企業の事業活動において、どれだけの付加価値を生み出せているかを分析するには「バリューチェーン」と呼ばれるフレームワークが有効です。
バリューチェーンの分析を行うことで、自社の強みや弱みの把握できたり、競合の活動予測が行えたりできるので、新しい戦略を立てることができます。
そこで今回は、鉄筋工事業者に適したバリューチェーンの構成要素をご紹介しましょう。
バリューチェーンとは
バリューチェーンとは、自社や競合の事業を機能ごとに分けて、それぞれの過程でどれだけの付加価値が生産されているのか分析するための手法です。
まずはバリューチェーンの基本からご紹介しましょう。
バリューチェーンを構成する要素
バリューチェーンを構成する要素とは、主活動と支援活動の2つです。企業活動において、生産や消費の直接的な関わりがあるか・ないかによって企業活動を分類します。
主活動とは、製造やサービスの提供といった、生産から消費までの一貫した流れにダイレクトに関わる活動のことです。
一方、支援活動は生産から消費までの流れにダイレクトに関わらず、技術開発や管理、調達など主活動を支援する活動が当てはまります。
「付加価値」を重視
そもそも付加価値とは、事業の成果で生み出された製品やサービスの価値に、企業活動を行う中で新しく加えられた独自の価値を意味します。
しかし、付け加えた価値と言っても、ニーズのない機能やサービスを足すことはコストの浪費や使い勝手が悪くなるなどのデメリットが生じるでしょう。
消費者にとって満足度や実用性が高まるものが正しい付加価値です。鉄筋工事業では、どのような付加価値が生まれているか、バリューチェーンの分析は事業の課題解決や戦略立案において重要と言えます。
鉄筋工事業者のバリューチェーン
バリューチェーンの構成は主活動と支援活動に分けられると紹介しましたが、鉄筋工事業者の場合はどのような企業活動がそれぞれに当てはまるのでしょうか?
主活動と支援活動について具体的にご紹介します。
主活動
鉄筋工事業者の主活動は、施工図作成・鉄筋加工・取り付け施工・検査・保守の5つが挙げられます。
施工図作成
現場で作業を行うためには、まず施工図の作成が必要です。
施工図の作成では、仕様・材料・加工の形状など建築関係者が見てすぐに認識できるように、分かりやすさが重視されます。
鉄筋加工
鉄筋は作業内容に合わせて適切な長さや形に加工されたものを工事で使います。
作成した施工図や加工帳を元に、精確な加工技術力が求められる工程です。
取り付け施工
加工された鉄筋は施工図に基づいて取り付けや組み立て作業が行われます。
職人は施工図をよく確認し、作業の段取りや取り付けの指示を的確に行わなければなりません。
検査
鉄筋の取り付けや組み立て、結束といった施工が完了すると、自主的な検査に入ります。
建造物の強度に関わる部分であるため、念入りの検査で不具合の有無の確認と対応が求められます。
保守
安全な鉄筋を維持するためには、保守も重要です。
定期的に点検により鉄筋の強度が下がっていないか、不具合がないか確認し、必要に応じてメンテナンスで性能・品質を強化します。
支援活動
鉄筋工事事業者の支援活動には、全般管理・建材調達・労務管理・人材育成の4つが挙げられます。
全般管理
全般管理(インフラストラクチャー)とは、企業活動全般に対して支援する工程です。
具体的には本社の経営や経営企画、財務、経理、法務、品質管理といった企業の運営に関わる管理が当てはまります。
建材調達
鉄筋工事を行うためには、施工する上で必要な建材を調達しなければなりません。
社内から建材や機器、設備、消耗品などを調達・購入するのも大切な支援活動です。
労務管理
労務管理とは、主に従業員の給与や福利厚生の計算や労働時間の管理、労使関係の管理、安全衛生管理などが当てはまります。
企業活動での経費では人件費が大きく割合を占めるので、コスト削減しつつ利益を上げるためにも、従業員のモチベーションが業務効率に影響を与えます。
特に給与や福利厚生はモチベーション維持と関わりが強いので、労務管理は長期的で経営的な視点が必要です。
人材育成
鉄筋工事業者は人材を採用して終わりではなく、企業や顧客に貢献できる人材に育てる活動も重要です。
基本的なビジネスマナーや技術の指導はもちろん、スキルアップ・キャリアアップを目的とした研修やセミナーの開催、資格取得の支援などの育成環境を整えなければなりません。
ただ教えるのではなく、従業員自身が自ら成長を望む環境とそれを叶える環境作りが必要でしょう。
まとめ
今回は、鉄筋工事業者のバリューチェーンについてご紹介してきました。
紹介した構成のように企業活動を機能ごとに分けて強みや弱みを明らかにしていくと、重要な課題の把握や競合との差別化戦略のヒントを見つけ出せます。
成長のために競争優位戦略や差別化戦略などを打ち出したいと考えている鉄筋工事業者は、バリューチェーンをフル活用し、課題の抽出や適切な施策を講じていきましょう。
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