠心誠意のサービスを提供し、顧客が考える以上の結果を残すことが大切です。
顧客の満足度を高めれば地域での評判が高まり、信用を獲得することもできます。
例えば、特定の元請専門のチームを作ることで何度も同じ指摘を受けないように共有されていたり、工場専門部隊を作ったりすることで専門性の高い鉄筋施工や加工も可能となるでしょう。
現実問題として人員配置を考えると難しい面もありますが、難しいからこそ差別化できるという一面もあります。
垂直展開を成功させるポイント
鉄筋工事業者のビジネスモデルとして垂直展開を成功させるためには、いくつか気を付けなければいけないポイントもあります。深堀だけではダメ・顧客のニーズが大切、の2点です。
この2つの点に注意しながら、サービスの深掘りと質の向上を目指しましょう。
ただ単に深掘りするだけでは意味がない
鉄筋工事の業務で配筋や嵌合など、現場の作業を極めたとしても経営にメリットがなくては意味がありません。ただ単に深掘りすれば良いのではなく、環境の変化によって現れる経営課題をクリアしなくてはいけないのです。
ある企業では事業領域を多角的に広げていくのではなく、自分たちがこれまで行ってきた事業の強みを認識し、その強化に努めてきました。
事業領域自体はニッチだったものの、提供する技術が限定されたことで、施工スタッフ一人ひとりの技術が強化され、できることが増えていったと言います。本来は施工までだった業務は保守まで担えるようになりました。
保守までできるようになれば、顧客との関係性も長く続き安定的な収益が得られるようになります。業界内での信頼度が高まったことで新顧客の獲得にもつながるでしょう。こうして経営課題の解決へと至ったのです。
トレンドや顧客のニーズを知ることが大切
垂直展開を成功させるためには、常にその時々の変化を見極め、トレンドや顧客のニーズを把握していくことが大切です。トレンドは数年で大きく様変わりしてしまうケースもありますし、そのトレンドに合わせて顧客が求めているものも変わることがあります。
既存の鉄筋工事に関する事業に付加価値を与えるためにも、現在のトレンドや顧客が求めるニーズを見つけて積極的に取り入れていきましょう。
具体的には視点を変えてみることがポイントになります。視点が変わるとこれまで見えなかったものが見え、新規の顧客が見つかったり事業コストの欠陥に気が付いたりと、様々な発見ができます。
例えば、事業戦略などで用いられる「SWOT分析」では、強み・弱み・機会・脅威を認識し、どのようにアプローチしていくかを考えていきます。本来であれば強みを伸ばし、弱みを克服していくのですが、ここで視点を変えてみましょう。
視点を変え、弱みや制約、業務における障害などをプラスに捉えてみてください。企業としては弱みを捨てたくなるのは当然のことですが、弱みを捨てず、むしろ活かすことで新たな市場開拓や希少価値の向上、競合他社との競争回避にもつながります。
まとめ
今回は、鉄筋工事の垂直展開が可能かどうかご紹介してきました。鉄筋工事で垂直展開を実施し、事業を深掘りしていくためにはワンストップモデルと地域に特化したサービスの両方が重要となります。
さらに、実際に垂直展開を取り入れる際には明確な目標や課題を持つこと、トレンドや顧客のニーズを把握し、視点を変えて深掘りすることも大切です。
垂直展開により業務の質が向上すれば、売上アップにもつながることでしょう。ぜひ積極的に取り入れてみてください。
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